vs.逆ハー少女~もしも、少年漫画の世界観が壊されたら 編~
【超重要】・食事中の方は、絶対に読まないでください。
・タイトル詐欺です。
続きはありません。
『ライジングショット』という少年漫画の世界に転生した森野 鈴です。
前世と同じ性別は、女。
ということはです。
つまり、この世界では単なるモブキャラ。その他大勢。
漫画で見たあのキャラたちを観察できるかもしれない。
安易すぎるタイトルですぐに分かると思うけれど、テニス漫画。
高校生になり、庭園高校に入学した主人公の姫川達己と部活仲間たちがインターハイを目指すという何の捻りもないよくある話。
どこぞのテニス漫画みたいに、突き抜けた技はありません。
非常に残念です。
【物語が始まる前】
私は現在、庭園学園のライバル校として登場する遊泳学園の付属の中学校に通っている中学二年生。
そして隣の席には、七瀬翔太。
爽やかな笑顔が特徴なのですが、二次創作などでは『腹黒キャラ』になっています。
公式設定で、七瀬君は腹黒ではありません。
私はどうも二次創作の類を読んでいた影響で、彼が腹黒にしか見えません。
勝手に腹黒に見えて失礼なことは分かっている。
だがしかし、思うだけならいいでしょう。
そう、油断してはいけないことに気付くべきでした。
放課後、帰りに本屋に寄った時のことです。
読んでいる小説の最新刊を手に取りレジに行く途中で、同じクラスで隣の席の腹黒男...、じゃなかった七瀬君が参考書のコーナーにいました。
私はついうっかり、彼を見て「腹黒男だ」と呟いてしまった。
それを聞いた七瀬君の隣にいた藻中君は大爆笑。
私は、聞かれていると思わなかったのでビックリ。
七瀬君は、私と目が合うと微笑んできました。
ですが、私はその笑顔が寒々しいとしか感じませんでした。
なので私は、どこぞのバスケ漫画の主人公のパクリ技ミス●○☆★と気配を消すを駆使して、逃げ出しました。
ちなみに、このミス●○☆★は実際に使うには欠点がありすぎるので、私のことを漫画やその他のように『モブキャラ』と認識する人の前でないと多用できません。
いざという時には使えない残念仕様。
翌日からは、私は七瀬君との鬼ごっこが始まりました。
私は運動が苦手そうな外見をしているわりに、運動が得意なのです。
だからといって、逃げ足だけが早くなるとは限りませんが。
現役運動部と万年帰宅部では、越えられない壁というものが存在するのです。
今のところ、逃げ切っていますが...
逃げ切るのが難しくなったので私は最終兵器、日々屋彼方先輩に泣きつきました。
このテニス部を実質仕切っているのは部長ではなく副部長の日々屋先輩なのです。
事情を話すと、それは目をつけられて当然だなという顔をされました。
初めて知ったのですが、このテニス部内では七瀬君が腹黒というのは当然の認識なのです。
被害者を増やさないように、部外に漏らさないだけで。
もし、部外に漏らせばそれなりのペナルティを貸すそうです。
そうして、日々屋先輩と仲良くなりました。
「日々屋先輩、今日も七瀬君に追いかけられてます。助けて!」
と、今日も日々屋先輩がいるクラスの教室に逃げ込みます。
ちなみに、日々屋先輩はなぜか早々に『オカアサン』呼びを諦めました。
【物語開始】
高校二年になりました。
今年から、庭園学園に主人公の姫川達己が漫画同様に入学したそうです。
なんとか七瀬君の腹黒さに強制的に慣れさせられ、時々ですがテニス部マネージャーのお手伝いをしています。
その時に、日々屋先輩から頭の痛い話として、『庭園学園テニス部レギュラー部が今年入って来た一年のマネージャー夢餡夢実の取巻きと化している』ということです。
この夢餡夢実は、私の幼馴染です。
愚痴にしかならないので事の詳細は省きますが、あの子が原因で私は『ミス●○☆★と気配を消す』を習得せざるを得なかったのです。
人間、本気になれば漫画技を習得できるんですね...
中学高校とせっかく離れたのに、ここにきてあの子の噂を聞くとは!
でも、あの子は小学校の時には男女ともに嫌われていました。
それなのに、どうやって庭園テニス部レギュラー(全員、イケメン)をどうやって惚れさせたのか?
