MMORPG迷い込みがやってみたかったんです。
「ふぃ~……今日のノルマ終了!」
野良仕事で良い汗を流す男・ナナシノゴンベエ(32)。
彼はこのMMORPG内に閉じ込められてしまった1人である。
小屋に戻りシャワーを浴び汗を流したあと、缶ビールを開け勢いよく流し込む。
「ぷはぁ!この一杯のために生きている!!」
「お?」
『ななちゃん!今日こそはイエスって言ってもらうからね!!』
「何だ坊か。吃驚するじゃねぇか」
『ちゃんと点滅してるでしょ!音もなったはずだし!』
「わかんねぇよ。ふれんどりすとってやつ、坊としか使ったことねぇし」
『っもう2ヶ月以上やってるんだからいい加減慣れてよね!』
「へぇ~い……」
ぐびぐびとビールを飲みつつ、つまみを食いつつ。
適当に相手をしていると怒鳴られた。おじさんは耳が痛いよ。
『ななちゃんも、早く元の世界に帰りたいでしょ?一緒に頑張ろうよ』
「おれはこのままでかまわんよ。っていうか夢が叶って万万歳なんだが」
ナナシノゴンベエ(32)、夢はダッ○ュ村に住み込むこと。または自給自足の生活。
元々友人の働く会社が開発したこのゲーム。
スポンサー兼半モニターとして山を丸々頂いたのである。
戦闘は必要最小限、討伐系クエストも最小限、なのでギルド所属もなし。
只管山で自給自足の生活をしているのだった。
半引きこもりのため、睡眠・入浴以外一日中パソコンの前である。
なのにレベルは48と中堅。
その変わり緑の魔法だけレベルMAX、サブスキルである農業や料理、手芸、陶芸といったものの習得率だけが高い。
『ちょっと聞いてるの!?』
「わりぃ、何だっけ?」
『だからー!帰らないと仕事もあるでしょ!!』
「おれ今足骨折してるから仕事休みなんだよね」
だからこそ半引きこもりでネットゲームがやれていたのである。
そうでなかったら仕事三昧だ。
『くっ……リアルで何もないの?心残りっていうか!』
「特には」
『でも僕は帰りたいのー!協力してよ!!』
「別におれが協力せんでもいっぱいいるだろ。レベル高いのが」
現に坊と呼ばれるこの少年のレベルは79。
ギルドの仲間はそれ以上がごろごろといて、ゲーム内で最強ギルドらしい。
因みにナナシノゴンベエ(32)は、MMORPG経験はなく、ギルドの意味もわかっていない。
『いるけど、ななちゃんの力が必要なんだよ……』
「そんな可愛らしい声をだしてもおれには通用せんわ」
『ち』
「とにかく、おれ今から晩飯だから。じゃあな」
強制終了。
さて今日の晩飯は何にしよう。
キャベツが収穫出来たし、ロールキャベツにするか。
それをメインに里芋とイカゲソでも煮て・・・あとは味噌汁と米でいいかな。
味噌汁に野菜たくさんいれれば栄養面も大丈夫。
ナナシノゴンベエ(32)、MMORPG迷い込みという貴重な体験中、脱出する気ゼロである。
因みにナナシノゴンベエは本名じゃないですよ。
本名はナナセシノブという設定です。
32もゲームの中の年齢です。