第8話 おねむの学校
「起きろ。おい華宮」
「は、はい!」
授業中、眠気に耐えられず眠ってしまい、先生に怒られてしまった。
フウカさんと徹夜で『愛してるゲーム』をしたせいで、眠気が限界突破している。
もう本当に…本当に眠くて仕方がない。
1日くらい寝たいところだけど…生憎と、この学校の先生は授業中の居眠りにうるさい先生ばかりなので、眠ることは許されない。
「どうせゲームでもして遅くまで起きていたんだろう?」
「まぁ…はい」
「家でどんなように遊ぶかは好きにしたら良いが、授業中に居眠りする事になるような遊びはするなよ」
「はい…」
…ごもっともです。
やっぱり、フウカさんの言うことを聞いて、あのまま寝るべきだったのかな?
でも、それをすると私とフウカさんの信頼が……zzz
「おい華宮!!」
「ひゃい!?」
眠すぎてまた寝てしまった。
お昼休み
私は眠たい中、別館の階段でいつも通りミズキとタマキの2人と一緒にお昼を食べていた。
「昨日何してたの?」
「…知り合いとずっーとお話してた」
「そうなの?だから電話も繋がらなかったのか…」
「あ、ああ…まあね?」
本当は、フウカさんの屋敷に居たから電波が圏外で、繋がらなかっただけなんだけど。
まあ、そんな事正直に話せるわけないから、知り合いとずっと電話してたことにした。
「その知り合いってどんな人?もしかして男?」
「えぇ~?ついにサユリにも春が来た感じ?」
「二人ともいじらないでよ…本当にただの知り合い」
まあ、二人の言ってることは間違いではない。
男ではないけど、私にも春が来た。
…まあ、段階をすっ飛ばしていきなり婚約してるけど。
「そういえば昨日、一人でご飯食べたいって言ってどこかに行ってたけどさ。もしかして、その知り合いと話してた?」
「ああ。あの時は別の知り合いと話してたよ。でも別に特別他意はないからね?」
「「ほんとに~?」」
「ほんとだよ!!」
2人はあんまり信じてない様子だけど…ん?
『サユリ様。ちょっとお時間よろしいですかな?』
木仙さんの声が頭に響き、私はその場で立ち上がる。
「ちょっとトイレ行ってくる」
2人にはそう言い訳をして、その場を急いで離れると人気のない場所で返事をする。
「ここなら大丈夫ですよ」
「うむ。もう来ておる」
「うわっ!?」
いきなり背後に立たれ、驚いて飛び跳ねてしまう。
「そんなに驚かんでもよかろう。さて…時間がないゆえ、すぐに事を済ませよう」
木仙さんは、私の額に人差し指を当てると、何かをした。
その何かは、分かりやすく実感できた。
「眠気が…」
「一時的なものじゃ。フウカ様にはきつく言っておいたから、今晩はゆっくり休むとよい」
「あ、ありがとうございます」
「それと、次からはもう少し後をついて来ておる者がおらぬか確かめてから来ることじゃな」
「えっ?」
「ではの」
その言葉と共に木仙さんの姿が消え、何故か鮮明なイメージが浮かび上がる。
これは…ミズキとタマキだね。
こっちに忍び寄ってるイメージが浮かび上がってくる。
「そこに居るんでしょ?隠れても無駄だよ」
私がそう言うと、2人は慌てて逃げ出した。
姿は見えてないけど、木仙さんがくれたイメージのおかげで、どんな動きをしているのかよくわかる。
「とりあえず二人は追い払ったけど…どうしようかな?」
言い訳はどうやってしようか…
怪しさマックスだよね、今の。
う~ん…まあいいや。
適当に誤魔化せばいいよね?
そんな風に楽観的に考えてお昼ご飯を食べに戻ると、2人がそわそわしていた。
「まだ食べてなかったの?」
「えっ?あ、ああ~…まあね?」
「あー…ほら、サユリと一緒に食べたいなって思ってさ。待ってたの」
「ホントに?ありがとう!」
私が、さも何もなかったかのような態度を取って、2人は話を合わせてくれる。
でも、かなり気になっているようで、チラチラとこちらを見たり、何度も目を見合わせている。
「…で、サユリが話してた知り合いって誰なの?」
「え…?」
「やっぱり気になるじゃん?教えてよ~」
…これはつまり、あれだよね?
さっき誰と話してたんだって事だよね?
全然、触れてこようとしてくるじゃん。
「私の知り合いの…召使?…かな?」
「なんで疑問形なのよ…」
「ってか、召使ってなに?お金持ちなの?」
「まあね〜」
お金持ちって言うか…姫様だし。
まあ、ホントの事を話しても信じてもらえないだろうし…誤魔化すしか無いんだけど。
「いいなぁ〜お金持ち。もしかして、彼氏作らなかったのこのため?」
「いや、そんな事は…」
「どこまで行ってるの?結構いい感じだったりする?」
「ま、まぁ…?」
ある意味騙された形で解消できない婚約を結んだけど、なんだかんだ納得したのは、うまくいってるにカウントされるかな?
いや、まだ出会って数日しか経ってないんだし、そんなの決められないか。
「アピールはどっちからしたの?相手から?サユリから?」
「相手から、だね」
「いいなぁ〜。やっぱり美人は違うねぇ」
「そ、そうかもだけど…私は、できれば内面を見て私を相手に選んでほしかったかな」
「またまた〜。贅沢言っちゃって」
贅沢…確かに、贅沢だね。
でも、フウカさんは私の外見だけを見て一目惚れし、交際を申し込んできた。
そこに『私』はおらず、外側だけの私を見ている気がしてならない。
首を縦に振ってしまった以上、文句は言えないけれど…贅沢はしたい。
「あの人は…私のことをどこまで知ってるのか、全然わかんない」
「…ん?どういう事?」
「そのままの意味だよ。私の全てを知っているのかもしれないし、外側だけで何も知らないのかもしれない。でも確かなのは、私のことを好きでいてくれてるって事かな?」
「「…なんか、かっこいい」」
相手がどのくらい私のことを好きかなんて、フウカさんのように心を読む能力でも無ければわからない。
もし、私にも心を読む力があれば、あるいは…
「……サユリ?」
「…なに?」
「なんか…今にも寝ちゃいそうなほど眠そうな顔してるけど…?」
「……ホントだ」
タマキの言う通り、急激に眠たくなって、頭がグワングワンしてきた。
おかしいな…木仙さんの言っていた一時的は、こんなに短いの?
じゃあアレを使った意味…
「やばい…なんか…体に力が入らない…」
「えっ!?それ、大丈夫!?」
猛烈な眠気はその勢いが凄まじく、あまりの眠さに今にも意識を失いそうだ。
体から力が抜け、フラフラと自分でもわかるほど揺れ出す体。
「サユリ!?大丈夫!?サユリ!!」
「ちょっ!?せ、先生呼んでくる!!」
やがて眠気に耐えられなくなり、私は倒れるように眠りについた。
完全に意識が消える直前、2人の叫び声が聞こえたけれど…それ以外は何も聞こえなかった。