第19章 モードリンの結婚事情✽過去回想
モードリンはラリウル辺境伯と堂々と交渉をした。
その結果、キシリール家の者が王都に滞在する時は、ラリウル辺境伯家の屋敷に滞在できるようにしてもらった。
貧しい上に滅多に王都へは行かないキシリール家は当然タウンハウスを持っていない。そのため、宿泊費も馬鹿にならないのだ。これで出費を大分抑えられ、税を使わずに済む。
それにそもそも辺境伯一家も、キシリール家同様ほとんど王都には滞在しないのだから、そう迷惑にはならないだろうと判断したのだ。
もっとも、モードリン自身はまめに王都に出かけて行った。
そして翌年女子学院に入学してからは、週末毎にラリウル辺境伯の屋敷に泊まった。
それはパーティーに参加する準備のためだった。
ただし、それは決して新品のドレスや装飾品をおねだりするためではなく、辺境伯の令嬢達のお古を借りて、身だしなみを整えてもらうためだった。
モードリンは身の程を知った上で要求していたし、屋敷の使用人とも気さくに接していたので、疎まれることはなかった。
むしろ、ラフェールのために身を引いてくれたモードリンに感謝して、親切にしてくれた。
ラリウル家にとってラフェールは問題ばかり起こす厄介な存在であり、彼を引き取ってもらえたことに、ラリウル家一家と使用人達は彼女に深く感謝していたのだ。
そしてその後、モードリンが代々騎士団長務めるモンドレイカー侯爵家に嫁ぐことになった時、前国王から立派な婚礼家具一式と豪華なドレスや装飾品が極秘に贈られた。
結婚式には出席できないので、せめての祝いの品として極秘に贈ってきたのだろう。
ウェディングドレスも贈ると言われたが、モードリンはそれを丁重にお断りした。
彼女は両親の思いのこもったドレスをみんなに見てもらいたかったし、キシリール家の娘としてありのままの姿で嫁いでいきたかったから。
モードリンとモンドレイカー侯爵令息シードニーの婚姻は、政略的なものではなく、二人が互いに好意を持ち、恋人関係になった結果だった。
とはいえ、別に一目惚れというわけでもなかったので、最初はやはり互いの家にとって有益かどうか、自分にとって役立つ存在であるかどうかを考えに入れて付き合い始めたのだ。
モードリンには男性からのたくさんの申込みがあった。しかし彼女はそれに浮かれることもなく、母親と共に冷静に相手を見極めた。
その結果、友人に紹介された彼女の従兄のシードニーとお付き合いをすることにした。そして交際していくうちに、二人は本当に愛し合うようになったのだ。
子供の頃のモードリンは、よく母親似だと言われていた。しかし、成長していくうちにその愛らしさに父親の美貌が加わった。
そしてその父親からは幼い頃から、辺境騎士の家に生まれた者の嗜みとして馬術や剣を習い、母からは高位貴族としての所作を教え込まれていた。
その上王都へ来てからは、辺境伯の執事からはダンスをみっちりとしこまれた。そのために、モードリンのプロポーションは素晴らしく均整がとれていて、彼女のその機敏かつ優美な身のこなしはいつも人の目を引いた。
しかも、侍女からは絶えず最新式の化粧やらファッションを教授されたのだ。
そのおかげで、田舎の貧乏令嬢だというのに、モードリンはどこぞの王女と言われてもおかしくない容姿と雰囲気を醸し出していた。
これだけ美しく華やかで目立つと、さぞかし女性から嫉妬されて虐められるだろうと、人から心配されるところだろうが、それは杞憂だった。
なぜならその見かけに反して、モードリンは令嬢にしては珍しく、はっきり自分の意見を口にし、男性に媚びたりしなかった。
そのさっぱりした性格のために、モードリンは女性達から嫉妬をされるどころか好かれていて、男女関係なく非常にもてたのだ。
そんな彼女だからこそ、友人は自慢の従兄を紹介してくれたのだった。
そう。代々騎士団長務める名門モンドレイカー侯爵家の嫡男であり、現在近衛第一騎士隊副隊長のシードニーを。
読んで下さってありがとうございました!




