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辺境伯令息は、今日も甘い仮面の下で毒を吐く  作者: 悠木 源基


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第42章 ミンティアの学生生活

 前章のあとがきで、次章で完結予定だと書きましたが、伏線の回収をしていたら、長くなってしまい、この章を含めてあと三章投稿することになりました。

 適当なことをお知らせしてすみませんでした。

 話は間違いなく完結させたので、訂正や確認作業が済み次第投稿します。


 ミンティアの最終学年は、これまでにもまして充実したものになった。

 女性初の生徒会長としてその役目をしっかりとこなしながら、日々の勉強や魔術研究、魔術や体術訓練も欠かすことなく続けていた。

 相変わらず多忙を極めていたが、昨年度までとは違い、友人や協力者が増えたので、それでも少し時間に余裕ができた。

 そのおかげで親友のハニーと、生まれて初めて女子トークを楽しみながら、大好きな菓子作りをするという夢が叶い、ミンティアはようやく学院生活を満喫することができた。

 

 しかしそんな有意義な学生生活の中でも一番幸せな時間は、たとえそれがほんの僅かな時間だとしても、ラフェールと過ごしている時だった。

 ようやく人目も気にせず堂々と、婚約者として側にいられるようになったのだから。

 

 

 学院に入学してからの一年間はかなり辛いものだった。

 それは勉強や研究や訓練、そして生徒会でのエンドゥー王子とのやり取りのせいではなかった。ただラフェールに逢えなくて寂しくて悲しかったのだ。

 

 七年間ずっと一緒にいたのに、顔を合わせることも話すこともできなかったのだから。

 そして、彼を思いながら、わずかな時間を見つけては、彼への贈り物用のマフラーやセーターを編んだり、ハンカチに刺繍を刺していた。

 

 タウンハウスを持つ学生は、週末ごとに家に帰る者もいた。しかしそれを持たない裕福でない家の学生は、夏休みと冬休みと春休みの長期休みに帰るのが一般的だった。

 しかしその中でも、辺境の地に領地を持つ学生は、帰省するだけでもかなりの日数を要した。

 片道だけで一週間もかかり、往復だけで休みが終了してしまう者もいるくらいだから。

 そういう者達は、学年末の一番長い休みにだけ帰省することになる。

 

 そう、ミンティアもその一人だった。それ故に彼女が入学後初めて帰省したのは、一学年が終わったときだった。

 瞬間移動ができるラフェールの方が、王都に逢いに来てくれると何度も言ってくれた。

 しかし一度逢えば、すぐにまた逢いたくて堪らなくなってしまう。それが怖くて絶対に来てはいけないと厳しく言い聞かせた。

 そもそも王族から命を狙われている可能性が高いのに、単独で王都になどに越させられるわけがないではないか。いくらラフェールが人並外れた力の持ち主だとはいえ。

 

 後になって、こっそり瞬間移動でやってきては、ミンティアをこっそりと寮の窓から眺めていた、と彼から聞かされたとき、彼女は激怒した。

 もっとも口にはしなかったが、心の中では、自分のために逢いに来てくれていたのだと嬉しく思ってはいたのだが。


(ハビットはストーカー行為だとドン引きしていたけれど)

 

 そして何事もなく無事に済んでいて良かったと、彼女は心底思ったのだった。

 

 

 

「学院では他人の振りをしてね」

 

 学年末の休暇を終えて学院に戻る馬車の中で、これから入学するラフェールにミンティアは何度もそう念を押した。

 もし二人が婚約者同士だとわかってしまったら、みんなに騒がれて、お互いに落ち着いて学院生活が送れなくなるからと。

 彼女は必死に虚勢を張っていた。彼女はラフェールのために、どうしても魔術大会に出て優勝して、第一級魔術師の資格を手に入れなければならなかったから。

 

 そしてそのために彼女は、無理矢理に塩令嬢を演じていたのだが、彼女の目はいつだって彼の姿を追っていた。

 せっかく同じ学院にいるのに、赤の他人の振りをしなければならないのは辛かった。

 ただでさえ入学当時のラフェールは、いつもご令嬢達に囲まれていたのだから。

 

 しかし入学から一月くらい経ったころから、彼はいつも一人の男子と一緒に行動するようになった。

 ミンティアがこっそり調べてみると、その少年はとにかく普通で、なんの問題もないどころか、取り立てて特質するものもない人物だった。

 そんな平凡な彼をなぜあの婚約者が友人としたのか、それが不思議だった。

 

