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2021.4.27―side B

 このところ自由時間が少なくて読書やエクササイズができていないので、今日の日記は手短に終わらせようと思っている。特に変わったこともなく、書くこともこれと言ってない。昼食にトマトソースのスパゲティが出て困ったことは書いておくか。前述の通り、私はいつも炭水化物は四分の一しか食べないのだが、スパゲティはメインの料理を兼ねているので、四分の一しか食べなかったら流石にちょっと足りないだろう。他にはカリフラワーの和え物が少々と、申し訳程度のフルーツポンチ、それに牛乳しかないのだ。どうしようかと思いながら食べ始めたが、ボーッとしている間に完食してしまった。こりゃ夕飯の米は一粒も食えねーな、と思いながら私は食器を載せたトレーを下げに行った。それからディルームでちょっとした雑務をした後、これを書き始めた。ディルームには私の他に二人の人間がいた。三十路もしくは四十路の男性が一人、それに某老婦人だ。某老婦人は私の斜め向かいの席で「モンサントの嘘」を静かに読んでいて、それは別に気にならない。問題は男性のほうだ。ボロいニットとチノパンツ姿の彼は、大きな音を立てて椅子を引くし、私がチラチラ見ていたテレビのチャンネルをいきなり変えるしで、あまり感じのいい人物とは言えなかった。それに、神経質そうな声で医者や看護師に食ってかかっているのを毎日のように見かけたので、絶対に関わり合いになりたくなかった。しかも、彼のスマートフォンのディスプレイには大きな亀裂が入っていた。私はスマホの画面を割るような不注意な人間も、それを放っておくようなだらしない適当な人間も嫌いだ。私はかれこれ四年スマホを使っているが、ディスプレイを含めて何処かを破損したことは一度もないし、落としたことも数えるほどしかない。私は自分の所有物全部を愛している。持ち物を大事にすることは、人間として当たり前のことだ。だからそうじゃない人間は、私の世界では人間ではない何かってことになっている。無論必要に応じて断捨離することは大事だが、整理をすることと物を粗末に扱うことは違う。もうすぐ午後二時になるので、そろそろ昼寝でもしようと思う。

 今は十八時三十六分だ。またムカつくことがあったのでこれを書いている。さっきナースステーションから爪切りを借りようとしたら、危険物の貸し出しは十時から十六時の間しかできないと言われたのだ。クソムカつく。そのとき話していた看護師は、そのことは入院生活の決まりについて書いてある書類に記載されていると言っていた。だから私は薄い冊子になっているその書類を目を皿のようにして読んだのだが、何処にもそんなことは書かれていなかった。勿論、入院してからこれまで一度も説明を受けていない。私はこの一件で看護師のことも嫌いになった。伸びた爪に溜まった垢を取り除いて手を洗いながら、心の中で悪態をついていた。彼らは身の回りの世話をしてくれるが、私は別に頼んでないし、望んでもいない。私が望んでいるのはこの白い牢獄からの脱出、或いは速やかな死だ。そもそも今生きていること自体、親の意向でそうなっているだけであって、私の意思は無視されている。つまり、看護師やら医者やらの助けなんかそもそもお呼びじゃないのだ。ああ腹立たしい。頭が痒くなってきて苛立ちが募る。早く風呂に入りたい。テレビの賑やかな音が殺意を煽った。前から知ってたが、私の沸点はかなり低い。顔に出ないから誰も気づいてないが、私は一日の間に数え切れないほどキレている。口にも態度にも出さないのは、怒りを露わにすることはみっともないことだと思っているからだ。顔を真っ赤にして怒ってるオッサンとかよくいるが、超醜い。私の顔の造形はあまり良いとは言えない。これ以上醜悪な外見になりたくない。私が怒りを態度や表情で表現しないのはそういう理由からだ。断じて他人なんかのためではない。自分のスマホと他人の命を天秤に掛けさせられ「どちらかを選べ、選ばれなかったほうは破棄される」って言われたら間違いなくスマホを選ぶ。他人ってのが家族とか親戚とか友達とか、じゃなかったらアインシュタインやモーツァルト並みの天才なら別だが、そうじゃないなら私は迷いなくそうする。特に縁もなく見るところもない他人の命なんて、虫ケラの命と大差ない。私は虫は嫌いだ。私自身も誰かにとっては虫であることは重々承知しているので、余計な助言は不要だ。その手の扱いをされることには慣れているから、今更何とも思わない。さっき虫は嫌いだと言ったが、大多数が虫と同程度の価値しかない人間という存在も当然嫌いだ。勿論自分も嫌いだ。早く死にたい。心が醜いことについてはそこまで気にしていないが、無能なことが許せない。私みたいな無能は死んだほうが世のため人のためだ。さっさと死ねば良いと思う。

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