第26話 青春恋愛相談
フウカさんと一緒に寝た次の日。
フウカさんは朝ご飯も食べずに朝早くから帰ってしまい、お母さん達が心配していた。
「行ってきま〜す!」
朝ご飯を食べ、歯磨きと洗顔、そして髪を整えると出発の時間。
私はお母さんに行ってきますを言って家を出ると、すぐ前にミズキとタマキが待っていた。
「おはよ〜」
「「おはよ〜」」
いつもの3人で学校に向かっていると、タマキが私達にとある相談をしてきた。
「実はさ…気になってる人がいて…」
「えっ!?」
「タマキに彼氏!?」
タマキは前に付き合っていた彼と別れてから、しばらくそう言う話を聞かなかった。
しかしついにタマキに彼氏か…一体どんな人かな?
「3組の――君って知ってる?」
「知ってる知ってる。確かテニス部の結構強い人だよね?」
……あれ?
いま、人の名前が聞こえなかったような…
「サユリはどう思う?」
「え?う、うん…凄くいいと思う」
「何その反応?私には金持ちの良い人がいるからどうでもいいや〜って言いたいの?」
「言ってない言ってない。そんな事微塵も言ってない」
何故か人の名前が聞き取れなかった事に違和感を感じつつも、昨日一晩フウカさんと一緒に寝たから変な影響を受けてるんじゃないかと考えて無視する事にした。
「でも実際聞きたいよね。サユリはその良い人と付き合ってて、どんなふうに過ごしてるの?」
「どんなふうにか……難しいなぁ」
簡単に纏めちゃうなら…ずっとイチャイチャしてるかな?
フウカさんとは、ずっと話してるか、カードゲームなんかで遊んだりしてるか、ずっとお互いの体を触り合ってるかしかしてない。
…と言うか、そもそも出会ってからそんなに時間経ってないし…
「ずっと話したり、カードゲームとかで遊んでるかな?」
「…それだけ?」
「うん。だけ」
「楽しいの?それ」
「楽しいよ。すっごく楽しい」
…どうやら、私達のイチャイチャは2人から見るとそんなに楽しそうには見えないらしく、反応が微妙だ。
まあ、話せない事のほうが多いから仕方ないよね。
「まあ、サユリは特殊って事で……と言うか、サユリの場合は相手からだもんね〜」
「そうだよ。いきなり結婚まで申し込まれたんだから」
「「えっ!?」」
「……あっ」
やばい。
思わず口を滑らしちゃった…
フウカさんとの結婚の事は話したくないし、出来ればまだのほうが良いんだけど…
ミズキとタマキの方を見ると、それはもう目を輝かせて次の話を楽しみにしている。
「えっとね…私達の場合は相手が一目惚れしていきなり結婚を申し込まれたんだよね」
「それでそれで?」
「最初私はそれを本気だと思ってなかった。だから首を縦に振っちゃったの。そしたら…まあ、あっちは本気だから」
うん、婚姻の証をいつの間にか付与されていて、私達は夫婦になっていた。
でも、その話は出来ないし…
「ある意味外堀を埋められたと言うか…まあ、後に引けなくなっちゃって」
「え?じゃあ…」
「もう…約束してるんだよね」
「「えぇ〜!!」」
それはもういい笑顔で私に近付いてくる2人。
そうだよね。
友達が金持ちと結婚を約束してるって聞いたら、そんな反応にもなるよね。
…お金を貸してとか言って来ないことを祈ろう。
「良いなぁ〜。そんなのもう勝ち組じゃん」
「実際その通り」
「な〜んでそんな大事な事黙ってたの?私達友達でしょ?」
「いや…話せる内容じゃ無かったし…」
主に、信じてもらえないと言う意味で…
「じゃあ、卒業したらもうそのまま結婚して主婦にでもなるの?」
「う〜ん…どうだろう?」
フウカさん自体仕事して無いし、私がフウカさんのお嫁さんとして本格的にあっちに住むことになった時、私に何かしないといけない仕事があるのかと問われると…多分ない。
かと言って主婦になんてならないし…あっちで何をするかは今から考えたほうが良いかも。
「私が卒業したら、か…」
そもそも卒業できるのかな?
なんだったら、卒業に意味はあるのか?
霊界で生きるなら、人間界での学歴なんて意味はない。
だから、すぐにでも学校を辞めて、フウカさんとくっつくべきだと思う。
…でも、その場合お父さんやお母さんはどうしよう?
うちは一人っ子だ。
私がいなくなったらうちはおしまい。
だからもしかしたら否定されるかもしれないけど…否定されても婚姻の契は結んでるしなぁ。
今更どうこう言われようとどうしようもない。
なんだったら、一族郎党道連れにして死ぬしかない。
「…なんか、将来が確約されてても大変そうだね」
「結婚したから安泰って訳じゃないんだよ?むしろ考えなきゃいけない事のほうが多い」
「だね。サユリを見てると、それがよく分かるよ」
私の場合だと、特殊過ぎてどうしたらいいか分からない、だけどね?
…と言うか、介護とかどうしよう?
