三
ラースを取り囲んで剣を突き付けながら、部下の騎士達はへらへらと嘲笑っていた。その浮かれっぷりから、自分達に負ける要素などないと騎士達が高を括っていることが見て取れた。見くびられたものだとラースは舌打ちをこぼした。
「どうした、怖いのか? 我々に逆らうからこうなるんだ、馬鹿な奴め」
嘲笑だけでは飽き足らず、騎士達は優越感に浸りながらラースを挑発した。これ以上は黙っていられず、ラースは険しい顔で騎士達を煽り返した。
「どいつもこいつも口が減らねえな。さっさとかかって来たらどうだ?」
「何だと……貴様っ!」
ラースの一言で憤慨し、騎士達は顔を真っ赤にした。
「良いだろう、ならばお望み通りぶっ殺してやる!」
噴き上げる怒りに身を任せ、騎士達は一斉にラースに突撃した。
最初に間合いを詰めたのは、ラースの背後にいた騎士だった。ラースはまだ気付いていないのか、背後から来る騎士に目を向けない。いける、と騎士は確信した。
「馬鹿め! 後ろががら空きだ!」
そう叫びながら、騎士はラースの背中に目がけて剣を振り下ろした。振り下ろされた剣は弧を描き、風を切り、そして──ドスンと音を立てて地面に刺さった。
騎士の一振りは、ラースの身体に掠りすらしなかった。それどころか、目の前に立っていたはずのラースの姿を、騎士は一瞬のうちに見失ってしまった。
思わず消えたと錯覚してしまう。左、右と見渡してみるも、騎士はラースの姿を捉えることができない。焦りを募らせながら、騎士は「どこに行った」と大声を上げた。
騎士の頭上を、ラースが跳躍で飛び越えていることなど露知らずである。
「う、後ろだ!」
真正面にいる騎士が、攻撃をしかけた騎士の真後ろを指差しながら叫んだ。度肝を抜くと同時に、騎士はすぐさま後ろを振り返るが、もう遅い……ラースは既に、攻撃の態勢に入っていた。
左足を踏み込ませ、右足を力いっぱい振り上げる。振り上げられた右足が、騎士の顔面に、兜の僅かな隙間から入って食い込む。ラースの重い蹴りをもらった騎士は、大きく吹っ飛び、他三人を通り越し、奥の方で転がって倒れた。
「お、おい……!」
声をかけてみたものの、ラースのたった一発の蹴りにより、その騎士はすでに意識を失ってしまっていた。
「もっと全力でかかったらどうだ? 御託を並べてないでよ」
動かなくなった仲間を見ながら呆然とする騎士達に向かって、ラースは言い放った。
先程の余裕はどこへやら、騎士達はたった一人の青年に動揺し、困惑した。どうすればこの男を倒せるんだと騎士達がいくら考えても、そのヴィジョンは浮かんで来ず、焦りだけが空しく募っていった。
「来ないのなら、こっちから行くぞ」
ラースが再度口を開いた。そして、剣を手で一回転して構え、騎士達との間合いをずんずんと、猶予を与えることなく詰めていった。
騎士達は恐怖する。思考が一瞬にして停止する。何かやらなければという考えだけが頭に残り、騎士の二人は反射的に剣を振り上げた。
「うわああああっ!」
悲鳴を上げて、剣を振り下ろす。盲目的に、剣を振り払う。もはや、それは相手を攻撃しているというより、必死で払い除けているという表現の方が当てはまっていた。
もちろん、そんな当てずっぽうな剣などラースには当たらない。剣で相手の攻撃を受け流すと、ラースは剣を持っていない左手で握り拳を作り、騎士達の顔面にドスンと強くめり込ませた。一瞬にして意識は途絶え、騎士二人は呻き声を上げながら、ラースの足元に崩れ落ちた。
「あぁ……っ」
残った一人は、何かやらなければという考えすら浮かばなかった騎士である。集団では粋がれるが、一人では何もできない、まさにその典型的な例だった。一瞬にしてやられてしまった騎士二人を見て、その騎士は表情を引きつらせた。
「後はテメェ一人だな」
そんな騎士に対し、ラースは情け容赦なしにそう言った。集団で、女一人を危険な目に遭わせようとしていた奴らである。許すはずがない。左手をこきりと鳴らしながら、ラースは残り一人に向かって歩み出した。
「あっ、あっ、あっ」
何とも情けない声を上げて、その騎士は腰を抜かしながらも後退りをした。途中、手にしていた剣を放してしまったが、ラースから距離を取るのに必死で、そのことに気付かなかった。
一方で、ラースは決して慈悲の手を差し伸べない。腰を抜かしている人間との間合いを詰めるのは至って容易かった。間近まで来たところで、ラースは手にしている剣を大きく持ち上げた。
「アアアアアアッ!」
騎士が、人目もはばからず大きな悲鳴を上げた。そして、どたばたと騒がしく立ち上がり、何度もこけながら、一目散にその場から逃げ出してしまった。
水を打ったかのような沈黙が流れる。自分を囲んでいた騎士達を全員追い払ったところで、ラースは一息をつくと、ようやく最後の一人となった騎士に目を向け、手にしている剣を突き付けた。
「さぁ、とっとと他の奴らを連れて、ここから出てけ」
ラースは騎士を睨み付けながら言い放った。
すると、その騎士は予想外の行動に出た。何がおかしいのか、その騎士は顔を手で押さえながら、いきなり高らかに笑い始めたのだ。
「どうやら我々は貴様を甘く見すぎていたようだ。ここまで強いとはな……。この私でも歯が立たないであろう」
悲観的な言葉とは裏腹に、騎士は依然としてにやけ続けていた。
──こいつ、何を考えてやがる?
