八話 謎の場所、謎の人物
車内のアナウンスで俺は目を覚ました。
俺はガバッと体を起こすと誰もいなかった。さすがに終点に来たとはいえ誰か一人ぐらいいてもいいだろう
しかし、車内には誰もいなかった。車掌と運転手はいたが、窓ガラスをいくら叩いても反応がなかった。
俺は自分の駅に戻るため、静かに開かれた扉を通って電車を降りた。何にもない場所だった。
少し虫の声が聞こえていたが、人家もなく街灯すらなかった。
(なんで、しおりたち起こしてくれなかったんだよ)
俺は少し腹が立った、いたずらにしても酷すぎる。俺は駅を出るために改札に向かう。
(ほんとに何にもないんだな。自販機だってないし…時刻表もなんかボロボロで見えないし…)
俺は改札の前に立って唖然とした。改札が見たことないものだった。自動改札機ではなくて
昭和時代とかのドラマで見たことあるような旧式のものであった。俺はどうしようか迷ったが、ここを
出るためには仕方がないと思い、通り抜けた。
改札を抜けて、あたりを見渡すと車のロータリーがあった。車など一台もないのにロータリーがあることに
疑問を抱いたが、今優先すべきことはどうやって帰るかだ。スマホを取り出して現在地を確認しようと思ったが俺は池の中にいることになっていた。
(現在地はわけわからんことになってるし、残った手段は……電話 、か…)
俺はダメ元で電話をしてみた。
ープルルルルルル………プルルルルルル…がちゃっ…はいもしもし大神です…ー
俺はガッツポーズをとった。なんとか母さんにつながった。
「母さん?浩介なんだけど、なんか変な駅に着いちゃったんだけど」
ー浩介?変な駅に着いたってどういうこと?あなたしおりちゃんとかえってないの?ー
「帰ってたけど、なんか起きたらいなかったんだよ」
ー寝てたの?ー
「……うん」
ーそれは浩介が悪いんじゃないの?人に頼ろうとするからそうなるのよ、今回でいい経験になったじゃないー
「俺のせいかよ……」
ーとにかく私はどうしようもできないわ。だってお父さんが早めに帰ってくるのよ!ー
母さんの嬉しそうな声が電話の向こう側から聞こえてくる。
「もういいよ…なんとかしてみる」
ーあら、そう。じゃあ頑張ってねー。ー
ープツッ。ツー…ツー…ー
我が母ながら薄情だと思う。こんなに困っている息子より早く仕事が終わる父が大事か!?
いや、そんなことよりも今はここから帰る方法を探さないと…
(それにしても、ここはなんなんだろう。俺が使ってる私鉄の終点でもこれはおかしい…)
(電車も来なさそうだし線路を辿って帰ってみるか…)
そう思った俺は線路の上を歩いて行く。後ろも先も見えない線路の上を…
少し歩いたところで、後ろから俺を呼ぶ声がした。
初めは空耳かと思ったが、はっきり聞こえたので恐る恐る振り向いてみる…
後ろにはボロボロのフードを被った人?がいた。そいつは俺に向かって、
「お前は、まだここに来てはいけない。もう少しで時が満ちる…その時は私が迎えに行こう…」
俺はそいつの言っている意味がわからなかった。
(どこかで聞いたことあるような声だな…もしかして…)
そう思った瞬間に視界がぐらついた。いつかの時のような感覚だった。俺は立つことができないまま
地面に倒れる。そこで俺の意識はなくなった…