フウカさんや木仙さんに頼めば、介護用の人を用意してくれるかな?
あっちに永住する事になったら、介護の為に帰るのもう大変だろうし…はあ、そういう事を考えるのは止めよう。
今は、フウカさんとの幸せな生活の事だけ考えれば良いんだから。
「私はいいとして、タマキはどうなの?いつアタックする?」
「う〜ん…私の事、もう少し理解してもらってから?」
「それじゃ遅いよ!――君って確か結構人気だったでしょ?」
「そうだけど…」
…やっぱり聞こえなかった。
おかしい。
名前に関する部分だけモヤが掛かったように理解できない。
……ちょっと木仙さんに見てもらうか。
「ごめん。ちょっとトイレ行きたい」
「ええ?」
「なんで出発前に済ませなかったの?」
「ごめんごめん…そこのコンビニ行ってくる」
適当にトイレに行きたいって事にして、私は近くのコンビニに入る。
そして、トイレに駆け込んでそこで鏡を使う。
…私の他にもトイレを使いたい人がいるかも知れないし、用事は手短に。
「…やはりサユリ様か。いきなり屋敷の中に現れるのは辞めてくだされ」
「ごめんなさい。私に掛かってる変なのをどうにかして欲しくて…」
「変なの?……フウカ様じゃな。あとできつく言ってこう」
私の中に掛けられた力を見抜いた木仙さんは、私の額に指を当てて変な力を消してくれる。
実際、それをされてからは世界が急にハッキリと認識できるようになり、目や耳がシャキッとした。
「認識阻害の暗示じゃな。特に男に効くもの。それ程他の人間にサユリ様を取られたくないと見える。のう?フウカ様」
明後日の方向にそう問いかける木仙さん。
まあ、見てるだろうね、私の事。
でも出てこないのは、出てきたら木仙さんに叱られるからだ。
「やれやれ。詰めが甘いですな、フウカ様も」
「じゃあ、お説教はお願いします。私はこれから学校なので」
「うむ。任された」
そう言って、お説教を木仙さんに任せると、私は鏡を使ってコンビニのトイレに戻る。
幸い他に使いたい人はいなかったみたいで、大丈夫な様子。
私は急ぎ足でコンビニを出ると、2人と合流する。
そのまま話しながら登校し、フウカさんの暗示が消えたことを確認して学校にやって来た。
◇◇◇
サユリさんの通う学び舎の上空。
「…何処の世界、どこの時代の女子も、話す内容に大差はありませんな。フウカ様」
「……はい」
「なんですかな?せっかく人間界に連れてきたと言うのに…何が不服なのですかな?」
「不服などありません。ただ…サユリ様はご友人に囲まれて楽しそうですね、と…」
「フウカ様。愛する相手の友人に嫉妬し始めてはおしまいですぞ?国が滅びる原因の一端になりますからな」
ばあやは私を人間界に連れてきてくれた。
そして、サユリさんの通う高校と言う勉学の時間が終わるで待機してくれるらしい。
…しかし、ここで何もせずボーっと時間を潰すのも勿体ない。
何か、サユリさんの為になる事をしたい。
「ばあや。何かサユリさんの為になる事は無いでしょうか?」
「無いでしょうな。忘れ物を届けると言うよくある自体も、サユリ様なら境界の鏡がありますから」
「今朝もいきなり屋敷の中に転移してきた時は驚きましたよ。流石は鏡と言ったところです」
今朝、私がかけた暗示を解くためにサユリさんが屋敷に転移してきた。
本来、屋敷には私、ばあや、お父様の3重の結界が張られており、転移での侵入が出来るのはその結界を張った私達3人のみ。
あるいは私達の誰かの許可を得た者のみ。
私もばあやも、ましてやお父様もサユリさんに許可は与えていない。
にも関わらず侵入出来た。
…それは一重にばあやがサユリさんに渡した境界の鏡の効果によるもの。
「あらゆる障害を無視し、望む場所へ転移する境界の鏡。しかしその使用には膨大な量の霊力を必要としますが…」
「無尽蔵の獣と呼ばれた我の十倍の霊力を持つサユリ様には、大した消費では無いのでしょう。暗示を解くためだけにわざわざ屋敷へ転移するなど…我では早々やりませんな」
ばあやでも早々やらないと言う程の異能。
その上今は封じているとは言え、一時期は神通力を使おうとした…
もしサユリさんが神通力を使えるようになれば…真っ先に共鳴の神通力を覚えてもらうとしましょう。
そうすれば…
「…ここでこういった事を考えるべきではありませんね。ばあや。帰りましょう」
「帰らないと駄々をこねるかと思いましたが…どういった風の吹き回しですかな?」
「ふふっ…世継ぎの件をお父様に報告しに行こうと思いまして」
「はぁ?」
ばあやは理由がわからず困惑している。
ですが、すぐに理解できるでしょう。
『千変万化の姫』と呼ばれた私と、ばあやをも上回る霊力を持つサユリさんが力を合わせれば、きっと……
私はばあやの力を借り、一度屋敷へ戻る。
そしてそこで正装に着替えると、お父様の住む城へと転移するのだった。




