三
カルロス隊、そしてビックスとウェッジに案内してもらいながら、ラース達は迷路のような廊下を進んでいった。何度も階段を上り下りして、さすがのラースも少しばかりくたびれてきていたのだが、カルロス達にとってはこれもいつものことらしく、何ともなさそうな様子だった。
三階まで上がって騎士団の寝室に向かう途中、稽古場や弓場に通りかかった。稽古場では何人かの騎士が鍛錬に励んでおり、中には魔導書を片手に魔法の練習をしている者もいた。その奥を進むと武器庫が見え、数えきれないほどの剣と弓が壁に立て掛けられていた。どうやら、アルテリア城の三階は騎士団のスペースとして扱われているようだ。
「団長を除けば俺が一番……って、言いてえところだがなぁ」
アルテリア帝国騎士団で強い人物は誰なのかと、ラースが訊いてみたのに対し、カルロスはこめかみを親指でこりこり掻きながら言った。
「やっぱ、お前の兄ちゃんが群を抜いているかもな。あいつは騎士団に入団した時点で、中堅クラスの隊を片手であしらえるほどの実力があった。良い奴だから悪い気はしねえが、あの歳であそこまで名を上げているのを見ると、ちったあ焦るものがあるわな。俺は足りてねえ才能の部分を、これまでの経験でどうにか埋めているようなもんだ」
「焦る気持ち、俺も何となく分かるよ」
カルロスの本音を聞き、ラースは鼻でため息をつきながら言った。
「俺も昔、兄貴に何千回と剣の勝負を挑んで、一回も勝たせてもらえなかったからな。カダルナ港で兄貴の剣技を久々に見たけど、今でも兄貴には追いつける気がしねえ」
クレスの話題をきっかけに少し気落ちしてしまったのか、それからは特に会話もなく廊下を歩き続けた。四つ目の曲がり角を右に曲がると、何十もの部屋が並ぶ一本道の廊下に差し掛かった。部下達を廊下に待機させた後、カルロスは左の一番手前にある部屋のドアを開き、ラース達をその中に招き入れた。
玄関の両脇にある洗面所とトイレを通り過ぎ、ラース達は部屋の中を覗き見た。中は左右に二段ベッドが二つ並んでいるだけの狭苦しい部屋で、天井には一灯の質素なペンダントライトが吊るされていた。しばらく使われていない部屋だとカルロスは言ったが、専属のメイドが抜かりなく手入れをしているおかげか、ベッドの方は寝心地が良さそうな柔らかさを保っていた。
部屋を出ていく直前、ドアを開けて向かい側の部屋を親指で指差しながら、カルロスはラース達に言った。
「俺ら二番隊の寝室はこの部屋だ。そんで、クレス達三番隊の部屋がこの左隣。必要ないかもしれねえが、もし何かあったら遠慮なく俺らを呼んでくれて構わねえからよ。それじゃ、また明日な」
「お休みなさい、カルロスさん。ウェッジさん達も」
セラの挨拶に対し、カルロスは返事の代わりににっと笑い、ビックスとカルロス隊の二人は、ドアが閉まってセラ達が見えなくなるまで手を振り続けた。ウェッジの方はというと、ラムおばさんの宿屋で怒鳴り声を上げたことをまだ気にしていたのか、セラに快く名を呼んでもらえたことにほっと胸を撫で下ろしていた。
「……クレスさんが戻ってくるまで待ちますか?」
ドアがパタンと閉まったところで、セラは荷物を下ろしながらラースに尋ねた。ラースはランプの明かりを点けながら言った。
「別に待たないでもいいんじゃないか? バルドロス城に向かうときの作戦とか、詳しいことも明日まとめて話してくれるだろうしな。兄貴の言う通り、早く寝て明日に備えようぜ」
セラは少し悩んだが、あかねが手短に歯を磨いてベッドの中にこもるのを見て、セラもあかねを見習って早く寝ることにした。あかねが右のベッドの上段を陣取ったので、セラはそのベッドの下段を、ラースは反対側のベッドの下段を陣取り、空いた所に自分達の荷物を置いた。
二人が歯を磨き終えてベッドに戻ってみると、すでにあかねがスースーと寝息を立ててしまっていた。お休みを告げ、ラースがランプの明かりを消してベッドの中に入ろうとしたとき、突然セラに小さな声で呼び止められた。
「あの……ほんとは私、ラースさんのことが心配なんです」
「……俺のことが、か?」
ラースはきょとんとした顔になったが、すぐにセラの懸念を察した。初めてセラの家に訪れたときも、ラムおばさんの宿屋で宿泊したときも、ラースは決まって謎の夢にうなされていた。姿形のはっきりとしない『何か』に、自身の身体を延々と蝕まれ続ける夢だ。身体を侵食されていく感触、溶けるような痛み……。目を覚ますのがあと数分遅れていたら、今頃生きてここにいなかったかもしれないという危機感が甦り、ラースは思わず視線を落とした。