「ならどうする? このまま尻尾巻いて逃げるって言いてぇのか?」
疑念を抱きながらも、ラースは切り出した。
「いや。それでも任務を全うするのが我々騎士だ」
騎士の言葉に、ラースが眉をひそめた瞬間だった。
突如、軽少な爆発音と共に、辺りが一瞬にして煙に包まれた。 騎士の放った煙により、ラースは不覚にも騎士を見失ってしまった。咳き込みながらも周囲を見渡してみるが、やはり煙のせいで何も見えない。
「……『ニンジャ』と呼ばれる者逹が使う道具の一つで、『煙玉』と言う物らしい……」
途端、騎士の声が耳に入ってきた。
「どうだ、なかなか便利なものだろう? 貴様の視界を遮るにはとても十分な代物だ……」
騎士の言葉を聞き、ラースは目を丸くした。同時に、ラースの脳裏に危険信号が灯る。
騎士が、こんな絶好の機会をふいにするはずがない。この隙にセラをかっさらい、その場から逃げ去ってしまえば結果オーライとなるのだ。それだけは何としても阻止しなければならない。
──まだセラも遠く離れていないはずだ。そう信じ、セラが騎士に何かされる前に、ラースは先程までセラがいた方向へと走り出した。
すると、少し走ったところで、恐怖で震えているセラの姿を見つけることができた。どうやら、まだ騎士に見つかってはいないようだ。
「ら、ラースさん……!」
ラースの姿を目にするなり、セラは緊張の糸が少しでも切れたのか、目に涙を浮かべながらラースに近寄った。だが、いちいちそのことに構っている暇はない――セラを見つけるなり、ラースはできるだけ声を押し殺して、セラに指示した。
「セラ! 黙ってできるだけ身を屈めて縮こまってろ! 急げ!」
「は……はい!」
セラは言われた通り、その場で最大限に縮こまった。それを確認するなり、ラースはセラから目を離し、すぐさま周囲を警戒した。
騎士の足音が近付いて来ないか……。少しでも騎士の姿が見えないか……。視覚と聴覚の二つを最大限に研ぎ澄まし、ラースは騎士の急襲に備える。
「どうやら……小娘の所にいるようだな。ご苦労なことだ……」
再び、どこからともなく騎士の声が聞こえた。
「確かに今、小娘をさらってしまえば方は付く。だが、そうせずとも、小娘を連行するのは実に容易いことだ……」
ラースは眉根を寄せたが、騎士がそれ以上語ることはなかった。
騎士の目的がセラであることに変わりはないはずなのに、セラに手を出すことなく連れて行くとはどういうことなのか? はったりの可能性もある、とラースは黙考する。
「ま……まさか……!」
突然、セラが息を呑んだ。騎士が目論む別の方法が何なのか、先に気付いたのはセラの方だった。それに気付くなり、セラは切迫した様子でラースに言った。
「ラースさん! 子供達が……!」
セラの言葉を耳にし、そこでようやく、ラースも騎士の魂胆に気付いた。それと同時に、視界を遮っていた煙が徐々に晴れていった。
露わになる目の前の光景に、ラース達は息を呑んだ。視線の先にあったのは、騎士が女の子の背中をむんずと掴み、人質に取っている姿だった。騎士がすぐ近くにいることに気付くなり、子供達は騎士に怯え、急いで離れてラース達の背後に隠れた。
「うえ~ん! セラお姉ちゃあんっ!」
恐怖で泣き叫ぶ女の子の首元に剣を突き付けながら、騎士は不敵な笑みを浮かべて言った。
「さて……ラースとやら。私が今から何をするか、もうお分かりであろう。セラ・マリノアをこちらに差し出せ。さもなくば、この子の首が飛ぶことになるぞ」
騎士が女の子の頬に剣先を当てた。つう、と先端の触れた所から血が流れ出す。
「ラースお兄ちゃん! ニーナを助けてあげて……!」
子供達がラースに助けを求めた。しかし助けようにも、ラースはその場から動くことができなかった。
ラースは、爪が手の平に食い込むほど強く拳を握り締めた。当然、セラを差し出す気も、女の子を犠牲にする気も更々なかった。だが、今の状況を打開する方法が見当たらない──。どうすれば二人を救うことができるのか、ラースは苦悩した。
「……ラースさん」
不意に、セラが口を開いた。
ラースは返事をしないまま、セラの言葉に耳を傾ける。何か良策でもあるのろうかとラースは期待したが、そうではなかった。
