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プロローグ
多くの人々は、死後、天国あるいは地獄に行くものか、もしくは何もない虚無に行くものだと考えているだろう。それらが本当にあるかどうかは分からないが、僕――高輪晴司はどちらかというと前者だと思っていた。でもそれはただ、虚無と考えることが怖かっただけだったのかもしれない。
だが、しかし。『死んでから分かる』というのはある意味本当の事である。
僕は死んでから、その『死後』の解釈が間違っていた事に気付いた。いや、少なくとも自分は違うということに初めて気付いたのかもしれない。しかし、僕は自分の家にまつわる『あること』を知るまでは、自分の本当の死後の世界が分かることは無かった。
そして天国でも地獄でも無く、ましてや虚無でもない、とある地下道から始まる新しい生活が幕を開けるなど、その時は知る由もなかった。