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第12話 剣は我が身の盾となる

武器屋…。

冒険者や騎士団など、多くの組織が利用している施設だ。

彼らがいなければ武器を揃えることは難しくなるだろう。


都市警察の許可を得て、証明書などを登録済の武器を販売する形式になっている。

これは、盗賊団や反王国主義者たちが犯罪やテロなどを起こさないように、決められた人間のみに購入できるようにしている。


一昨年に法律が制定されて以来、王国全土で実施されている。


武器を持つ人間を限定的にした結果、一般市民が武器を持った盗賊団などに襲われる事件が多くなったという。


理由は自衛手段の一つとして携帯が認められていた短剣の所持まで禁止されたからだ。

なので、拡大解釈を兼ねて家庭で使う徳用ナイフを服の中に潜ませるか、冒険者や騎士団に護衛を依頼して身の安全を確保するしかない。


「…仮に許可が出されていても…さっき襲いかかってきたヒューマン・プライシーみたいな連中に行き渡っていたら、それこそ対処は難しくなりますね…」


「あの人たちが持っていた武器も認可された武器だったのでしょうか?」


「恐らくは認可されたやつでしょうね、ツーダが使用した短剣…あれは敵にトドメを刺す用に開発されたスティレットという短剣です。先端が他の短剣よりも鋭利なのは、相手に致命傷を負わせるのにちょうどいいからですよ」


「そうだったのですか…でも、あれがスパーダさんのお身体に当たらなくて本当に良かったです…」


「確かに、あれが直撃していたら致命傷になっていたでしょうね…早いとこ、ツーダの武器は取り上げられてもらいたいものです」


スティレットが胸にでも刺されば心臓を貫通していたかもしれない。

そうならなかったのは、相手が未熟者だったからだ。

騎士団で培ってきた咄嗟の判断で、俺は適切に対応できた。


もしうまくいかずに刺されていたら…今頃俺は天国にいっていただろう。


「さて、ここが武器屋です…相変わらず繁盛していますね」


――カン!カン!カン!


武器屋の前では、店の奥から剣を叩いたり、研磨している音が響き渡っている。

それは騎士団時代から変わらない。


【ルカパ武器工房】


この武器屋はナズイきっての最大級の品揃えが豊富な武器屋だ。

騎士団時代に使っていた黒色短剣。

あれはルカパ武器工房で作られており、すべて認可された剣を騎士団で納入していた。


あの黒色短剣は気に入ってはいたが、あれも騎士団に納入されたものなので、騎士団からの支給品でもある。

支給品である以上、騎士団を辞める際に騎士団に他の支給品と一緒に返還していた。


「それにしても、見渡す限り武器だらけですね…あと少しですが盾も販売しているんですね…」


「盾も鋼鉄製の場合は打撃武器としても有効ですからね。この辺りでは一番のお店です」


「そうだよ、その通りさ…!中々通な客がやってきたみたいね!」


武器屋に入ると、部屋の奥からこの店を取り仕切っている店長がやってきた。

ずっしりと構えた筋肉。

男にも負けないと自負するぐらいに鍛え上げられた身体を自慢している。

ルカパ武器工房女亭主、マクールさんだ。


「おや、スパーダじゃないか!久しぶりだな!元気していたかい?」


「ええ、お久しぶりですマクールさん。おかげさまで元気ですよ」


「そいつは何よりだ…ところで後ろにいる女性は誰だい?見かけない顔だけど…」


「ああ、紹介が遅れました。こちらは今度俺と冒険者パーティーを組むことになったフームさんです」


「初めまして、フームと申します。お見知りおきを…」


「ちょっとまって、冒険者パーティーだって?もしかして騎士団辞めて冒険者になったのかい?!」


「仕事中の事故で足を片方持っていかれまして…今後の事も考えて騎士団から冒険者に転職したんです」


事の発端を話すのはご法度なので、俺は仕事中のアクシデントで左足を失ったと話した。

すると、マクールさんは悲しそうな目で頷いた。


「そうだったのかい…それは…難儀だったねぇ…」


「リハビリは大変でしたね…義足の感覚も慣れないと違和感があって…便利とはいえ、中々苦労しますね…」


「ああ、義足とか義手っていうのは慣れるまでが大変なのさ…でも、冒険者ギルドに入れたってことは運動は大丈夫なんだろう?」


「ええ、その通りです。必要最低限の条件はクリアできましたので」


「それはよかった…で、今日うちの店に来たのは武器を買うためにきたのかい?」


「はい、短剣を買いにきました」


「短剣ねぇ…前使っていたような黒色短剣みたいなのでいいのかい?」


「ええ、できればそれを買おうかと思っておりました」


「待ってな、今店の倉庫から取ってくるから」


マクールさんが一旦店の奥に戻っていく。

それからすぐに黒色短剣を持って来てくれた。

刃渡り40センチ程。

刃の光沢がキラキラと輝いている。


「やはり俺の十八番の武器はこれです…これが一番俺に合います」


「一面黒に刃の先が光沢で光っているのですね…これはどんな鉱石を使っているのでしょうか?」


フームさんがマクールさんに質問する。


「これは鉱山でも閃亜鉛鉱と鉄鉱石を砕いて再度工房で混ぜ合わせて一から磨き上げられた短剣さ、普通の短剣と比べても切れ味は良いし、何よりさびや腐食に強いから耐久性も高いんだ。その分値段は普通のダガーナイフの三倍以上する上に、定期的に整備をしないと切れ味が落ちるけどね…」


「なるほど…威力や耐久性に優れている代わりに、コストとメンテナンスが掛かる…というわけですね」


「その通り、メリットとデメリットを理解していないと使いこなせない武器ってわけさ」


フームさんは熱心にマクールさんの解説を聞いて、そして理解していた。

色々と冒険者に関することを学んでいたのだろう。

マクールの解説が終わったところで、おれは黒色短剣を買うことにした。


「マクールさん、この黒色短剣はいくらになりますか?」


「そうだねぇ…最近は武器の原料の鉱石の値段が上がってしまってね…50000テルンになるけど…昔からのよしみで45000テルンにまけておくよ。冒険者になったお祝いも兼ねてね」


「いいのですか?5000テルンも割引してしまって」


「なーに、スパーダが落ち込んでいるよりは冒険者として新しい人生を進んでいるほうが、こっちとしてもいいからさ」


「マクールさん…ありがとうございます…!」


俺はマクールさんのご厚意によって45000テルンで黒色短剣を購入した。

ギルドの証明プレートと共に、購入資格がある人物であることを確認してから黒色短剣を受け取る。

おまけに革製のシースまでつけてもらった。

黒色短剣をシースにしまい、店を出る際にマクールさんに改めてお礼を言った。


「マクールさん、本当にありがとうございました」


「いいってことよ。スパーダ、フームちゃんをしっかり守ってやるんだよ。フームちゃんもスパーダのことを頼んだよ」


「はい、フームさんは俺が守りますから!」


「わ、私もスパーダさんに精一杯頑張ります!」


「ハハハハハ、よろしい。それじゃあ気を付けるんだよ!」


マクールさんが店先まで来て、俺とフームさんを見送ってくれた。

もし冒険者のクエストで良質な鉱石をゲットした際にはマクールさんにあげよう。

そう心に決めたのであった。

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