 しかし、その男子にラフェールは本当の素顔を晒していた。自分を含めたキシリール一家とその関係者にしか見せないその素顔を。

 いつでもどこでも誰にでも、にこやかな天使の微笑みを浮かべながらも、滅多に人に心を許さないあのラフェールが。

 

 最初のうちミンティアは、その男子生徒、ハビット=カンタールに嫉妬していた。自分の居場所であるラフェールの隣にいつもいられて、彼からの笑顔を向けられていることに。

 しかし、そのうちに彼に感謝するようになった。孤独になりがちな婚約者の、心を許せる親友になってくれたことに。

 そして、あの魔術大会の翌日、ミンティア自身もそのハビットと友人となった。話をしていて彼の素直で正直な性格に、自分と同じ匂いを感じたからだ。

 彼なら信じられる。

 

 それは直感というか、野性の勘だったのだが、それは見事に当たった。なにせ命を狙わた彼女を、なんの迷いもなく救ってくれたのだから。

 そしてそのわずかな瞬間に彼女は、なぜラフェールがハビットを友に選んだのかを悟った。

 彼は、ラフェールと同じ特殊能力ホルダーだったのだ。彼らはお互いの魔力が見えるので、全て丸見え状態だったのだ。だから、今さら隠し事をしたりカッコをつけたりする必要もないので、素顔を晒すことができるのだ。

 そして、お互いを守ることも。

 

 ミンティアは、ラフェールが自身の巨大過ぎる能力を恐れている、ということを知っていた。だから父カインツに、攻撃魔術よりもむしろ制御魔法を積極的に学んでいたことも。

 彼女も彼の心を少しでも軽くしてあげたくて、魔力暴走による魔法事故を防ぐための魔道具の研究を進めていたのだ。そしてその完成まであと一息のところまできていたのだった。

 

 しかし、その魔道具とは別に、ハビットの存在は、ラフェールには心強いだろう。いざとなったら彼が自分の暴走を止めてくれるに違いないと信じていたから。

 だからこそ、王宮のあの断罪の場に彼を引きずり込んだのだろう。

 それほどミンティアが刺客に襲われたと知ったときの、ラフェールの怒りは凄まじかったのだ。

 

「青や赤の魔力を体中から勢いよく放出させていて、学院中が吹っ飛ぶのではないかとヒヤヒヤしたよ」

 

 後になってハビットからこう聞かされて、彼女だけでなく、王族の方々が真っ青になった。そのときもハビットが腕に触れたことで、彼は我に返ったのだった。

 

 そんな頼りになる友人が、ラフェールの私設秘書になると言ってくれたとき、ラフェールは呆然とし、ミンティアは涙したのだった。

 しかし、ありがたいと思うと同時に、あの辺境の地に大切な友人を引っ張り込んでもいいものかと、正直彼女は悩んだ。

 ところが、その後、そのミンティアの心配はいらなくなった。というのも、彼女の妹のメイシャがハビットと婚約したからだった。

 

 なぜそうなったのかというと、メイシャが学院に入学したとき、姉のミンティアと義兄となるラフェールの二人は卒業してしまっていた。

 ラフェールはそもそも婚約者と一緒に学生生活を楽しみたいという理由で学院に残っていただけなので、とうの昔に卒業資格を取っていた彼は、彼女とともにさっさと一年早く卒業してしまったのだ。

 

 そこで二人はまだ学園に残っている親友であるハビットに、入学してくるメイシャの面倒を見て欲しいと依頼したのだ。

 キシリール家は何かと有名になってしまったので、妹にちょっかいを出してくる者がいるかもしれないと心配になったからだ。

 

 しかし、なんと学院で長く時間を共にしたことで、二人は恋に落ちてしまったのだ。

 夢見がちの妹と、言ってはなんだが一見すると凡庸な感じのあの真面目男が、まさか恋愛関係になるとは予想もしなかったミンティアとラフェールだった。

 まさにミイラ取りがミイラになってしまったわけで、ハビット本人も申しわけなさそうだった。

 

 まあ、両家にとっても喜ばしいことだったので、むしろ両手を挙げて賛成され、ハビットが卒業する前に二人は婚約したのだった。

 とはいえ、結婚までの二年間は離れ離れになってしまうのだが、メイシャは姉達同様に一途な令嬢だし、ハビットは明るく元気なメイシャに夢中なので、まあ、心配はないだろうと彼らを知る者達は思った。

 読んでくださってありがとうございました!

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