毒、麻痺、睡眠耐性3人組
初めましての方は初めまして。 作品を読んでくださっている方はおはこんばんにちは。
作者の風祭 風利というものです。
今回からまた新しく小説を投稿します。
この作品はGWの時にひょんな事から浮かんできた小説になっていまして、電子小説らしく、ハイファンタジーな世界観の小説を書きました。
また突拍子もなく書いた小説ですので至らないところはまだまだありますが、それでも楽しんで頂けたら幸いです。
それでは新小説をどうぞご閲覧下さい。
ここは都市「タラーサレン」のギルド「安生の狩人」。 ここには様々な依頼が舞い込んでくる、都市の中でも大きなギルドの1つだ。
そこに集まってくるのは冒険者であり、掲示板の所に貼ってある依頼の紙を日夜吟味していた。
ここの冒険者達にはある特徴がある。 それは必ず何かしらの「特性」がステータスとして入っていることだ。
「特性」 それは人間に与えられた、個人を「個人」足らしめる要因だ。
そう唱えた1人の男が大昔いたそうだ。 その伝承はこのタラーサレンだけでなく、まだ見ぬ世界の端から端までしれわたり、今では「特性を持ってない方が珍しい」と言われるほどになっていった。
しかし「特性」と一言で言っても、必ずしも良いものとは捉えない方がいい。
そのようなものには人には無いものが身に付く代わりに「弱点」というものも存在するからである。 完璧な人間などいないという典型的な例とも言えるだろう。
この世界で「特性」と呼ばれるものが身に付くのは歳が13歳になる年の春に突然現れる。 遺伝的ではなく、突然変異のような形でだ。 そうして「特性」を手に入れた子供達は3年間自分の「特性」について学び、研究されて一度は冒険者の道へと歩む。 例外はあるが、大抵は冒険者にすがり付く。 それだけこの世界でのやるべきことが多い。 多すぎるくらいだ。
冒険者達は自分の特性をよく知ってる。 だからこそ自分の特性を最大限いかせれる依頼を探るのだ。 もちろんいるのはそんな子供だけでなく、大人だって一介の冒険者稼業をしている。 本業にしている者もいれば、副業として働き、また別の仕事を行っている人もいる。 ここはそんな世界なのだ。
そしてそんな「安生の狩人」の扉を開いた、黒に近い紫髪の少年、エイブリード・アナリシスはすぐに入るなりカウンターに向かっていった。
「すみません。 僕の特性をいかせれるクエスト、今入ってますか? なるべくなら討伐クエストがやりたいんだけど。」
エイブリード・アナリシスは今年で18歳になる。 冒険者としては3年目になるため、受付の人も誰が来たのかで大体の依頼内容を絞ることが出来る。
「はいはい。 エブリィ君にピッタリのクエストね。 ちょっと待ってね。」
そう声をかけると三つ網の受付嬢のサーハルはパラパラと依頼書を確認する。
「ごめんね、エブリィ君。 リクエストしたのはないの。」
「そっか、残念です。」
「でも、いつもの依頼なら今日来たわよ。」
「おっ! そうですか! なら、今日もよろしくお願いしますね。」
そういってエイブリード、呼称エブリィは依頼書を貰い、テーブルスペースへと向かう。
「あ、いたいた。 おーい! ガーナ! マッシュ!」
そういってエブリィが声をかけた机に座っている少年、金髪でオールバックにしているガーナ、ガーナランド・サリドラースと、突っ伏した状態からエブリィを見ているもうひとりの、水色髪でヘアゴムで後ろ髪を縛っている少年、マッシュことマッシュリア・ヨーゼフはエブリィの姿を確認した。
「おっすエブリィ。 その紙は依頼か?」
「うん。 いつもの特注依頼。」
「おー、なら僕も安心だ。 やっとこれで眠れる。」
マッシュが顔をあげたところで、机に依頼書を見せる。
『アイテムの材料である「マナタイトの異常草」の採集
ランク「―」 個数 全て15個以上
報酬 15000M』
「それじゃ、早速行こうか、特注依頼。 僕は食料を買ってくるよ。」
「なら俺は馬の手配だな。 いつものように言えばやってくれるだろ。」
「2人とも頑張ってねぇ。」