「私……あの人の言葉に従います」
ラースは目を丸くした。
セラは、自らを犠牲にする決断に至ったのである。
「そうすれば、ニーナも命を狙われずに済むはずです。私の命なんかより、あの子の命の方が大事です」
「ふざけるな! お前、自分で何言ってるのか分かってんのか?」
セラの発言に怒りを覚え、ラースはセラに怒鳴った。
「そうだよお姉ちゃん! 行っちゃ駄目だよ!」
子供達も塞き止めたが、セラは首を横に振った。そして、変わらぬ様子で弁明を説いた。
「あの人は最初、私を『殺しはしない』と言っていました。だから、大丈夫なはずです。今ここでニーナが殺されるくらいなら……私、喜んであの人について行きます」
セラの弁明を聞いても、ラースは納得しなかった――するはずがなかった。セラが自身の言葉と裏腹に、恐怖で体を震わせているのなら、なおさらだった。
「そんなことで命を天秤にかけるな! 理屈の問題じゃ……」
「お喋りはそこまでだ!」
騎士の叫び声が、ラースの言葉を遮った。
「余計な口出しをするな。貴様は黙って私の言うことに従っていればいいのだ!」
ラースは眉間にしわを寄せ、騎士を睨み付けた。
「フン……どうやら小娘より先に、貴様をどうにかしなければならないようだな。剣を捨てて両手を後頭部に回せ!」
騎士がラースに命令する。今、騎士に逆らえば女の子の命がない――ラースに反論の余地はなかった。
「くそっ……」
ラースは仕方なしに、手にしている剣を横に放り捨て、両手を後頭部に回した。
「そうだ、そうやって黙って見ていればいいのだ……」
ここまで従順なラースを滑稽に思い、騎士は口角を吊り上げた。そして、次にセラに命令する。
「それでは小娘、改めてこちらに来てもらおうか。従えば、望み通り子供の命は保証するぞ」
セラは口を開くことなく、こくりとうなずき、そして騎士のいる方へと歩み始めた。
「セラ、止めろ!」
ラースが叫んだ。その叫び声に一瞬だけびくつき、セラはぴたりと足を止める。
だが──セラがラースの方に顔を向けることはなかった。実際に口に出さずとも、セラが背中越しに「ならばどうやってニーナを助けるのか」と問いかけているようにラースは見えた。その問いに対し、ラースは答えを示すことができなかった。
騎士の言葉に従わなければ、女の子は騎士の手によって殺されてしまう。逆らうことは許されない──。女の子を助け出すには、騎士の言う通りにするしか方法がない。
「ラースさん……ごめんなさい……」
ラースに背中を向けたまま、セラは謝った。そして、セラは止めていた足を再び進め始めた。
「セラ!」
ラースが大声で呼び止めた。しかし、セラはもう反応すらしなかった。ラースの呼び止めを完全に無視し、足を止めることなく、セラは騎士の方へと向かっていった。
「ちくしょう……!」
ラースは憤りと、何もできない悔しさとで、歯を強く食いしばった。たしかにセラの思う通り、女の子を救うためには、騎士の言いなりになるしか方法はない。だが、必ずしも救えるとは限らないのだ。あの極悪非道な騎士が、果たして、素直に女の子を手放してくれるだろうか? ……そんなはずがない。
ラースは考えを巡らせた。セラと女の子、二人とも救出する方法を。何もできないのは分かっていたが、それでも諦めたくなかった。セラをみすみす騎士に渡すわけにはいかなかった。
──どうすれば、女の子を救うことができる? ラースがそう思った時、想定外の出来事が起こった。
「うおおおおっ!」
それは、誰にとっても想定外な出来事だった。突如、どこからともなく、何者かの叫び声が響き渡ったのだ。
いきなりの叫び声に、その場にいる者全員が驚く。その中でも、特に騎士は動揺を隠せなかった。このまま事が運べばセラ・マリノアを問題なく連れ去ることができるだけに、ここで何かしらの支障が生じるのは騎士にとって迷惑千万でしかない。
「だ、誰だ! 何者だ!」
騎士が叫ぶ。そして辺りを見渡す。右、左、後ろ──そこで、騎士の動きは止まった。同時に、身に迫る危機に、騎士は目を丸くした。
