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第10話 冒険者スパーダ

市場の騒ぎがおさまっていく。

なにはともあれ、傷害沙汰にならなくて良かった。

相手の顔面を殴ったが、あれは正当防衛だ。


剣で突き殺そうとしてきた奴の動きを封じたんだ。

あれ以上殴ったら過剰防衛で訴えられてしまう。

狂信的な奴には目を覚ます意味合いを込めて一発。

渾身の一撃だ。


フームさんが傍に駆け寄ってきた。


「あの、スパーダさん…お怪我はありませんか?」


「大丈夫ですよフームさん、かすり傷一つありませんよ」


怪我はない。

かすり傷一つありはしない。

それをみたフームさんは安堵したのか、ふぅ~っと息を吐いた。


「よかった…ちょっと心臓がドキドキしてしまいました…」


「心配をかけたようですね…すみません」


「いえ、こちらこそ…私の為に動いてくれたんですね…」


「フームさんはこれから冒険者パーティーの一員になるのでしょう?それに…」


「それに…?」


「俺にとってフームさんは大切な友人ですから…友人を守るのも友としての務めです」


その言葉を聞いたフームさんの顔が少しだけ赤くなっていく。


「スパーダさん…」


すっごく純粋な瞳で見つめられている。

こっちも何だか顔が火照るような感覚がやってきた。

照れてしまう。

慌てて顔の向きをギルドの方に向けた。


「さっ、冒険者ギルドで冒険者パーティーの登録を済ませましょう…!」


「はい!!!」


■ ■ ■ ■


冒険者ギルド。

全国各地に支社を持つ冒険者の労働組合だ。

基本的に冒険者は、このギルドで登録した者でないと冒険者としての就労許可が下りない。


犯罪を繰り返した者や、精神不安定な人物は冒険者の資格を持つことは許されていない。

逆にいえばそれ以外であれば誰でも冒険者になれるのだ。

年齢もバラバラ。

やる気と体力があれば入れる職業でもある。


ナズイの冒険者ギルドの本部は街でも一番でかい建物だ。

タイルは黒曜石を使用しており、人口80万人という大都市圏だけあって、その分資金も豊富なんだろう。

冒険者ギルドの本部に足を踏み入れると、白一色の服を身に纏った綺麗な女性が話しかけてきた。


「冒険者ギルドにようこそ!私は来場者の受付を担当しております”クレナ”です。本日はどのようなご用件でお越しになられましたか?」


「冒険者の登録、それと冒険者パーティーの申請に伺いに来ました」


「なるほど、新規登録者とパーティー申請ですね!今からだと一時間ほどで出来ますので、【登録課】で手続きを行います!こちらが番号札になりますので、番号が呼ばれたら札を持ってお越しください。」


「ありがとうございます」


クレナさんから「08」と書かれた札を受け取る。

一番窓口に向かった。

窓口の手前のベンチには既に数組が座って待機している。

彼らも、俺と同じく新規の冒険者かもしれない。


「冒険者か…いよいよ緊張するな!」


「まったくだ。昨日は嬉しくて寝れなかったよ」


「俺は弓術を極めて狩猟スキル向上も兼ねて頑張る予定さ」


「では、夕飯の素材集めはお前に任せてもらっても問題ないか?」


「大丈夫だ、恐らく問題ない」


楽しそうに会話をしている前の二人組。

こちらでは、提出書類に不備などが無いかチェックを済ませている最中だ。

待ち時間を利用して書類の不備をチェック。

幸いにも不備は見当たらなかった。


「書類には不備はありませんでした…いよいよこれで冒険者になるのですね…」


「ええ、ちょっとだけ緊張しますね…」


「私もです!」


待つこと20分。

書類の不備チェックを終えた直後に俺たちの番号が呼ばれた。


「お呼び出し申し上げます。番号札08番、08番の方、4番窓口にお越しください」


「はーい」


俺とフームさんは席から立ち上がって4番窓口にやってきた。

すると、窓口の女性を見て少し驚いた。

4番窓口を担当していたのは先程のクレナさんに”そっくり”であったからだ。

もしかして双子なのだろうか?


「ようこそいらっしゃいました~登録課担当のクルモです。以後よろしくお願いいたします!あっ、来場者の受付で働いているのは私の双子の姉なんです」


「そうだったのですね、最初かなり似ていたのでビックリしちゃいました」


「ふふふ、良く言われます。それで、今日は新規登録とパーティー申請をしに来たのですね。書類を出してもらってもよろしいでしょうか?」


「はい、こちらが書類になります」


書類を提出する。

クルモさんはしっかり書類に目を通す。

公的機関から発行された身分証明書が添付された書類だ。

不備も不審な点もないまっさらなものだ。

うんうんと頷いて、赤色のスタンプをそれぞれ押してくれた。


「書類は問題ありませんね。パーティー申請のほうも新しく発行しておきます。ようこそ冒険者ギルドへ、これで我々の一員としてギルドで頑張ってください」


「「ありがとうございます!」」


書類に【認可】と押されたスタンプ。

そして鋼鉄の長方形の形をしたプレートに刻印された所属証明書を渡された。


「それと、こちらが冒険者ギルド公認の所属証明書です。無くさないように気をつけてくださいね!」


「ありがとうございます!よろしくお願いいたします」


「ついにやりましたね!スパーダさん!」


こうして俺とフームさんは冒険者ギルドに入ることになった。

改めてしっかりと所属証明書のプレートを見てみる。

ここには、俺の情報がしっかりと記載されている。


これを持って歩けば冒険者だ。

俺はたった今から冒険者になったんだ。



―― 冒険者ギルド「ナズイ」支部 有歴1511年9月7日 交付 ――


ギルドメンバー No.0765123


氏名 スパーダ・エドワード・リー


年齢 25


血液型 A-


出生地 ナズイ中央区


戦闘スタイル 剣術


階級 初級


―― ギルドメンバー本人であることを証明するものである ――

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