そういって3人とも「安生の狩人」を退出する。 意気投合している3人組。 この依頼は彼らにしか依頼出来ない理由があった。
馬を用意して、タラーサレンから走らせること30分。 何気に乗馬スキルを持っているエブリィとガーナが馬を操り、マッシュは荷車で寝てしまっている。
「相変わらず気持ちよく寝るよなぁ。 ここってそこそこ舗装されてるとはいえ寝れるような環境じゃないと思うんだがなぁ。」
「仕方ないよ、マッシュの特性上、彼に乗馬を任せるのは怖いからさ。」
そういって2人はすやすやと眠るマッシュを見ていた。
『マッシュリア・ヨーゼフ 18歳 男 ランク30
特性「寝不足」
利点 睡眠を取ることにより、目覚めてから2時間覚醒状態に入り、身体能力が大幅に向上する。
弱点 覚醒の反動で脳の働きが著しく低下する。 覚醒をするには再度睡眠を取らなければならない。』
マッシュの特性は少々ドーピングに近いものを感じるが、本人はいたって真面目なので、捉えることも出来ない。 ただ戦闘面においては覚醒状態に入れば馬車を引いている二人にも比毛を取らないし、なにより状態異常の1つである「睡眠状態」に陥らないのだ。 ただし、この覚醒状態の時間制限がネックである。 なぜならばこの2時間という数値、睡眠量に比例しないので、寝るだけ損になる事もあるのだ。 なのでマッシュはクエスト受注後に睡眠を取ってから行くことにしているのだ。 パーティーがいれば別だが。
「あいつも苦労してたよな。 勉強しようにも眠くなるんじゃ頭に入らないしな。」
「ほんとにねぇ。」
そういってエブリィはガーナの方を見ると、彼の異変に気がついた。
「あ、今日は左目なんだ。」
「ああ。 採取には支障はでないから、そこは安心していいぜ。」
そういってガーナは左目でウインクした。
『ガーナランド・サリドラース 18歳 男 ランク30
特性 「痙攣」
利点 麻痺状態にならない。 痙攣箇所が四肢だった場合、稀に攻撃が複数回当たる。
弱点 体の一部が必ず痙攣し続ける。 部位は日によって変わる。』
麻痺耐性は重宝されないように感じるが、あるのとないのとでは討伐クエストの終了時間が大幅に変わる事もある。
彼の特性としては戦闘面においてたまに役に立つときがある。 この世界にも攻撃の通りにくいモンスターはいる。 それを複数回攻撃が出来れば同等の攻撃力をたたき出すことが出来るのだ。 しかし痙攣する部位は日によって変わる。 しかも場所はランダムなので、上手いこと来て欲しい時に来ないのがこの特性でもあったりする。
「そういえばたまに冒険者稼業を休んでるときあるよね? あれはなんで?」
「たまーにだけど痙攣箇所によっては動けないときがあったりもするからだな。 単純にそれだけだ。」
エブリィは「そんなものなのかぁ。」といった具合に馬を操る。
「そういえば、お前のアレ、もうそろそろじゃないか?」
「んー? いやもう少し・・・ん。」
そういってエブリィはひとつの袋を取り出して顔を突っ込む、そして
「ガハッ! ゲホッ! ゴッホ!」
その袋の中で何かを吐き出す。 その後に少し青ざめたエブリィが顔を上げ、先程の袋は手元から無くなった。
「ほんと便利になったものだよね。 その「転移袋」。」
「まあ僕のアレはちゃんと届かないとある意味大変だからその辺りはしっかりしてもらわないと。」
「取り敢えずアレ飲めよ。 増血剤。」
「うん。」
そういってエブリィはまた別のポケットから赤い錠剤を取り出して口のなかに入れる。 そして数秒もしないうちに血流が元に戻ったのか、顔に血が通い始めた。
『エイブリード・アナリシス 18歳 男 ランク30
特性 「毒持ち」
利点 血液中に毒を持っている。 その血液を使って武器の付属として使用できる。
弱点 定期的に血液循環のため吐き出さなければならない。 一定量の体力を奪われる。』
エブリィが血液内に所有している毒は、基本的には抗体のある毒が多く、これによりエブリィには大半の毒を体内に入れても平気だったりする。
ただしそれが体外に出たときに気化して有毒ガスになるため、少しの擦り傷からの血液でも、近寄るのは危険だ。