視線の先では、いや、目の前では、トーマスが今にも、倒れている騎士から奪った剣を振り下ろそうとしていた。
「とりゃああああっ!」
闇雲に、そしてがむしゃらに。トーマスは雄叫びを上げながら、騎士の頭上に剣を振り下ろした。
突然の不意打ちに、騎士は驚きのあまり一瞬体が硬直した。トーマスの一振りが、騎士の眼前に迫る。
攻撃を避けることで、騎士の頭はいっぱいになった。とっさに横へ跳び、トーマスの攻撃をかわした際──あろうことか、騎士はぽろりと女の子を手放してしまった。
騎士の顔に焦りが表れる。すぐに女の子を拾い上げようとするが、トーマスがそれを妨げる。騎士の手が女の子に届く前に、トーマスは剣を横に振り払うことで、騎士の手を払いのけた。
騎士が後退した。それを見逃すことなく、トーマスは女の子を庇うように、騎士の前に立ちはだかった。「絶対に退かないぞ」と言わんばかりに、トーマスは鼻息を荒らげながら、騎士に対して身構える。そして、叫んだ。
「ラース、やれ!」
ラースも既にそのつもりだった。トーマスが急襲した時点から動いていたラースは、自分の剣を拾い上げ、構え、騎士に向かって走り出していた。
つい先ほど、自ら「歯が立たない」と口にしていたくらいである。ラースが猛然と襲いかかってくるのを見て、騎士は恐怖で立ち竦んだ。
「だ、誰か……」
そう、騎士が声を震わせながら助けを求めるも、部下達はラースに倒され、気絶してしまっていた。へっぴり腰になりながら剣を構えるも、目前まで距離を詰めたラースの一振りにより、騎士の剣はあっさりと弾き飛ばされてしまう。
弾き飛ばされた勢いで、騎士は大きく体勢を崩す。その隙を逃すことなく、ラースは追撃に入った。騎士が体勢を戻す前に、ラースは足を振り上げ、騎士の顔面に強烈な蹴りをお見舞いした。騎士はもんどりを打ち、地面に叩き付けられ、うつ伏せに倒れた。
「やったぁ!」
子供達から歓喜の声が飛んだ。
ラースが騎士に歩み寄る。騎士が呻き声を上げながら起き上がろうとしたが、ラースは騎士の背中を足で押さえつけることで、行動を遮った。
騎士を踏みつけたまま、手にしている剣を騎士の眼前に近付け、ラースは問う。
「まず、はっきりさせたいことがある。お前らはアルテリア帝国とバルドロス帝国、どっちの騎士なんだ?」
この世界において、騎士団は、二大帝国であるアルテリア帝国とバルドロス帝国の二国にしか専属していない。故に、ここにいる騎士達が、アルテリア帝国とバルドロス帝国、どちらかの騎士であることは明白である。
しかし、それだけでは足りない。肝心なのは、この騎士達がどちらの帝国に仕えているのかである。騎士の任務は王命によるものと、騎士は先程言っていた──つまり、二大帝国のどちらかの国王が、セラを捕えるよう命じたということになる。
「いや……それは聞くまでもねえことだったか」
そう呟きながら、ラースは近くに落ちてあった騎士達の剣を拾い、柄の辺りを覗き込んだ──すると、求めていた答えはすぐに分かった。柄の部分には、『バルドロス帝国』と刻印で刻まれていた。
「さぁ、答えろよ。バルドロス帝国の国王が何の目的で、セラを捕えようとしているのか」
騎士の剣を放り捨てながら、ラースは騎士に問い詰めた。しかし騎士はうつむき、あくまで無言に徹しようとしていた。
「この期に及んで……何も知らないで済ませるつもりじゃねえだろうな……!」
ラースの怒鳴り声に対し、騎士は歯を食いしばりながら、言った。
「し……知らん! 私は……」
ラースが目の色を変え、手にしている剣をひゅんと横に振る──途端、騎士の頭部にドスンと衝撃が走った。何事だと騎士が思った次の瞬間、騎士の被っていた兜がぱくりと真っ二つに割れ、その片方が騎士の眼前に転がった。
「答えろ。答えないならば今度はテメェの頭をかち割る。テメェが死のうが、そこら辺でくたばっている奴らに訊けば済むことなんだ」
そう言って、ラースは再び騎士に剣先を向けた。騎士の顔がみるみる青ざめる。
「十秒待つ。それ以上経ってもそうやって黙ってるのなら、お望み通り殺してやる」
困惑しきった様子の騎士に、ラースはとどめとばかりに言い放ち、そしてカウントダウンを始めた。
