七話 ありがとう俺のパンそしてさよなら…
一悶着あった後に四人で帰ることになった。
雄亮と高橋さんは幼稚園からの付き合いで小中高とずっと一緒らしい。
高橋さんには「九美ちゃんって呼んでくれてええよ?」って言われたけど女子を名前呼びするのは少し抵抗がある。しおりは昔っから知っているから名前で呼ぶのは全く抵抗はない。
行き歩いてきた道を四人で帰っていても、雄亮と高橋さんの言い合いは続いていた。
周りはたまに通る軽トラックや地元の人が通るぐらいで人通りは少ない。そのため言い合う声がよく響いていた。
畑仕事をしている農家のおばあちゃんに「あらま、元気だねぇ。若いもんはいいねー」と言われる始末だった。雄亮が高橋さんの発言に対して言い返していると、それを無視して俺としおりの方を向いて
「二人は仲ええよな、ほんまに幼馴染ってだけなん?」
「それはどういうことかな?」俺は眉にきゅっとシワを寄せた。
「そんな顔せんでもええやんか(笑)いや、だってあんま喧嘩してへんし仲よさそうやなーって思って。」
「いやいや、ないない。しおりが子供みたいで同年代って感じよりも妹っていう感じだから扱いやすいだけだからね?」
「ええー、ひどいよー。この前浩介をおんb…モゴ」俺はしおりの口にパンを突っ込んだ。
俺は涙ながらにしおりがパンを頬張る姿とやっとの思いで買ったパンが消えていくのを見ていた。
(さらば、俺の期間限定のクリームパンよ。)俺は心の中でパンに敬礼をした。
「「え、なんなんどうしたん?」」またハモった。
雄亮と高橋さんはしっかり聞き取っていた。パンを食べ終わって幸せそうなしおりが
「入学式の日に倒れて、私がおんぶして帰ったんだよー」
俺の犠牲など虚しく結局最後まで言ってしまった。それを聞いた二人は顔をそらして肩が震えていた。
「そ、そうなんかww浩介wwよかったなw」
「浩介くんもかわいらしいところあるやんかww」
二人とも笑おうまいと堪えていたが、そのせいで顔が引きつっていた。
「しおり、お前な…言うなよそれを…」
「なにがー?」
しおりはいつものように笑っているが、目が笑っていなかった。何に怒っているのかわからなかったけど
しおりはご立腹の様子だった。俺のパンは機嫌をとることはできなかったようだ。
「まぁ、ええやんか浩介くん誰にだってそんなことはあるkr…っぷぷ」
「明らかに笑っているのがわかるんですけど!?高橋さん!?」
「ほら、そんなことしてるうちにもう駅着くで?ww」
「雄亮お前もかー!」
駅まで行く途中の三分の一この二人は笑いっぱなしだった。その横でパンを食べたにもかかわらずまだお菓子を涼しい顔で食べ続けるしおりを見て、俺は無性に殴りたくなる衝動にかられたが、これ以上俺の醜態を晒すわけにはいくまいと思い、なんとか抑えた。
駅のホームについた時、同じ制服をきた人はもう誰もいなかった。ホームからは夕焼けに染められた畑が見えていた。電車が到着し、行きの電車に比べて空いた座席に四人で座る。俺は車窓を見ながら、いつの間にか眠ってしまっていた…
昨日に続き、七話の更新です。最近PVアクセス数が増えてまいりました。読んでくださっている方ありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いします。