三話目 夢と現実
俺は町の中を訳もわからず走り回っていた。
「くそ、なんだよここ。見たことあるような建物もあるけど大体が見たことない建物ばっかだし…」
警官から逃げるために街並みの中で異様な雰囲気を出しているビルに逃げ込んだ。
「急いで逃げてきたけどちょっとやばそうなビルに入っちゃたなあ。」
俺は、ため息をついてビルの人に見つからないようにこそこそと進んでいた。
「しかし、へんなところだな。町の人は気にしていないのかな?」
ビルには窓が少なく、太陽の光が微かに射し込んでいるのがわかる。
「トイレねぇかな?まじで漏れそう。」
ビルの中を歩いていても、トイレはもちろんドアすら見当たらない。
ひときわ明るく開けた場所が前方に見えてきた。俺はスマホのカメラのズームを使って
真ん中に誰か立っているのがわかった。
人に会えたのが嬉しかった俺は不安ながらも佇む人影めがけて声をかけた。
「あのーすみません。少しいいですか?」
俺は声をかけた人物が振り向いたと同時に目を見張った。
「え、嘘だろ?なんで、俺の顔にそっくりなんだ?」
俺はわなわなと震えながら、地面にへたり込んでしまった。その人物が歩み寄ってくるにつれて
俺の意識が遠のいていくのを感じた。
俺は目を覚ました途端にガバッと起き上がった。辺りを見渡しながら、ふっと息をつく。
「なんだ、自分の部屋か…あっ、そういえばしおりはどうなったんだろ?」
俺は、ベッドから降りてリビングに行ってみる。リビングでは、キッチンで母親が料理していた。
「あら、起きたの浩介。もう晩御飯できるから食器用意して。」
「わかった。そういえばしおりがどうしてるか知らない?」
「しおり?ああ、高崎さんの娘さんね。浩介覚えてないの?あなた、しおりちゃんにおんぶされて帰ってきたじゃない。」
母はそう笑いながら、キッチンに戻る。俺はその言葉に驚きを隠せないまま、二階に戻った。
(おかしい…俺学校から出てないし…もしかしてさっきまで見ていたのは夢、なのか?)
俺は急いでしおりに電話してみる。今度は繋がった。
「もしもーし、浩介?どうしたのー?」
「あのさ、今日って何があった?」
「今日?なんでー?」
「ちょっと確認したいことがあって」
「わかったー、えーとね今日は入学式があって、その後浩介が倒れてねー私が運んだ!」
「俺学校で倒れてたの?」
「うん、担任の先生が見つけて連絡くれたんだよー。あっ、今日の遊ぶ約束なくなったから今度プリンおごってねー」
「わかった、ありがとう」
「わーいやったー。じゃあ、またねー」
俺は電話を切って、勉強机の椅子に座る。何がなんだかわからなかった。
俺が見たあの町は夢だったのか?最後に見た人物は俺にそっくりだったなと
この時はまだあまり気にしていなかった。