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辺境伯令息は、今日も甘い仮面の下で毒を吐く  作者: 悠木 源基


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第27章 親友への依頼  


「キシリール伯爵令嬢の具合はどうなの? 側に付いていてあげなくてもいいのか?」

 

 ハビットの言葉に、冷え切っていたラフェールの心が少しだけ温まった。僕を本当に心配してくれるのなら、まずミンティアのことを心配してくれるはずだよな、やっぱり。

 

「睡眠魔法と治癒魔法をかけておいたから大丈夫。朝起きたら元気になっている。

 側にいたかったけれど、女子寮には入れないからね」

 

「まあ、そうだよね。

 でも、君は治癒魔法まで使えるんだね、ラフェール。一瞬だったけどプラチナ・ゴールドに光ってとても綺麗だった」

 

 ハビットは魔力が見える魔力透視能力者だ。友人のわずかな魔力放出も見逃してはいなかった。

 

 ラフェールが治癒魔法を使えるようになったのは一年半前だった。

 元々かなりの魔力量を持ち、火と光魔法を使えたが、彼が一番欲していた治癒は使えなかった。

 

 ミンティアが王都へ行ってしまった後、ラフェールは心の隙間を埋めるようにそれまで以上に鍛錬に力を入れていた。

 そんなある日、定期的に行われている雑魚の魔物退治をしていたときに、突然飛来したレッドドラゴンの襲撃を受けた。

 なんとか撃退したが騎士の半数が大怪我を負った。

 カインツと医療魔術騎士二人では到底手が回らず、せめて出血を止めようと、ラフェールは必死で怪我人の傷口を手で押さえながら叫んだ。

 

「止まれ、止まってくれ!」

 

 と叫んだ。

 すると、彼の手からプラチナ・ゴールドの光が溢れ出して、一瞬のうちに騎士の傷口が塞がった。

 ラフェールは一瞬だけ驚いたが、すぐさま次々と無我夢中で怪我人を治癒して回った。

 それ以降彼は治癒魔法の精度を高める努力をし、今では自由にその力を扱えるようになっていた。


「そもそも貴方にはすでに第一級魔術師と同等の能力があるのに、なぜ治癒魔法だけが使えないのか、それが不思議だったんだが、ようやく発動したな。

 まあ、ティアだけでも使えるようになれば十分だと思ってはいたが、貴方も使えるのならそれに越したことはない。いざとなったら娘も守ってもらえるしね。

 ただし、このことはしばらくの間あの子には秘密にしておこう。やる気が削がれても困るしね」

 

 カインツの言葉にラフェールも頷いた。ミンティアは婚約者を守りたくて必死で努力しているのだから、それに水をさしたくはなかった。

 ところがだ。あの第二王子は家柄や容姿ではなく、才能ある女性を望んでいたらしい。

 意外だった。これでは今まで自分が取ってきた対策はなんの意味もなかったどころか逆効果だったじゃないか。

 いや、王太子夫妻の話によると、彼がミンティアに恋愛感情を持っているとは考えにくい。とすると、ただ彼女を政治的利用をしようとしているだけなのかもしれない。

 どちらにしても許せることではないが。



 ソファーに座ってラフェールがブツブツ呟いていると、いつの間にかハビットが勝手にお茶を淹れて、ローテーブルの上にわざと音を立てて置いた。

 

「おーい、ラフェール、いい加減一人で思考にふけるのは止めてくれない?

 僕に話があるんじゃないの? キシリール伯爵令嬢のことで」


「あっ、すまない」

 

「僕にキシリール伯爵令嬢を守ってくれと言ったのは、僕に魔力耐性があるから、敵の魔力からガードしろってこと?」

 

「まあ、できればそれもお願いしたいけど、それよりも友人になって欲しいんだ。ぼく同様にミアにも心から信頼して相談できる友達が少ないんだ。

 ほら、僕達は二人とも偽りの仮面を着けているだろう? それにそもそも僕のことを人に話せないからね。彼女にはとてもすまないと思っているんだ」

 

「親友と呼べる人が誰もいないのかい?」

 

「いや、一人もいないってわけじゃない。ほら、君も知ってるだろう。ハニー=キュラリス嬢のことは。

 ほら学院の食堂で働くパティシエだよ」

 

「このティーフス王立魔法学院の卒業生で、去年の春の芸術コンクールの優勝者だったという、大人気のあのパティシエ?

