表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/21

第16話 水着準備!

「やばいな・・・」

 

 夏休み初日、久々に携帯を開いた俺はそう呟くしかなかった。

 画面を見ると母さんからの着信・メールでいっぱいだった。

 俺を心配してくれているのだろう。

 

「・・・」


 俺は無言で携帯を閉じた。

 今はどうすることもできない。

 

 携帯を机の中にしまう。

 もう6時30分。

 一階へ降りた方がいいだろう。

 

「よしっ」


 俺は部屋を出て一階へ向かった。


 一階へ降りるともうみんなが揃っていた。


「おはようございます」


「あっおはよう」


 純也さんと絵里さんが気付いてあいさつしてくれた。

 神田は相変わらずペコッとお辞儀するだけ。


(はぁ・・・)


 ため息をつきそうになったが何とか踏みとどまった。

 朝食はもう出来ているらしく俺を待っていてくれたらしい。


「すみません、毎日・・・」


「いいのよ別に」


「大丈夫だぞ」


 そんなことを言いながら席に着いて朝食を食べる。

 神田は相変わらず無言のまま朝食を食べている。

 俺は心の中でため息をつきながら朝食を食べる。

 純也さんと絵里さんは心配そうに俺と神田を見ている。


「最近、元気ないな二人とも」


「「・・・」」


 純也さんが明るく声をかけてくれるが俺と神田は無言のまま。

 無視しているわけではない、何を言えばいいのか分からない。

 神田の場合はどうだろう?

 

 しばらく無言のまま朝食を進める。

 特に何もないまま朝食が終わる。

 すると絵里さんが、


「夏休みよね二人とも?明日、海に行きたいんだけど行くわよね?」

 

「「・・・」」


 すぐに答えられなかった。

 神田を見ると下を向いたまま黙っている。

 しばらくすると顔を上げた。


「行くよ・・・」


「え?」


 俺は耳を疑った。

 が、神田は確かに行くと言った。

 絵里さんは笑顔で俺へ視線を移す。

 笑顔だがちょっと怖い・・・。


「・・・行きます」


 俺がそう言うと絵里さんは「今日の内に水着買いに行きましょ」と言ってリビングを出て行った。

 純也さんも「太矢ちゃんの水着かぁ」と言いながらリビングを後にした。

 

「「はぁ・・・」」


 俺と神田のため息が重なった。

 顔を見合わせるがすぐに反対方向を見る。

 神田は咳払いしリビングを出て行った。

 出て行くとき神田の横顔は赤くなっているように見えた。

 

「ふふっ」


 なぜか微笑んでしまったのだが、久々に神田の赤面顔を見たような気がする。  

 少しずつでも関係は戻っているのかな?

 俺はそう思いながらリビングを出た。


~4時間後~

 勉強などをしていると、あっという間に時間は過ぎ絵里さんに呼ばれ一階に向かった。

 

「じゃぁ行きましょ」


「はい」


 俺は絵里さんに促されるままに車に乗り込んだ。

 車の中には俺と絵里さんだけ


「純也さんと海斗君は?」


「ん?ああ、行かないそうよ。」


 絵里さんによると純也さんは楽しみを残しておきたいらしい。

 なんか、恥ずかしいな・・・。

 神田は今日、木下と用事があるらしい。

 胸の辺りが苦しいな・・・。

 気のせいかな?

 

「じゃぁ行くわよ?」


「は、はい」


 そう言うと車は静かに発車した。


~30分後~

 車に揺られながら絵里さんと他愛もない話をしているとすぐに店に着いた。

 駐車場に車を止め店に入る。


「よし、水着売り場ね」


 絵里さんはそう言うと早歩きで歩き始める。

 俺は置いて行かれないように絵里さんに必死について行く。

 水着売り場に着くといろいろな種類の水着が置いてある。

 ワンピース型・ビキニ・・・あとは知らないな・・はは。

 

「太矢ちゃんはもちろんビキニタイプね」


「え?」

 

 絵里さんは笑顔でそう言うが少し恥ずかしい・・・。

 今まで水着もまともに着たことはない(もちろん男性用)。

 

「でも、ちょっと私には・・・」


「何言ってるの。夏なんだから派手にいかなくちゃ」


 絵里さんは俺に似合いそうな水着(絵里さん意見)を持って俺を試着室に連れて行く。

 試着室に着くと絵里さんは水着を俺に差し出す。


「着替え終わったら見せてね?」


「は、はい」


 恥ずかしい気持ちもあったが、俺は水着を持って試着室に入っていった。

 何とか水着を着て前の鏡を見る。

 

(俺、モデルになれるんじゃね?)


 と、思うくらい水着姿が似合っていた。 

 俺は鏡に映った自分に見とれていた。

 

「着替え終わった?」


 絵里さんの声ではっと我に返る。

 

「はい、何とか・・・」


 そう言いながら俺は試着室のカーテンを開ける。

 カーテンを開けて気がついたがなんか恥ずかしい。

 水着売り場にいる女の人達の視線が気になる・・・。

 

「あ、あの・・・」


「似合うわね。私が選んだ水着やっぱり良かったわ」


 絵里さんは一人で盛り上がっている。

 恥ずかしいからカーテンを閉め着替える。

 着替え終わり試着室から出る。

 

「この、水着で」


「分かったわ。買ってくるわね」


 絵里さんはレジに向かって歩いて行った。

 しばらく、他の水着などを見ていると時間はすぐに過ぎた。

 絵里さんがレジから戻ってきた。


「じゃぁ、帰りましょ」


「え?他に用事とかは?」


「ないわよ。これがメインだったもの」


 そう言いながら水着が入った袋を見せる。

 袋の中には俺の水着だけではなくもうひとつビキニの水着が入っていた。

 

「あの、これは?」


「ああ、私もがんばってみようかなって思って」


 と、赤い頰に手を当てながら言った。

 絵里さんは30代後半とは思えないくらい若く見えるし、全然OKだと思う。

 俺はそんなことを思いながら絵里さんと車へ向かった。

 

「明日、楽しみね」


「はい」

 

 明日は本当に楽しみだ。

 海は何年ぶりだろう?

 早く明日にならないかな。

 

 俺は自然に笑みがこぼれてしまう。

 そんな俺を見て絵里さんは微笑みながら車を発車させた。

 

 楽しんでいただけたでしょうか。ご愛読ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