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3.the new arrival and intruder.―4

「それにしても時間が経つのは早いねー。もう夏休みだよ」

 日和が遠い目をして言う。その姿がどうにも年寄り臭くて、龍二は少しぎょっとして目を開いた。

「年寄りくせぇな。早くも遅くもねぇよ」

 率直に龍二は言う。

「そうかな? 私は早く感じたよ。イロイロあったしさ」

 日和を擁護するかの如くそう言い返す春風。春風のイロイロとはそれはもう数え切れない程の体験だろう。龍二はそれを知っている。確かに、春風であればそう思うかもな、と思った。

 喋る春風を視界の隅に入れながら、龍二は思った。なんで、春風を仲間に引き入れようと思ったんだったか。

(…………、)

 考えるが、思い出せはしなかった。龍二は後先考えずに欲求に忠実に行動するタイプの人間だ。きっと春風と対峙したあの時、龍二は何かを感じ取ったか思ったか、プラスになるものを得られると確信したのだろう。

 そうだろうな、と自分でそう思い込む事にした。




    23




「よし、じゃあ行くか」

 龍二のその言葉に続く元気の良い、うん、は二つ。

 終業式が終わり、自宅へと戻ってきた龍二達は準備を終えてこれから春風の浴衣を買いに大型のショッピングセンターへと向かうところだった。

 が、突如として鳴ったインターフォンに三人の出発の一歩目は制された。

「誰だよこんな時に。礼二だったらただじゃおかねぇ」

 龍二が気だるそうにそういうと春風達はおかしそうに僅かに笑った。龍二が一人で玄関へと向かう。適当な声で「いまでますよー」と言い、龍二は特に確認もせずに玄関扉を開いた。殺し屋としてこの行動はどうなのか、と疑ってしまいそうな程に油断が見れる行動である。徹底されたこの家の構造も無駄になってしまうのではないかと思える。

 そうして龍二の視界の先に出てきた訪問者は、全身黒づくめでマスク、サングラス、帽子とで表情を隠した身長が低めの性別の判別が出来ない怪しすぎる何者かと、その人物に手を繋がれて横で大人しくしている可愛らしい少女の姿だった。

 龍二は即座に扉を閉めた。

 まずった、そう心中で吐き出した。続いてインターフォンが再度鳴らされた。その音のせいで「龍二ー?」と春風が不思議そうにリビングから顔を覗かせてくる。更に続いて、興味を惹かれた日和も顔を覗かせてくる。

「なんだ、なんでもない。ちょっとリビングで待っててくれ」

 冷や汗がダラダラと垂れ流された状態の龍二の引きつった表情に二人は首を傾げるが、春風はすぐに気付いたか、上手いこと言って日和を連れてリビングへと引っ込んだ。察しの良い女で良かったわ、と一安心する龍二。だが、問題が片付いたわけではない。

 念の為に、と所持していた銃を腰の後ろから取り出して右手に構え、覗き穴に目を寄せる。――いた。まだ、いた。もう一度、黒づくめの人物がインターフォンを押そうとしている姿が見えた。

 そこまで見て、龍二はやっと疑問を抱いた。何故、インターフォンなんか使うのか、と。相手が怪しい、怪しすぎる格好だったがためについ殺しの世界と存在を結びつけてしまったが、それはおかしい。インターフォンなんか使おうと考える事がまずおかしいし、何より、少女を連れているという姿が違和感の塊だった。龍二を狙う殺し屋が大勢いるのは分かっている。その中から実行に移す者は絞られるが、それでも数が多いのは理解している。

 龍二を殺しに来たのではないのではないかと思った。だが、懸案。最悪の自体を想定するのが常に正しい。それが、違ったとしても。

 締め直した鍵を開け、静かに、僅かにだけ龍二は玄関扉を開けた。すると、インターフォンを押そうとしていた黒づくめの動きが止まり、サングラス越しの黒づくめの人物の視線と龍二の視線が重なった。

 龍二の銃を持つ右手は玄関扉に隠されていて二人からは見えないが、いつでも動ける様にはしてある。

「何か用ですか?」

 眉尻を釣り上げながら龍二は小さい声で訊いた。一応、相手が一般人だった場合の事も考えてのセリフだろうか。

「神代龍二さん?」

 黒づくめの男が声を発した。その声で、女か、と龍二は気づく。そして、攻撃してくる様子がない事にも気付いた。両手ははっきりと確認出来る位置にある。それに片手は少女と繋がれている。仮に龍二を狙ってきている殺し屋だったとしたら、龍二が警戒している事くらい理解出来るだろう。だとしたら、龍二が玄関扉の先に銃を隠している事くらい予想出来る。それが分かっていれば、今の黒づくめの女は龍二を殺せない。殺す事が出来ない。そもそも伝説とまで呼ばれる事のある男を目の前にしているのだ、この姿は舐めきっているか、それ以外の目的できているとしか判断ができない。

 龍二は扉をもう少しだけ開けた。

「そうだけど、何か?」

 訝しげに問う龍二は一目で警戒している、とわかった。それほどに眉を顰め、目を細めていた。相手の格好が格好だ。仮にどちらともが一般人だったとしてもこのような光景にはなるだろう。女が答えるまでに龍二は少女を一瞥する。白という印象が強い少女だった。黒の強すぎる黒髪が少女の真っ白な肌をより強調させていた。不思議な雰囲気の少女だな、と思うのは無理がなかった。

 龍二が黒づくめの女に視線を戻したと同時、女は口を開いた。

「お願いです。私達を助けてください」

「は?」

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