乙女ゲームとその他の恋愛ゲームなら、攻略対象たちであるイケメンの傷を抉り抜いた上で癒せば、好感度MAX。
ですが、スポーツ漫画は様々なライバルたちに出会い切磋琢磨して互いを高め合うというもの。
そこに、『恋愛』が入り込む余地はないはず。
なのに、どうやってテニス一筋の少年たちを籠絡したのでしょう。
まさか、『自分の体から出る体液や老廃物』で『惚れ薬』を作ってはいないよね???
正直、あの子なら絶対にしそうと思う自分がいる。
あの子は、小学校の時に好きな男の子がいてその子に『自分の髪の毛入り手作りクッキー』をあげた。
その翌日に、その男の子は「貰ったクッキー全部に、毛が入っていた。あの女、気持ち悪い」と言い触らしていました。
そしてその翌日、あの子の保護者である小父様と小母様が二人揃って学校に呼び出されて、あの子を交えて延々と説教をされたそうです。
そして着いたインターハイ予選会場。
『蜂蜜のレモン漬け』を作ってくるよう頼まれたので、お約束のレモンの丸ごと漬けをしようと思ったのですが、日々屋先輩にそれはしないようにと釘を刺されました。
向こうの方に見えるのは、あの子と庭園学園テニス部レギュラーたち。
あの子は、マジでイケメンたちを侍らしている。
リアルで見ると、ドン引きです。
そこに、新たなイケメンたちが加わります。
漫画で、庭園学園のライバル校として出てくる飛翔学園高等部のテニス部レギュラーたち。
庭園学園テニス部部長の天高鷹次と飛翔学園高等部テニス部部長の能登輝也は、従兄弟関係でありお金持ち。
どうやら、一人の女(あの子のこと)のことで言い争っているようです。
雨高鷹次は、言った。
「夢実は、俺様のことが好きなんだよ!」
えっ!?
全国に行くための大事な試合の場で、おかしな言葉が聞こえてきました。
空耳?
日々屋先輩を見ると、こめかみを押さえて呆れた顔をしていました。
それに対抗して、能登輝也が言った。
「はっ、ふざけるな!俺がこの試合に勝ったら、夢実は俺と結婚するんだぞ」
この漫画は、『テニス漫画』のはずなのに。
現実になると、恋愛が主軸になるのかよ。
なにやら、二つの高校のレギュラーたちが言い争いをしだしました。
この場では、場違いだという雰囲気です。
立ち去ろうとすると、あの子が近づいて来て
「七瀬君、こんにちは♪レモンの蜂蜜漬けを作って来たの♪よかったら、食べてね♪ キャッ♪ 言っちゃった♪」
男に媚びるような声を出して、七瀬君にレモンの蜂蜜漬け?を手渡して、庭園学園テニス部の元に戻っていたあの子。
私はあの気持ち悪すぎる声に拒否反応を示して腕を摩りながら、ものすごく嫌そうな目で七瀬君に渡したレモンの蜂蜜漬け?が入っているタッパーをガン見した。
本当に、レモンを蜂蜜につけてあるだけなのか気になるところである。
『何か別の液体』が、入ってないよね???
七瀬君は、近くのゴミ箱に受け取ったタッパーを躊躇いもせずに捨てた。
それを見た、庭園学園テニス部の佐々木浩志はすぐさまそれを回収していた。
アレって、食べれるモノだった?
その後、自称ヒロインしているあの子は、あの手この手で他校のテニス部レギュラーたちに魔の手を伸ばしまくっていました。
現実で、そんなことしても大丈夫でしょうか?
私はその日のうちに、自宅登校から学校に隣接する寮に入る手続きをした。
【物語終了後】
漫画では、インターハイ後のことは書かれていません。
「俺たちの戦いはこれからだ!」というENDだったので。
高校二年が終わり、高校三年になるという春の時期になると、この学校にまで流れてきた『あの子の噂』で、高校三年になってあの子は庭園学園に登校しなくなったということです。
ただ登校していないというのではなくて、近くのショッピングモールやオコメランド(前世でいうディ●▲■ランドみたいなとこ)などの人の多いところでも、一切見かけなくなったということらしい。
私と日々屋先輩と遊泳学園テニス部一同は、庭園学園と飛翔学園高等部の元部長’sが、お金持ちの家の子だったなということは、サラッと忘れることにした。
・主人公は、手に取った小説を購入してから本屋を出ています。
・逆ハー少女夢餡夢実のその後は、ご想像にお任せします。
読んでくださり、有難うございました。