魔法の練習、打ち抜けど真ん中
あれから、一ヶ月の時が流れました。もう、異世界来てから一ヶ月かー、走り込みしかしてないや。
とりあえず、一ヶ月走り込みをして、なんて言うか体の使い方を覚えたので、今日からついに、魔法の練習が始まります。戦闘術は父、魔法は母が指導する様子。
ふふふ、おれは魔法には自信があるぞ。魔法ってあれだろ、長い呪文とか覚えて詠唱するんだろ。つまり、元演劇部の俺の得意とするところじゃないか!台本覚えるようなもんだ!
「じゃあ、魔法の練習を始めるわね。魔法ってのは、色々な属性があるけれど、最初のうちは基礎の魔法の矢を作ってもらうわ」
「どうやるの?」
「えっと、まずは実物を見せるわね」
そう言って、母ヤシノは、自分の周りに8本の魔法の球を浮かべた。
「それで、これを放つの」
そして、その球を全て放ち大きな岩に当て、岩は砕け散った。
「まあ、こんな感じね」
「ちょっと待って!ねえ!」
「何かしら?」
「呪文とかないの?」
「呪文ねえ、特殊な魔法、例えば神への祈りの言葉が起源の魔法とかなら使う場合もあるけど、ほとんど使わないわね。魔法の名前を叫ぶこともあるけれど、それも微妙ね」
「そうなんだ……」
俺の、自信は砕け散った。くそ、魔法といったら、普通呪文だろ。俺の演劇部生活、役に立たないじゃん。
「さっ、やってみましょう。私は体の周りに浮かべたけれど、最初は手のひらから出すことをイメージすると良いわね」
「分かった」
俺は、手を前に突き出しその先に力を込める。
むむむむむー、なんだか、手の先が暖かくなって来たぞー。
よし!魔力は多分集まった!
次はイメージ。体の中から、外に魔力を押し出すイメージ、イメージ、イメージ。
あー、なんかふわふわ出てる気がする
ふわふわを、集めるー集めるー、丸くー、丸くー。
「おわっ!」
「できたじゃない!」
俺の手のひらの上には、小さな魔法の球が浮かんでいた。
できた!念願の魔法だ!
「ヒイラギ!あんたすごいわよ、一発で出来る子なんてそうそういないわ!才能があるのよ、才能が!」
「え、ほんと!まじか、嬉しいな」
「でも、この矢、サイズが異様に小さいわね。どうしてかしら」
「魔力が1だからじゃないかな」
「あ……そっか、ということは、一発出したらもう終わりなんだ」
「多分、違うと思う」
「え?どういうことなの?」
「俺、走り込みの時もそうだったけど、ステータスが1から減らないんだ」
そう言って、俺は、新たに魔法の矢を作り出す。一つ、二つ、三つ、四つ、五つと。
それを見て、母は笑顔を浮かべた。
「ヒイラギ!あんたは、やっぱり才能があるよ!でも」
そして、母は涙を流す
「ごめんね、あんたを普通に産んであげられなくて。魔力が高ければ、もっといろいろな魔法が使えたのに」
「大丈夫だよ、母さん。1から減らないことって、特別なことなんでしょ。魔法の矢しか使えないなら、魔法の矢を極めれば良いんだよ。威力が1の魔法の矢も、束ねれば強く、折れない矢になるんだ」
そうして、俺は、魔法の矢を量産し続ける。
走り込みのおかげで、1の力を連続で使うことには慣れている。
やがて、俺の周りには300もの魔法の矢が浮かんでいた。
全ての矢を、岩に向けて放つ。
バラバラに飛んでいく、300の矢。
この矢を、束ねるんだ。
300本を一つの大きな矢にするんだ。
集中しろ、絶対できる。
回れ、回れ、回れ。
捻れ、捻れ、捻れ。
そして、あの岩を打ち砕くんだ!
結果から言えば、岩は砕けなかった。
俺の矢が、岩のど真ん中をぶち抜き、岩に一つの大穴を開けていた。
「ね、ほら。母さん、俺は十分やっていけるよ」
そういうと、母さんはまた涙を流した。