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新・ファンシフル  作者: あーにゃ
第一章
4/9

もう一つの世界

「ここは……?」


憂李が目を開けると、そこは何もない真っ白な空間だった。ゆっくりと上体を起こし辺りを見るが、上下前後左右が全くわからない。


「おい、誰もいねーのか」


声を上げても誰も来ない。憂李は立ち上がり運に任せ前へ進んでいった。だが、景色は一向に変わる気配がない。その時、首にかけていたネックレスの指輪がピカピカと光だした。ふと視線を前に向けると、今までいなかったはずの人が立っていた。片眼を眼帯で隠す小学生くらいの少女だ。


「なっ! てめいつからそこに」

「……」


少女は口を開かず、ただ目の前を指さし歩き始めた。三歩進むと振り返り憂李を見る。まるでついて来いと言っているようだ。憂李は渋々後について歩いた。少女は道がわかるのか黙々と進んでいく。

結構歩いたその先には大きな扉が閉まった状態で建っていた。すると突然少女が振り返り手の平を上に向け伸ばしてきた。


「な、なんだよ、俺何にも持ってねーぞ」


少女はただ首を横に振り手を伸ばす。戸惑っている姿を見て、自ら憂李の首に手を伸ばした。その行動に 驚き憂李は手で払った。すると少女の頬に爪先が当たり血が滲み出た。と、同時に憂李の頬も少女と同じ部分から血が滲んできた。


「なんだよ、これ、つか、ごめんお前大丈夫か」


また、少女は無言で手の平を上に向け伸ばしてきた。憂李は咄嗟にネックレスだと思い、外して手の平に乗せた。少女はそのネックレスから指輪だけを取り自分の右手人差し指に入れた。すると少女の背から白い羽根が映えてきた。そして同時に左目の眼帯が取れ、見てみるとその瞳は黄色で染まりその中に『雷』と黒い文字が浮かんでいた。


「おまえ、それ」


すると少女は口を開いた。


「私の指輪見つけた、これでやっと話せる」

「お前の指輪?」

「ムッ、お前なんて呼ばないでよ私の名前は憂李だよ」

「は?」

「……そうだね説明する。私はあなたで、あなたは私、簡単に言うとあなたの能力で生まれた者、だから、あなたが死ぬば私も死ぬ、私が死ねばあなたも死ぬ、わかった?」


少女は早口で聞き取りにくかったが、憂李は自分の怪我した頬に触れてから少女の頬を見て少し納得したような顔つきになった。それから少女に近づき強めに怪我をしていない頬をつねるとお互い「いったい」「いって」と頬を赤らめた。


「マジかよ」

「だから嘘言ってないもん、でも、ホントよかった指輪見つけたから、これで外に出られるよ」

「なっ! そだ、指輪返せよ、それ大事なもんなんだ」


慌てる憂李を見て少女は笑い、それから憂李の頭を撫でた。その行動により憂李は固まった。


「プッ、大丈夫ここからでれば自然にネックレスに指輪が掛かるから、それより、準備はいい」

「何の?」

「今この扉を開ける、けど向こうはあなたが住んでいた世界じゃない、『ファンシフル』の世界、とても危険で命懸けになるかもしれない」


流石に何を言っているのかわからなかったが、先に進んでみるしかないと決断し、深い深呼吸をした。

すると、少女は扉に手をついた。そして横目で憂李を見た。憂李は「はぁ~」と溜め息をついてから一緒に扉に手を付けた。

少女が口を開いた。


「我が主の名は憂李、契約の元、ファンシフルへの移動を許可する」


そう言うと扉が光に包まれ開き始めた。憂李はそれに迷うことなく前に進もうとした、その時、咄嗟に腕を捕まれ振り返った。


「憂李、あなたには雷の力が宿ってる、その力で助けてあげて、あなたの一番大切な人を」


少女は一度強く握り、その後そっと腕を離し背中を押した。憂李が扉の奥に入ると少女の姿は見えなくなり、そのまま意識を失った。


(「なんだ……フカフカしてる」)

光が瞼を通して伝わってくる。意識が戻った憂李は恐る恐る目を開けた。すると至近距離で目を瞑る既羅に気付き戸惑っていると、またその隣に鈴がいることに気が付いた。フカフカのベッドの上で女二人に挟まれていることにとても動揺し、そっとベッドから降りようと静かに既羅を跨ごうとした時、運悪く寝返りを打った。


「カチャ、カチャカチャ」


妙に変な音が部屋に響き、既羅の手元に視線をやると手錠されていることに気が付いた。手首だけだはない、足首も首もベッドに繋がれていた。驚き憂李は跨ぐのをやめ、また二人の間に戻った。その後鈴の手首にも視線をやると、全く繋がれている気配はしない。すると突然鈴は目を開けた。


「変態なの?」

「なっ!! おま、起きてたのかよ」

「ちょい前にね、それより大声出さないで、見張りに気付かれる」


鈴は警戒するようにドアを見つめている。憂李は場所を把握しようと辺りを見渡した。すると、天井にあるシャンデリアを見て息を飲み込んだ。 とても豪華で綺麗な高級ホテルだと思った。


「ねっ、あなた名前は」

「……憂李だ」

「そぉ、じゃあ憂李一言言わせて」

「な、なんだよ」


鈴はベッドの上で正座をして頭を下げ口を開いた。


「ごめんなさい、こっちの世界の問題に巻き込んで……あと、既羅のことは許してほしいの」

「そだここファンシフルだっけ、つか、頭上げろってこんな俺に頭を下げる必要ねーよ」

「う、んありがっ! 憂李寝たふり!!」


鈴の声に反応し即座に寝たふりをすると、ガチャと音がなりすぐに部屋のドアが開けられた。そこから話をしながら二人の男が入ってきた。

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