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第7話 決意

「では、私はこれで失礼する…スパーダ君も達者でな」


「はい大佐…今日はご教授ありがとうございました」


「いや、大したことはしておらんよ。ただ一つの案を提示しただけだ…ナターシャ!そろそろ行くぞ」


グレーン大佐は妻のナターシャさんに声を掛ける。

ナターシャさんはその声に反応してフームさんとの会話を打ち切った。


「はい、ではフームさん。またお会いした際にはよろしくお願いいたします」


「こちらこそナターシャさん…貴重なお話をありがとうございました!」


互いにお礼を述べてから一礼する。

表情を見る限りどうやら良い話し合いをすることができたらしい。

二人とも終始笑顔だった。


「我が妻とよくしてくれて感謝します」


グレーン大佐はフームさんに近づいてお礼を述べた。


「いえ、こちらこそ…ナターシャさんとお話できて…本当に良かったです!」


「妻はあまり人前では話さないのでね…いや、本当に嬉しそうで何よりです。帰ったらどんな話をしていたのか是非とも聞きたいものです」


「もう…あなた様、フームさんを困らせてはいけませんよ」


「ハハハッ、人前でお前が楽しそうに話すのを見て、つい浮かれてしまったわ!」


そう言って二人はリハビリセンターから去っていった。

傍から見ても仲の良い夫婦だった。

周囲の視線も微笑ましいものだ。


「おっと、さてリハビリのトレーニングを再開しなければ…」


会話に夢中で中断していたトレーニングを再開する。

一歩、一歩、足の底をしっかりと地面に密着するようにして歩く。

前方に負担をかけないように、ゆっくりと歩く。

こうしたトレーニングを繰り返し行う。


(だんだんコツも掴んできた感じだ…このまま頑張ってやってみよう)


日々鍛錬という言葉があるが、それがピッタリなのかもしれない。

少しずつだけど確実に歩行の仕方を身体で覚えていく。


グレーン大佐とナターシャさんがリハビリセンターを去ってから1時間後。

本日のトレーニングが終了した。


「お疲れ様です、本日のトレーニングはここまでにしておきましょう」


「お疲れ様でした先生!」


「どうですかスパーダさん、足の調子は?」


「そうですね…今日はだいぶ調子は良かったですよ」


「それは何よりです。この調子でいけばあと一か月ぐらいで義足を身に着けて生活することが容易になるでしょう。そうすればリハビリは終了となります」


「本当ですか?!それは良かった…」


嬉しいニュースだ。

この調子で義足の問題などがなければ、あと一か月ほどで義足でのトレーニングが終了する。

トレーニングを終了すれば義足での生活を上手く扱えるようになるだろう。


「先生、今日は色々と相談に乗ってくれてありがとうございました。おかげで助かりました」


「いえいえ、患者さんのケアをするのが医者としての務めてですので、フームさんにもよろしく言っておいてください。私はこれから会議がありますので…それでは今日はこれで失礼します」


「はい、ありがとうございました!」


先生にお礼を言う。

ペコリと頭をさげて、俺は義足を外して松葉杖を使い見学スペースで、待っているフームさんの所に向かって行った。


「お待たせしましたしましたフームさん。トレーニングが終わりました」


見学席で待っていたフームさんに声を掛ける。

フームさんは俺の声に反応する。


「スパーダさん!トレーニングお疲れ様でした!」


「この調子でいけばあと一か月でトレーニングが終わるそうです」


「まぁ、本当ですか?!おめでとうございます!」


「ええ、義足の歩き方も段々とコツを掴んできたのでこの調子でいきたいですね…では、行きましょうか」


「はい!」


夕方になると外の気温もだいぶ涼しくなってきた。

外の大きな温度計の表示は気温28度、湿度50パーセントだ。

少々昼間の暑さが籠ってはいるが、それでも強烈な日差しがないだけマシだろう。


公園のベンチに座って、俺はフームさんに話の続きをすることにした。

フームさんはベンチに座ってから真剣な表情で話を始めた。


「スパーダさん、話の続きですが…今後どのような活動をするのかお決めになったのですか?」


今後の活動…。

騎士団を辞めてリハビリに励んでいるけど、グレーン大佐が語っていた冒険者という道。

冒険者になろうと考えていることをフームさんに伝えた。


「今後…ですか、一応冒険者になってみようかと思いまして…」


「ぼ、冒険者ですか?!」


「はい、冒険者です」


予想はしていたけど、やっぱりかなり驚いている。

そしてフームさんが気になっているのは俺が一人で冒険者として活動するかどうかであった。


「冒険者…ちなみにお一人で冒険をするつもりですか?」


「はい、そのつもりですが…」


「で、でしたら…私もご一緒に…スパーダさんと一緒に冒険がしたいです!」


「えっ?!」


フームさんがまさかの同伴したいと申し出てきた。

これにはさすがの俺も面食らった。

俺は理由を尋ねた。


「い、いやいや、フームさん…その一緒に冒険したいというのはどういう理由でしたいのですか?」


「はい、私はスパーダさんに命を助けられました…ダークエルフの教えにはこういう言葉があります【命を救ってくれた恩人には最大の献身を尽くせ】というものがあります。それに…」


「それに…?」


「私はスパーダさんの力になりたいのです…」


「…魔法協会のほうはどうするんですか?」


「すでに上司には直に許可を得ております。ダークエルフの風習などを説明して説得しました」


「ほ、本当ですか?」


「はい、これが承諾書です。ご覧になりますか?」


「は、はい…」


承諾書を見てみる。

確かに魔法協会直々に承諾許可証として印鑑まで付いている。

おまけに魔法協会の会長である直筆サインまで書かれている。

これは偽のサインではない。


ちゃんと承諾の透かしには薄くだが、魔法協会公認の魔法陣が描かれている。

複製不可能の代物だ。

フームさんの言っていることは真実なのだ。

改めて再確認を行う。


「…フームさん、本当に良いのですね?」


「はい、スパーダさんの為なら私は何処にでも行ける覚悟があります!」


「その決意に変わりはないですね?」


「変わりありません!」


「…分かりました。では、今後ともよろしくお願いいたします。フームさん!」


「こちらこそ、改めてよろしくお願いいたします!」


俺とフームさんは握手を交わした。

それが冒険者になる一か月前の出来事であった。




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