しかしラースは、自身の言葉とは裏腹に、内心では騎士が早く口を割ることを願っていた。仮に騎士が口を割らなかったとしても、その時は斬殺せず、峰打ちで気絶させるつもりだった。これらの言動は、あくまで口を割らせるための脅しでしかない。
──とっとと観念してくれねーかな。心の中で呟きながら、ラースはカウントダウンを続ける。六、五、四、三……。まだ白状する気にならないのか──そう思いながら騎士の自白を待ったが、この時騎士が密かに口を動かしていたことに、ラースは気付くことができなかった。
騎士が呪文を唱え終えると、騎士の体は青白い光に包まれ、瞬く間に宙に浮いた。騎士の背中を押さえていた足は跳ね飛ばされ、ラースはその反動で尻餅をついてしまう。
「ま……待て!」
体勢を立て直し、騎士を見上げながら、ラースが叫ぶ。しかし、それで騎士が逃げるのを止めるはずがなかった。
空中からラースを見下ろし、騎士は青ざめながらも勝ち誇った表情を浮かべ、さらに高度を上げた。そして、ラースから視線を逸らし、くるりと向きを変え、騎士は東の彼方へと飛んで行った。
「……逃げられた」
とうとう、騎士の姿は見えなくなってしまった。騎士のいない空を見上げながら、ラースは呆然と立ち尽くし、呟いた。まさか、飛んで逃げるなんて……。
「おーい!」
トーマスの大きな呼び声で、ラースは我に返った。顔を向けると、トーマスがラースの方に駆け寄って来ているのが見えた。
「大丈夫かよ?」
ラースのもとに辿り着くなり、トーマスがラースに身の安否を問う。
「それ、俺じゃなくてあいつらに訊くべきなんじゃねーのか?」
そう言って、ラースは二人の人物を指差した。ずっと人質にされていた女の子と、セラ・マリノアの二人を。
「そ、そうだった! セラちゃーん!」
雄叫びを上げながら、トーマスはセラの方へ全速力で駆けていった。
「ったく。子供の方は眼中にねーのかよ、あいつは」
呆れた風に鼻でため息をついた後、ラースは女の子の方へ歩いていった。
近くまで来てみると、女の子は極度の恐怖から解放された安堵感からか、地面にぐったりと倒れていた。
「……ニーナって言うんだっけか?」
ラースが声をかけると、女の子はゆっくりと顔を上げ、虚ろな目をラースに向けた。
──疲弊してしまうのも無理はない。できるだけ刺激を与えないように、ラースは言葉を続けた。
「俺はラース。さっきの悪い奴は、どっか飛んで行っちまった。だから、もう大丈夫だ」
ラースはしゃがみ込んで、ニーナに手を差し出した。
「立てるか?」
ニーナは黙ってうつむいたまま、ラースの手を掴んだ。ラースがニーナを引き上げようとしたが、ニーナはそれよりも早く、自力で立ち上がった。
あまり無理をするなとラースが言おうとしたとき、ラースはあることに気付き、口を止めてしまう。なんと、ニーナはにっこりと笑っていたのだ。思いも寄らないことに、ラースは目を丸くした。
「……お姉ちゃんの言った通りだった」
「……は?」
「セラお姉ちゃんの言った通りだった! お姉ちゃん、お兄ちゃんは『いい狼』だって! 本当に、強くて、優しくて、かっこよかった!」
ニーナの言葉を聞き、ラースは少しの間呆然とした。
「セラが……そう言ったのか?」
そう呟くと、ラースはおかしさのあまり、思わず吹き出してしまった。
「狼って……それじゃあ結局、いい奴なのかどうか分かんねえじゃねーか」
ニーナもラースに釣られて、声を上げて笑った。
「ニーナ~!」
大きな呼び声が聞こえてきた。二人が振り向くと、子供達がラース達の方に走ってきているのが見えた。
「ニーナ、大丈夫?」
駆け付けるなり、子供達がニーナに安否を問うと、ニーナはまたにっこりと笑ってうなずいた。
「うん! 私はもう大丈夫だよ」
ニーナの笑顔を見て、子供達は胸を撫で下ろした。ラースも、ニーナの元気そうな様子に安堵の表情を浮かべた。
「セラちゃんも無事だぞ、ラース!」
その言葉と共に、遅れてトーマスがやって来た。セラも一緒だった。セラも無事であることが分かり、ラースがほっとため息をついたとき……ここでふと、セラが暗い顔をしてうつむいていることに、ラースは気付いた。
