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Walk Hand in Hand  作者: 阿瀬 ままれ
第八章 騎士として、父親として
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「ルーク! ルーク!」


 キルバードが地面に倒れたまま何度も呼びかけるも、ルークからの返事はない。急いで駆け寄ろうとするも、やはり傷が深く、立ち上がることすらままならない。

 対するローベルトも、ルークから受けた一撃により、瀕死の状態になっていた。地面に手をつき、肩で息をしながらローベルトは呟く。


「傷が深すぎる……これ以上の戦闘は不可能だ……。傷を治癒しなければ……」


 その時、甲高い鳴き声が空から響き渡った。キルバードとローベルトが空を見上げると、巨鳥トトが羽ばたきながら近くまでやって来ているのが見えた。その後ろからは、竜の翼を生やしたラースと天使の羽を生やしたセラが、猛スピードで飛んで追いかけて来ている。


「キルバードさん!」


 地面に着陸するなり、セラは最初に目についたキルバードのもとへ駆け寄った。


「セラちゃん、俺は大丈夫だ……。それよりも、アイツの方を……!」


 キルバードは右手をぷるぷると震わせながら持ち上げ、地面に倒れたまま動かないルークの方を指差した。セラは息を呑み、すぐにルークのもとへ駆け寄って治癒を始めた。

 同じく地面に着陸したラースが、ローベルトと対峙する。そして、やはり数日前にリバームルで会った黒マントの男だったのかと確信した。相手もラースのことを覚えていたようで、ラースの姿を目にするなり、ローベルトは目を丸くしながら言った。


「君はラースか? 君も神の魂を宿す者だったのか」


 ローベルトの言葉にうなずき、ラースは言った。


「あぁ。因縁めいたものを感じるよ」


 ラースはマーズの力を発揮し、全身を竜の姿に変えた。戦闘態勢に入るラースを見て、既に瀕死のローベルトは冷や汗をかく。ラースが飛びかかってローベルトを地面に押さえつけようとするも、ローベルトの背中からも天使の羽が生え、上空へ飛ぶことでかわされてしまう。

 上空からラースを見下ろしながら、ローベルトは口を開く。


「この傷を癒すのに、しばしの時間が要る。それまでの間、雲隠れさせてもらおう」

「みすみす逃がすと思うか?」


 ラースが睨み付けながら言い返す。竜の翼を羽ばたかせ、地面を蹴ってローベルトを掴みにかかるも、ローベルトはユピテルの力によるテレポートで姿を消してしまう。

 辺りを見渡すも、ローベルトの姿は見当たらない。逃げられたのかとラースが思ったその時、ラースの脳に直接ローベルトが語りかけてきた。


「君達が神の魂を宿している以上、君達もいずれ私の手で仕留めなければならないようだ。三日――三日後の朝、ウェストの地にて君達を待つ」


 それだけを言い残し、ローベルトのテレパシーは途絶えてしまった。これ以上はローベルトを追いかけることができないのだとラースは悟った。

 ラースが地面に着地し、竜の姿から元の姿に戻りながらセラのもとへ駆け寄る。セラは父――ルークを抱え、意識を取り戻すよう何度も大声で呼びかけていた。


「ラースさん! ルークさんが……ルークさんが!」


 セラがぽろぽろと涙を流しながら叫ぶ。ディアナの力によって傷は全て癒えているようだったが、それでもルークは目を見開いたまま息をしていない。死んでしまったのだと悟り、ラースはうつむきながらセラに言った。


「分かったよ、セラ。もう……十分だ」


 ラースは、リバームルに住んでいたときの子供の頃を思い出した。フェル婆さんが親代わりになってくれたので、生活に不自由はなかったのだが、それでも他の子供達が親と一緒にいるのを見ると、羨ましいという気持ちが少なからず芽生えた。もし親父がそばにいてくれたら、家族らしいことがもっとできていたはずなのに――。

 アルテリア帝国に来るまでは、ただの一度も会ったことのない親父。それでも親父の死体を目の前にして、ラースは無念の思いが募っていくのを感じた。開いたままの瞼をそっと閉じると、ラースも悲しみのあまり一筋の涙を零した。

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