そして体外に吐き出すので、それ相応の、それこそ致死量の毒血液を出すことになるので、先程の袋を使って体外に排出して、それは転移されて、武器や抗体材に使われる契約になっているのだ。
「お前の毒で救われる人がいるって、なんか複雑じゃね?」
「毒を以て毒を制すってやつだね。 まあ僕は気にしてないよ。 その分の提供代金は貰えてるしね。」
エブリィは本来冒険者稼業をしなくても、生きていけるくらいのお金は研究機関から貰っているのだが、それはそれらしく、今日も今日とて冒険者稼業をするのだ。
「さて、ついたか。 それじゃあいつも通りの場所でいつも通りな。」
「了解。」
ガーナ、エブリィ、そして先程起きたマッシュは馬車を端に置いて、3方向に別れる。 そして目的のものをエブリィは見つける。
「あ、あったあった。 うん。 今日も今日とてしっかり生えてるや。」
そういって目の前の草を掴む。 するとその草は勢いよくエブリィの手に先端を突き立てる。
この草はただの雑草ではない。 これこそが「マナタイトの異常草」で、自分に害が成されたと認知すると、先端を突き立てて、相手に毒を与えるのだ。
だが、そこは「毒持ち」のエブリィで、そんなのがあっても採取用に使っている小型のナイフで刈っていく。 異常草位の毒では全くといっていいほど効かないのだ。
「よし、こんなものかな?」
籠一杯に入った異常草を持って馬車に戻る。 すると同じように籠一杯に異常草の入った籠を持ったガーナとマッシュが帰ってきた。
「そっちも取れた?」
「あぁ、バッチリだぜ。」
「こっちもOKだよ。」
2人が持っている異常草はエブリィとは種類が違う。 正確には種類は同じなのだが、模様が違う。 エブリィの異常草は紫の斑点がついているのに対して、ガーナの異常草には黄色の斑点、マッシュの異常草には水色の斑点がついている。 斑点の色によって効果が変わるのだ。 ガーナは麻痺効果、マッシュは睡眠効果を持つ異常草を取ってきていた。
この依頼にランクが「―」となっているのは、今の現状で彼ら3人以外に任せられる人間がいないからだ。
「よーし、それじゃこれを持って・・・」
「ぐるぁぁぁぁぁぁ!」
帰ろうとしていた3人に熊のモンスターが現れた。 当然3人よりも大きく、これから戦闘体勢に入っている。
「へぇ、こんなところにも現れるんだ、ビッグマザー。」
「確かこいつの爪や牙ってそれなりに高価で売れたよね?」
「よし、こいつも狩っちゃおうか。 2人とも、前はよろしくね。」
そう言ってマッシュは馬車に置いていたボウガンを、準備し始める。 その間にガーナがビッグマザーと肉弾戦をしていた。 ガーナのスタイルは格闘技で、主にボクシングスタイルをしている。
そしてエブリィは先程とは違う大きい太刀を取り出して、剣先を自分の指に当てて血を流す。 その血が剣に流れ、溝の部分に入っていく。 そうして出来た、エブリィのみが出来る「毒太刀」を一撃ビッグマザーに与える。 当然それでは倒れない。 なので最後にマッシュのボウガンをエブリィがつけた傷に当てて、そしてビッグマザーは倒れた。
「ふぅ。 よし、解体しようぜ。」
そう言って3人はビッグマザーを牙、爪、皮に分けて解体し始めた。 そして馬車に詰め込んで、帰路に帰ることにした。
「予想以上にお肉も多くなっちゃったね。」
「それも査定に出そうよ。 買い取って貰えなかったら僕らで処理しようよ。」
「ビッグマザーって旨かったっけ?」
こうして新たな報酬に胸を弾ませる3人。 この物語はこんな3人組を中心に、様々な特性を持った仲間と共に依頼をこなしていく冒険録である。
いかがだったでしょうか?
今回の主人公達は異世界転生などは無しのキャラにしました。
この小説についてなのですが、今日から3日間は連続投稿しますが、その後はかなりの頻度で不定期投稿になることを先に謝っておきます。
安定し次第定期更新にはしようとは考えています。
なので気長に待って貰えればと思います。
私が投稿している別作品も良かったら見に来てください。