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新・ファンシフル  作者: あーにゃ
第一章
3/9

特殊な力

窓付近で気絶し倒れてしまい、何時の間にか朝となっていた。季沙の「朝だよ起きてー」の言葉で目が覚めた。床に寝ていたせいか、腰が痛い。憂季はそんな痛みに耐えながら制服を着て、リビングに向かい朝食を食べていた。


「ねーお母さん聞いて! 憂兄ってばね今日床で寝てたんたんだよ、寝相悪すぎじゃない」


季沙は憂季を馬鹿にしたように笑いながら楽しそうに話をしていた。そんな光景を見ながら憂季は「平和だな」と誰にも聞こえない声で呟いた。

時計を見るなりすぐに学校の支度をして家を出た。今日も眩しい光が憂李の目を刺激し、すっと鋭くさせる。

学校に向かう途中、公園の前で足を止め、中を覗いてみた。椅子にはスズメが二羽留まっている。その景色はあまりにも普通で静かだった。

学校に到着し下駄箱に向かうと、目の前で既羅は上履きに履き替えていた。すると憂李に気付き目が合った。途端にいつもと変わらない笑顔で口を開いた。


「あっ、憂李おはよ」


憂李は返事が出来ずただ既羅をジッと見つめた。昨日のは見間違えだと心で何度を繰り返した。


「なぁ、あれ、憂李じゃね、きっも既羅さんのことジッと見てるよ」

「止めろ、殴られるぞ」


それを聞いて我に戻った憂李は急いで視線を逸し、すぐに上履きに履き替え既羅の横を通る際に耳元で「わりっ」と小さく呟き堂々とした顔付きで教室へ向かった。既羅はそんな憂李を見た後に人差し指くらいの大きさの瓶、それと携帯を取り出して一件のメールに目をやった。そこには『貫棟憂李と名乗る男の血を採取せよ。ティカル。追伸、殺しても構わない』と書いてある。ティカルとは、本名ティカル・ルベンダと言う一人の男であり、既羅を支配している者でもあるのだ。何故憂李の血が必要なのかわからない既羅は複雑な表情で携帯を強く握り締めた。

あっと言う間に授業は終わり放課後になった。いつも通り生徒が次々と帰っていく中、憂李は一人で外を眺めた。そこで昔のことを思い出したのか、軽く微笑んだ。すると、突然後ろから肩を叩かれそれに驚いた憂李が振り向こうとした瞬間に窓の角に顔をぶつけ、鈍い音が響いた。


「憂李ダサいよ」


苛立ちを覚えながら睨みつけるとそこには笑いながら既羅が両手を後ろで組み、立っていた。


「何の用」

「えと、携帯見つけてくれてありがとね、それで、もう一つだけ頼み事いいかな?」

「なんだよ」


憂李がそう言うと既羅が下を向き少し考え込んだようにした後、目の前に送られてきた瓶を出した。憂李はそれを見て、何を示しているのか分からずただ黙っていた。


「私の為に死んでくれない?」


その時の既羅の声は何時もより鋭く嘘だと思えなかった。

何度も喧嘩をしたことがある憂李だが既羅の殺気は恐ろしく歪んでおり、思わず足を一歩後ろへ下げた。すると、途端に空気が変わり何の音もしなくなった。校庭で行っている部活の練習声も友達と話す会話や鳥の声さえも全く聞こえない。


「どうなってんだ」

「邪魔だったから、ちょーっと別の空間に飛ばしただけだよ」


話についていけないと思い憂李は呆れ顔でスクールバッグを肩にかけた。すると恐ろしい殺気を漂わせ、小さな氷でできた剣を右手に握り切りつけてきた。

驚いた憂李は反射的に閉じた目を恐る恐る開けるとそこには昨日も助けてくれた、ポニーテールの女、鈴が既羅の氷剣を自分の刀で受け止め立っていた。それは悲しそうで辛そうな顔だった。


「既羅、何をしているのこの人はただの人間でしょ」

「鈴……そこどいて、私は依頼をこなしているだけだから」


既羅の力が強くなり鈴は苦しそうに押さえ込まれる。それを見て既羅は眉間にシワを寄せジャンプで後ろに下がった。それから瓶を憂李と鈴の前に突き付けた。


「じゃあ仕方ないや、憂李! 何処か体の一部切り落として、それで許してあげる」

「既羅いい加減にしなさいっ!!!!!!!」

「……鈴、邪魔だよ」


そう言うと既羅の左目が赤く染り、冷気が漂った。それは夜中で出会った人と全く同じ。


「既羅、目を覚ましなさい」

「邪魔だと、言ってるでしょ!」


既羅の声に反応し、クラスの窓ガラスが大きな音と共に粉々に砕け下へ下へと落ちていった。それを見て憂李はただ事じゃないと恐怖を覚えた。


(「つか、俺女に守られて何してんだよ、だっせ」)


憂李はその場で立ち上がった。何も出来ないと分かっていても、ここで無駄死にする訳には行かなかった。なぜなら、昔の友達との約束が果たされるまで絶対生きてやると誓ったからだ。


「ざけんな、お前らのゴタゴタに巻き込んでんじゃねーよ」


と言った途端に既羅は憂李の目の前に一瞬で移動し、首に氷剣を向けた。


「この首貰っていきます」


その言葉を聞き憂李の額からが冷や汗が滲んだ。流石にもう死ぬのかもしれないと思ったその時、割れた窓ガラスから多数、羽根のついたボールのような丸い物がプカプカと浮かんでいた。それを目にした既羅は「ちっ」と舌打ちをした後、憂李から離れた。そのボールから光が放たれ言葉が発せられた。


『無断で〈支配〉の力を使った、翰凪既羅かんなぎきおら及び他二名を通報する、直ちにこっ!』


機会が話している途中に既羅が氷剣で真っ二つに切り落とした。そこから灯油のような匂いが充満し三人は逃げることなくその場で眠り込んでしまった。

その場に黒いスーツをきた男四人と女一人が現れた。男は憂李と鈴を持ち上げ肩に乗せた。もう一人の男が既羅に腕を伸ばすと、意識が戻ったのか、弱々しい握力で男の腕を掴んだ。だが、すぐに力尽きまた、眠りについた。

既羅も肩に乗せ準備が完了すると、五人は自分の首に掛けてあるネックレスに付いてある三つの指輪の一つだけを選び強く握り締めた。するとあっと言う間に姿を消した。


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