どうしたんだとラースが尋ねようとした途端、セラは顔を上げるや否や、ラースに対して急に深々と頭を下げ始めた。
「ラースさん、ごめんなさい! あんな勝手なことを言って……」
突然の謝罪に、ラースはわけが分からずにうろたえていたが、やがて、セラが何のことを謝っているのかを理解した。
ニーナが人質に取られたとき、セラは危険を顧みずに、騎士の要求に従うことでニーナを救出しようとした。きっとそのことを謝っているんだろう、とラースは推察する。
「あの時の私、ニーナを助けることに夢中で……せっかくラースさんが戦ってくれていたのに、あんな馬鹿みたいなこと言って……本当にごめんなさい!」
平謝りするセラに対し、ラースは後頭部を掻きながら言った。
「もう過ぎた話だろ? それに、俺はあの時何もできなかったんだ。お前があんな風に考えるのも仕方ねえよ」
「でも……」
ラースの言葉を聞いてもなお、セラは気が気でない様子のままだった。このままでは埒が明かないと思い、ラースは話題を変えた。
「それよりお前、他のことで俺に謝ることはないのか?」
「えっ」
唐突なラースの問いに、セラはきょとんとした顔を見せる。
「俺が騎士達と対峙していたとき、お前、子供達に俺のこと何て説明した?」
その言葉を聞き、セラはようやく、ラースが何のことで怒っているのかを理解した。同時に、あの時のことがラースにばれていたと知り、セラは顔を耳の先まで真っ赤に染める。
「セラお姉ちゃんも、ラースお兄ちゃんのこと『狼』だって言ってたよね!」
悪気があるのかないのか、一人の子供があどけない笑顔で堂々と言ってのけた。
「そ、そういうことはわざわざ言わなくてもいいんですよ……!」
セラが慌てふためくのを見て、子供達は爆笑した。ラースも鼻でため息をつきながら、口の端を上げた。
そして、ラースはニーナが人質にされたときのことをふと思い返した。あの時、セラが騎士の言いなりになるしか、ニーナを救い出す方法は残っていなかった。そんな絶望的な状況を切り開いてくれたのは、他でもない、トーマスだった。
そう言えばアイツのこと忘れかけていたなと思い、ラースはトーマスに目を向けた。トーマスは誰も構ってくれない寂しさからか、死んだ魚のような目でセラと子供達の和気あいあいとした様子を見つめながら、「俺結構頑張ったのに……」「どうせ俺は脇役だし……」などと呟いていた。見かねて、ラースはトーマスに言った。
「お前にも感謝しないといけないな、トーマス」
「……へ?」
ラースから礼を言われるのが予想外だったらしく、トーマスは目を点にした。鼻でフッと笑いながら、ラースは言葉を続ける。
「お前が来てくれなかったら、セラは今頃、あの騎士に連れ去られていたかもしれないんだ」
横で聞いていたニーナとセラも、ラースの言葉に同感し、続いてトーマスに礼を言った。
「ありがとう、助けてくれて! トーマスお兄ちゃんもかっこよかったよ!」
「私達がこうして無事でいられるのも、トーマスが助けに来てくれたおかげです! 本当に、ありがとうございました!」
トーマスは唖然とした。皆に感謝されたこと、そしてセラに声をかけてもらったことがとても信じられない様子だった。そして、それが現実に起こったことだと認識した途端、トーマスはにやけが止まらなくなった。
「いやいやいやいやぁ~! それはあんまり買い被りすぎだって~!」
自分でセラのことを婚約者だと言っておいて、話しかけられただけでその喜びようはないだろう、とラースは突っ込みたくなったが、満悦しているところに水を差すのもどうかと思い、ラースは言葉を変えた。
「……よかったなぁ、トーマス。セラに褒めてもらえて」
「そうでもないけどな! アッハッハッハッハッハー!」
これ以上何か言ってもストレスが溜まるだけだと思い、ラースはトーマスを無視することにした。
そして、ラースはちらとセラに目を向けた。とりあえず、セラもニーナも無事に助けることができたものの、まだ気がかりな点は残っていた。
――何故、バルドロス帝国の騎士達はあれほどまでにセラを欲していたのだろう?