 以前ボルディン侯爵令嬢の引き抜きを拒んでた……」

 

「そう。彼女が優勝できたのはミアのアドバイスがあったからみたいなんだよね。なにせ、二つも年下のミアのことを師匠と呼んでいるくらいだから。

 ミアって菓子作りの腕がプロ級なんだ。見かけはともかく味は最高級。

 キュラリス嬢はどうもその反対らしいから、それで互いに助言し合うようになったみたいなんだ。

 彼女がボルディン侯爵令嬢の話を断ったのも、ミアが卒業するまではここで働いて、二人でさらに切磋琢磨して腕を上げたいからみたいだよ」

 

「へぇー。理想的な関係だね。それなのに婚約者の話をできないっていうのはやっぱり辛いよね。女子にとっては」

 

「ああ。そこで君にも彼女の相談相手になって欲しいんだ。

 僕は自分で言うのも情けないんだけど、かなり嫉妬深い。だけと、君のことだけは信じられる。だから頼む」

 

 ラフェールに頭を下げられたハビットは、笑いながらこう言った。

 

「嫉妬されないならいいよ。君に嫉妬されたら簡単に殺されてしまいそうだからね。

 でもそれは君がいったい何者なのか、それを話してもらってからだよ。

 まあ、正直聞くのは怖いし、これまで聞かされてきた話と、今日の件でなんとなく想像はできるけど」

 

「もちろん話すよ。まあ、いきなり真実を暴露したら引かれてしまうだろうと思ったから、君の言う通り小出しにしてきたわけだけど、やっぱりばれていたよね。

 僕は一応王族なんだ。王位継承権はないけどね。

 実の父親は前国王アルバート=コークレイス陛下で、母親は王太后のレイラーニ殿下。つまりラリウル辺境伯の妹さ」

 

「・・・つまり、()()殿()()ってこと?」

 

 やっとのことで発したハビットの問に、ラフェールは事もなげに頷いた。

 王族の血を引いているのだとは思っていた。あまり膨大な魔力量を持っていたから。

 それに大勢の目のある場所で平然と第二王子を払い除けたのに、お咎めもなく戻ってきたし。

 しかし、日陰の身分なのかと思っていた。たとえば国王陛下のお手付きで生まれた認知されていない子どもで、辺境伯家に養子に出されたのではないかと。

 

 ところが彼は正統な王族だったのだ。つまり、表にほとんど出ない前国王陛下の三男は、替え玉ってことだ。

 なるほどな。道理でラフェールが幼い頃から命を狙われていたわけだ。

 いくら王位継承権を放棄したとしてもあれだけの魔力を持っているのだから、次期国王になる資質は十分だ。いや、その他諸々な能力を鑑みると()()()()()()

 

「さっき、王族が焦っていると言っていたけれど、あれはどういう意味だったの? 何か王家の弱みでも握っているのかい?」

 

「弱みっていうか、ほら、辺境伯城に住んでいたころに刺客に襲われた話をしただろう?

 あのとき、黒幕が誰なのかははっきりしなかったけれど、王家の不始末なのは確かで、犯人だと疑われても仕方のない状況だったんだ。

 このことに実の両親と育ての両親がひどく腹を立てたんだ。そんな彼らが手を結んだら、王家はとても敵わないだろう? なんといっても彼らの方が貴族や国民からの人望があるしね。

 だから王家は彼らに許しを請うために、今後一切僕には手を出さないことを示すために魔法契約を結んだんだよ。

 そのことは以前君に話したよね?

 まあ王族が直接僕に手をかけることはないと、契約の意味をそれほど真剣に考えてはいなかったのだろうね」

 

「うん。覚えてるよ。ただ、その魔法契約を破るとどうなるかは知らないけれどね」

 

「つまりね、王族が僕に手出しをしたらその契約により破滅するんだ。

 さっき第二王子のエンドゥーが僕に掴みかかってきただろう。

 もし、僕が魔力で払い除けていなければ、彼は僕に攻撃を仕掛けたとみなされて、死体となって転がっていたか、または跡形なく消滅していただろうね。

 いくら腹立たしいからって、実の甥(エンドゥー)を殺したのでは寝覚めが悪いから、軽く払ってやったんだ。

 国王陛下夫妻と王太子夫妻はそのことをすぐに理解できたようで、真っ青になって謝罪してきたよ。まあ肝心の第二王子は理解できずに、僕を罵りながら出て行ったけれどね」

 

 確かにラフェールの言っていた通り、王家の皆様は驚き焦ったに違いない。

 魔法契約の恐ろしさを知ったハビットは、迂闊にそんなものを結ぶべきではないなと震えながら思ったのだった。


 

 読んで下さってありがとうございました!

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