一気に奇襲、先手必勝
「次、1019番だってよ」
受験番号1018番が満足そうな顔をして俺に順番を告げた。
「ありがと」
「おう!頑張れよ!」
応援してくれた。
意外といいやつかも1018番。
そして、俺は試験室に入室する。
「受験番号1019番です!よろしくお願いします!」
「おう!じゃあ、試験の説明をする模擬戦は最大五分まで、受験者側は俺に一発でも当てたらその場で試験終了だ」
「分かりました。武器の方は?」
「そこに置いてあるのから、何本でも好きなやつを選べ」
部屋の隅には、武器がいくつも置いてあった。
グローブから剣、槍、斧など多種多様に置いてある。
グローブ以外は全て木製で、傷つける危険はない。
ザック先生は、どうやらシンプルなショートソードを使うらしい。
技術を見せる意味でも、試験ならこれがいいだろう。
「ほう、面白いじゃないか」
「ありがとうございます」
俺は、両手に一本ずつサーベルを握った。
「じゃあ、試験を始める。どこからでもかかってこい」
「お願いします」
言うやいなや、俺は左手のサーベルを投擲する。
ザック先生は、少し驚いたが、余裕を持って剣で弾く。
その間に、俺はある方向に全力で走った、そして、弾かれたサーベルを掴み取り、また投擲する。
再度、ザック先生はそれを弾く。
さあ、ここからが見どころだ。
俺は、跳躍し、弾かれたサーベルに一瞬乗り、もう一段跳ね、ザック先生を上から斬りつけようとする。
ザック先生は少し焦ったのか対応が遅れるが、まだ俺の太刀筋についてきて、刃を受ける。
その瞬間、俺はザック先生を足場に跳躍、天井をサーベルで切りつけながら、勢いを殺し、体の向きを変える、そして、天井を足場に、思い切り跳躍。
これには、ザック先生も面食らったようだ。先ほどよりもさらに反応が遅れる。
この一瞬の隙があれば十分だ。
俺は、ザック先生を斬りつける。
しっかりと、首の大動脈を狙って斬りつけた。
「ははは、今年は豊作だな……試験は終了だ」
「ありがとございました」
「次の番号を呼んできてくれ」
「分かりました。先生」
「なんだ?」
「俺、強かったですか?」
「……ああ、一本取られたよ」
「ありがとうございます」
こうして、俺はザック先生との模擬戦を終えた。
サーベルを元の場所に戻そうとすると、サーベルが二本ともひび割れていた。
ボロくなっていたのだろうか?
少し不思議に思いつつも、俺は部屋を後にした。
切りつけた部分と、跳躍した部分の天井が、ボロボロに砕けていることに気づかずに。
「お疲れさん」
1020番に順番を伝え見送ると、1018番が話しかけてきた。
「おう、そっちこそ、お疲れさん」
「めっちゃ、終わるの早かったけど、試験どうだった?」
「奇襲を仕掛けて、先生のリズムにする前に一撃入れたよ」
「おおー、すっげえ」
「1018番は?全力を引っ張り出せたのか」
「おう!なんとかな。出させた直後に、ボロッボロにやられたけど。だせえだろ」
「いや、そんなことないよ。あの先生、マグナイツで試験官やるくらいなんだから相当強いでしょ。全力を引っ張り出せただけでも、1018番は十分すごいって」
「そう言われると、照れるな。てか、その番号で呼ぶのやめてくんね?」
「じゃあ、自己紹介でもするか?ライバルさんよ」
「入学すれば、仲間だろ。俺は、マキナ・ハーヴェスト」
「ヒイラギ・リーフ・ウッドだ、よろしくなマキナ」
「おう、よろしくなヒイラギ!」
「ところでさ、変なこと聞いてもいいか?」
「なんだ?」
「マキナ、お前転生者か?」
一瞬、マキナは顔を固めるが、すぐに笑顔になった。
「なんだよ!え、じゃあ、お前も転生者なのか!仲間じゃんよ!うわー、マジ嬉しいわ!このまま、地球出身の人とは出会えないかと思ってた」
やはり、転生者だったか。
てか、喜びすぎじゃね。もうちょっと、自分の正体バレたこと意識しろよ。
「ああ、俺も転生者なんだ」
「だよな!え、ヒイラギはどんなナチュラルスキルもらったの?やっぱ、チート級に強いやつ?」
「俺は、一身上の都合でまだ自分のスキルが何か分からないんだ」
「は?……あー、これから戦うんだもんな、秘密にするに決まってるよな」
「いやそういうわけじゃないんだが……なあ、マキナ」
「なんだ?」
「マキナのスキルは、強いのか?」
マキナは、少し黙り。
やがて、悪戯をするかのような笑みを浮かべ、告げた。
「強いよ」
「そっか、じゃあ、模擬戦、お互いいい戦いをしよう」
「おう!よろしくなー」
そう言い残し、俺はマキナの元から離れた。
マキナには恨みはないけど、模擬戦では全力でぶっ潰させてもらう。
俺をこんなステータスにした神への怒りの八つ当たりだ。