騎士が王命によって動いている以上、バルドロス帝国の国王がセラを捕えようとしていることは確かだろう。拉致してでもセラを手中に収めようとするのには、何かそれなりの理由があるのだろうか――そんなことを考えながら、ラースはセラとニーナの会話に注目する。
「あ……ニーナ! ちょっと顔を見せてください」
セラが何かに気付いたらしい。目を丸くするニーナの頬を指で差しながら、セラは言葉を続けた。
「ほら、頬っぺたから血が……」
ニーナの頬には、騎士に剣先を当てられたときにできた傷があった。少しだけ指で触ってしまい、ひりっとした痛みが走り、ニーナは顔を歪ませる。
「大丈夫ですよ、ニーナ。すぐに治してあげますから」
クスッと笑ってそう言うと、セラは頬の傷口に右手をかざした。
すると、セラの右手から温かな光が発され、頬の傷を優しく包み込んだ。予想だにしない出来事に、ラースは目を丸くした。やがて、セラの右手から発された光が徐々に小さくなり、完全に消えた頃には、ニーナの傷は既になくなっていた。
「セラ……! お前、今のは一体……」
動揺しながらラースが訊くと、セラはきょとんとした様子で答えた。
「えっ……その。魔法、ですよね?」
ラースは言葉に詰まった。言われれば確かに、セラは魔法でニーナの傷を治したまでに過ぎない。セラの返答に対し、ラースは「あぁ」と返事することしかできなかった。
しかし、それでも何か引っかかった。前日、黒マントの男が竜巻を呼び起こす魔法を使っていたのを目の当たりにしている。その時の記憶と、今セラが魔法を使ったときの様子を比較してみて、ラースはどことなく違和感を覚えたのである。
──少なくとも、セラに何か秘密があることは間違いなさそうだな。そう思ったラースは、皆が先ほどの事件の話で盛り上がっている中、ニーナだけを小声で呼び、尋ねた。
「なあ、ニーナ。この村の村長さんってどこにいるんだ?」
「え? 村長さんなら、あそこの家に住んでいるけど……」
ニーナは、村の一番奥にある小さな家を指差した。
「でも、何で? ラースお兄ちゃん」
「いや、別に大したことじゃねえよ」
首を傾げるニーナに対し、ラースは言葉を濁した。そして、ニーナが指し示した、村長が住んでいるという小さな家に目を向けた。
──セラには何か重大な秘密がある。村長さんならきっと、セラのことについて何か知っているかもしれない。できれば今夜中にとラースは決めた。
* * *
イーストの地の東、バルドロス帝国の城下町にて、一人の騎士が体をふらつかせながら通りを駆けていた。
数時間前、この騎士には一つの命令が下されていた。ネムヘブルにいる、セラ・マリノアという名の女を捕らえろという命令。これを受け、騎士は部下四人を引き連れてネムヘブルに押し入り、セラ・マリノアの拉致を目論んだ。
──我々が貴様をイーストに連れて行くまでの間、大人しくしていてもらおうか。そう言って剣を振り上げたとき、突如として現れた男に、騎士は剣を阻まれた。邪魔者が現れただけならば、まだ小さな問題でしかない。何よりも誤算だったのは、部下四人が束になってかかっても敵わないほど、その男が並外れた剣の腕の持ち主であったことだった。
部下達がやられ、騎士は村の子供を人質にしてセラ・マリノアを連れ去ろうとしたものの、思わぬ障害により、その計画も失敗に終わった。男に強烈な蹴りをもらい、手負いの状況で追い詰められて窮地に陥ったとき、騎士はわずかにある魔力を使い、空を飛んでイーストに命からがら逃げ延びた。部下はともかくとして、自分が無事に逃げられただけでもよかったと、騎士は安堵しながら、靴跡がくっきりと残った顔面をさする。
――あの男を、セラ・マリノアは「ラース」と呼んでいた。今日の襲撃があった以上、セラ・マリノアはラースという男に護衛を頼むことだろう。そうなれば、今後の任務にも支障が起こるのは間違いない……。
一刻も早く騎士団長に知らせなければと、騎士は城下町を抜け、その先にあるバルドロス城へと向かう。門の前に着いたところで、騎士は門番兵の二人に息を荒らげながら言った。
「団長に報告せねばならんことがある! 門を開けろ!」
騎士の命令を受け、門番兵がすぐに門を開こうとしたときだった。
「いや、お前はそこにいろ。俺がそこに行く」
門の向こう側から、男の声が聞こえた。男の声を聞き、騎士は一瞬目を丸くすると、すぐに門から離れて片膝をつき、頭を下げた。
「はっ……お心遣いに感謝します、クリード団長」
門が向こう側から開かれ、男が姿を現した。兜を被っていない、オールバックの黒髪の騎士だ。銀と赤で彩られた鎧には、深緑のマントがはためいていた。
「それで……用件は何だ?」
二重まぶたの細い目で、片膝をついている騎士を見据えながら、男は尋ねた。
「お聞き願います、団長。セラ・マリノアの捕縛を、一人の民間人に阻まれました!」
騎士は頭を下げたまま、男に言葉を続けた。
「ラースという名の男です、団長。奴は剣技に長けており、我が部下四人を一斉に相手し、打ち負かすほどの腕です! もし、奴がセラ・マリノアの護衛についたならば、セラ・マリノア捕縛に支障が出るのは確実です! 一刻も早く……」
切迫した様子で言う騎士に対し、男はフッと鼻で笑った。
「話はそれだけか?」
