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4.we cry down.―22


「ッう!」

 龍二は受身も取れなかった。背中に落下したじかの衝撃が走る。相変わらず、左腕の肩から先が動く事はなかった。衝撃はいつも以上に体への負担となっていたようだった。更に、その流れのまま、フードの男は龍二に馬乗りになって、ナイフを龍二の首目掛けて振り下ろした。迷いのない、一撃だった。確実に龍二を殺しに来ていた。

「ふんッ!!」

 龍二も反応は早い。振り下ろされた相手の右手首を右手で抑えにかかる。力は五分五分か、龍二が僅かに上だ。体制の問題で龍二が押され気味だが、お互いつばぜり合いの様に前後を繰り返していた。刃の先端が、龍二の喉仏をかすめる。かすめて、また離れてかすめて、僅かに突き刺さっての繰り返しが三秒程続いて、相手は左手を添えてきた。

「ッうぅううああああああああああああ!!」

 龍二は右手しか使う事ができない。だが、相手は上から、両手を使って、全体重を掛けるようにして、龍二の首元にナイフを突き立てようと、落ちてきていた。押し合い等、出来るはずがなかった。少しづつ、少しづつ、ナイフの先端が龍二の喉に穴を開けようと落ちてくる。

「くっそがぁあああああああああああああああああああああ!!」

 龍二の雄叫びが廊下に響く。人間、声を出しながら動いたほうが力を発揮出来るというが、この場合ではそれでも両手、片手の差を埋める事は出来なかった。




    44




「明治が殺されただ?」

 薄暗い、六畳程の部屋の中で、浩二は声を抑えて言った。話し相手は耳に当てた電話の先にいた。

 浩二の表情は渋い。眉を顰めて、目を伏せていた。空いた手で眉間を何度かつまんでから、溜息を吐き出し、電話の先の声の主に訊く。

「で、なんで俺にそれを連絡してきたんだ。アンタは」

『明治さんから指示を受けていました。明治さんの身に何かあったら、アナタに連絡するように、と。番号と暗号付きで』

 電話の向こうの声は男特有の低い声だった。当然声だけで全貌を掴めるわけではないが、声が聞こえただけでこの状況では十分だった。

「わかった。それだけで十分だ」

 浩二はそうとだけ吐き出して、向こうの返事を待たずして一方的に通話を終了させた。通話を終えた携帯をベッドへと投げ出して、浩二はデスクについてから、深く溜息を吐き出した。そして、「明治、何を考えているんだ」と呟いた。

 協会の重役である明治が連絡を寄越す、という事は、『それ程の事態』が起きている、という事である。それに気づかない程浩二も馬鹿ではない。浩二は考える。すぐに、協会が余計な事をしようとしている事が分かる。killer cell計画のような、アホな計画か、それともkiller cell計画に直結するアホなモノか、と浩二は考えた。

 そもそもkiller cell計画はどうして作られたのか、と考えた。killer cell計画等しなくても協会には強力な殺し屋がいるし、数もあった。神代家が手を引いていた中、それこそ本当に余計な事をしなければ、わざわざkiller cell計画で力を持った殺し屋を作る必要もなかった。だが、連中は作り出した。どうしてだ、どうしてそんな事をした。ただ、作ってみたかったから、興味があったからでそんな事をするはずがない。

「一体何が起きている……」

 浩二は吐き出す。表情は固い。まとまらない考えに苛立ちを感じ始めていた。

 数秒、後に、浩二はふと思う。現状を考えた。自身の事ではない。自身の周りで、『龍二の周り』で起きている最近の『異常事態』を思い出した。

 そして、呟く。

「抑止力……」

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