思いがけない返しに、騎士は目を丸くしながら顔を上げた。騎士の目に、冷酷な眼差しで見下ろす男の姿が映る。
「お前には、セラ・マリノアを捕えてくるよう命じたはずだな? どの面を下げてのこのこと戻ってきたと言うんだ? お前は騎士団の恥を晒しただけだ。たかが民間人一人に、騎士が四人がかりでやられただと? 獲物を目の前にして、尻尾を巻いて逃げただと? 笑わせるな……!」
騎士の顔がみるみる青ざめる。自分のしでかしたこと、その罪の重さに、騎士はこの時ようやく気付いた。
「お前には失望した」
男が表情をそのままに、腰につけたレイピアを抜きながら、続ける。
「お前はもう……必要ない」
レイピアの先端を突き付ける男に対し、騎士は慌てて許しを請うた。
「お、お許しください! 次はこのような失態は演じません! ですから……」
騎士の言葉を耳に入れることなく、男は呟いて呪文を唱え、レイピアを振り払った。次の瞬間、騎士の足元から猛火の渦が巻き起こり、騎士の体を呑み込んで炙った。
「がああああッ!」
騎士の断末魔の叫びに対し、男は口の端を上げながら言う。
「安心しろ、お前にもわずかだが価値がある。任務をしくじったお前がこうして死ぬことで、他の兵達へのいい見せしめになる。騎士団の士気をいとも簡単に高めることができるのだ。最期に騎士団に貢献できることをありがたく思うといい」
止めとばかりに、男はさらに力を込め、猛火の威力を強めた。騎士は弱るところまで弱り、もう痛みで声を上げることはなかった。騎士の目からこぼれた涙は、男の猛火によって、伝うことなく涸れた。
満悦の表情を浮かべ、男が突き付けていたレイピアを下げる。猛火の渦が失せ、後に残ったのは、もはや誰なのかすら分からない、真っ黒に焼け焦げた騎士の亡骸だった。殺人の瞬間を目の当たりにし、そばにいた門番兵の一人は恐怖で体を震わせ、もう一人は耐えられずその場で嘔吐した。
しかし、騎士を殺した男は、そんな彼らになど目もくれなかった。汚物を見るような目を騎士の亡骸に向け、退けるように亡骸の横腹を蹴飛ばすと、門番兵達に「後始末をしておけ」とだけ言い、城へと引き返した。
「クリード」
自室に戻る途中、男は何者かに呼び止められた。振り返ると、そこには高貴なローブを身にまとった中年の男が立っていた。頭に被られた王冠は、エメラルドの大きな宝石で輝いている。
「……カーツ国王」
中年の男を目にするなり、男は片膝をついて忠誠を示した。
「フン、貴様にしては珍しく手間取っているようだな」
国王と呼ばれた男が言うと、片膝をついた男は頭を下げ、謝罪の言葉を述べた。
「申し訳ありません……。『ディアナ』捕縛に向かわせた部隊が、ラースという名の男に阻まれ、返り討ちにされたそうで……」
「全く……使えない奴らだ……」
男の報告を聞き、王は舌打ちをしながら毒づいた。
「ですが国王、まだ引き下がるわけにはいきません」
立ち上がり、男は王に提案した。
「手を打ちましょう。まともな自衛手段のない『ディアナ』は今、ラースという男を頼るしかない……。男の行方を追えば、自ずと『ディアナ』の居場所も特定できるはずです」
「ならば……どうするのだ?」
「ラースという男は、我々騎士の任務を妨害しました。この事実で奴を罪に問えば、『帝国平和条約』の下、敵国の騎士団を『ディアナ』捕縛に利用することができます」
それを聞き、王はくつくつと不気味に笑った。
「帝国平和条約……冒頭は、『我ら二大帝国は、世界の平和を築くための善隣関係にあり、緊密に協力しあうことを互いに認め、よしとする』だったか……。クロム・マクシードもつくづく煩わしい条約を立てたものだ……。だが、今回はそれを逆手に取ってやれる。此度の件も、帝国平和条約を振りかざせば、奴とて肯定せざるを得んだろうよ」
「左様で……」
男もまた、含み笑いを浮かべた。
「それと、もう一つお伝えしておくことがございます」
「言ってみろ」
王が促すと、男は軽く頭を下げ、報告を始めた。
「先刻、城の近くで面白い産物二人を見つけまして。そのうちの一人は才学に長けており、我々の計画に多大なる貢献をもたらすことでしょう」
「計画……あの女の、だな?」
「えぇ。装置は近日中に完成するとのことです。何でも、『ディアナ』の膨大な力さえあれば、計画を実行に移すのはたやすいと」
再び、王が肩を揺らして笑い出した。
「素材と術者……両方が揃ったわけだな?」
「はい。装置が完成し次第、まずは小動物を対象に実験を行う予定です。実験が成功した暁には、あの女を使って計画を実行します」
満悦の笑みを浮かべながら、王は言った。
「そうか。ならば我が輩達は、『ディアナ』捕縛に専念していればよい……。クリード、貴様はアルテリア帝国に向かい、騎士団に騎士襲撃の件を持ち込め。違法者捕縛の協力を要請してくるのだ」
「はっ……」
男の返事を耳にすると、王は踵を返して呟いた。
「先代の王政が崩れてから十五年……ずっとこの時を待っていた……。忌々しいクロム・マクシードを葬り、世界を手中に収める日も遠くはない……」
声を抑えるように笑いながら、王はその場を後にした。男も口の端を上げながら、頭を下げて王を見送った。
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