もし眠りについて、また夢の中で『何か』に命を狙われたら……。そんな懸念がラースの脳裏にも浮かんだが、すぐにラースは首を振った。──明日はバルドロス城に突入する。あかねの仲間を救出し、セラの秘密を暴き、そして両親やバーゴ達の無念を晴らすため、バルドロス帝国の連中を捕まえる。それらに比べたら、夢のことなど些細なものでしかないじゃないかと、ラースは自分に言い聞かせた。
「気を遣わせちまって悪いな。けど……」
済まなそうにうつむきながら、ラースは言った。
「今は、俺よりもお前達のことを優先させてくれ。夢のことだって、決して寝る度に毎回うなされているわけでもないしな。それよりももっと重要なことが、明日には控えているんだ」
セラは不安の色を見せたが、ラースの申し訳なさそうな様子に折れ、「分かりました」とやむなく返事した。にこりと微笑んで「お休みなさい」と返すと、セラはあかねを起こさないよう、忍び足でベッドの中に入っていった。
ラースも自分のベッドに入り、布団の中で仰向けに寝転がった。後頭部で手を組み、窓のない薄暗い部屋をぼうっと見渡しながら、ラースはバルドロス城へ突入するときのことを想像した。
あかねの仲間がバルドロス帝国の連中に攫われている以上、こちらがバルドロス城に攻め入ることは容易に想像がつくはずだ。そうなると、バルドロス帝国は総力を挙げて迎え撃つに違いないと、ラースは黙考する。クレス曰く、十五年前には千近くもの兵がバルドロス帝国に所属していたそうなのだから、例え戦争によって戦力の大半が削がれていたとしても、バルドロス帝国騎士団との戦闘はかなり分が悪い勝負となるだろう。
しかし、だからといってラースは弱音を吐く気にはならなかった。自分達よりも、先に一人でバルドロス城へ潜入しなければならないあかねの方が、不安な思いをしているに違いないと考えたからである。それでも弱気な素振りを一切見せなかったのは、今更怯えていても仕方がないと、あかね自身が覚悟を決めたからなんだと、ラースは察した。一目散に寝て明日に備えたのも、恐らくはそういった決心の表れなのだろう――。俺もあいつを見習わなきゃなと、隣のベッドの上段を見上げながら、ラースは小さく呟いた。
「やってやる。セラのためにも、あかね達のためにも、そしてバルドロス帝国の連中に殺された皆のためにも。戦力差があるくらいで引き下がってたまるかよ」
自身の決意を右の握り拳に込め、また緩めると、ラースは静かに目を閉じた。夢の中で『何か』に襲われるかもしれないという懸念は残っていたが、それでももう、深い眠りにつくことに躊躇いはなかった。
* * *
玄関から聞こえる何人もの鉄靴の足音で、ラースは意識を取り戻した。体を起こして玄関の方を振り向くと、扉の隙間から廊下の明かりが忍び込んでいるのが見えたので、既に夜が明けてしまったのだとラースは気付いた。
次に横を見てみると、丁度セラが目を覚ます最中だった。ぴんと寝癖を立てたまま、虚ろな目を擦りながらきょろきょろしていたが、先にラースが起きていることに気付くと、気恥ずかしそうに頬を赤らめ、寝癖を手で隠しながら「お、おはようございます」ともじもじ言った。
「おはよう、セラ。今何が起こっているのか兄貴に訊いてくるから、少しだけ待っていてくれないか?」
微笑みながらラースが言うと、セラは寝癖を人差し指で押さえながら「分かりました」と頷いた。まだ寝ている様子のあかねを尻目に、ラースは早足で玄関に向かった。
扉から半身だけ出して廊下を覗いてみると、甲冑に着替えた大勢の騎士でごった返していた。緊張感のある顔で稽古場の方へ走っていくのを見て、朝稽古か何かだろうかとラースは想像した。騎士達がラースを横切る途中、クレスの弟だということもあってなのか、何人かの兵がラースに会釈してきたので、ラースも軽く頭を下げながら決まりの悪そうな顔を浮かべた。
「あれ。もう起きていたのか? ラース」
昔から聞き慣れた声に気づき、ラースが顔を上げると、クレスと部下のビックス、ウェッジが、三番隊の寝室から出てきたところだった。それとほぼ同時に、右隣の寝室からカルロス隊の三人が姿を現した。クレス隊、カルロス隊が廊下に出た頃には、彼らより遅れるわけにはいかないからか、既に他の騎士達の姿は見えず、廊下は静寂としていた。
「騎士達の足音で目が覚めてさ。これから朝稽古か何かあるのかなって」
上半身だけ覗かせたままラースが問うと、クレスは「ううん」と首を振り、答えた。
「確かにいつもは朝稽古の時間だけど、今回は特別だよ。何と言っても、今日はバルドロス帝国の悪事を暴くための重要な日だからね。これから、稽古場で騎士団長からの指令を受けるところなんだ」
昨日、クロム国王がラース達に協力すると言ってくれたのを思い出し、ラースは「そうか」と納得した。アルテリア帝国騎士団が総力をあげて支援してくれることを思うと、これほど心強いことはなかった。
「まぁ、お前らには後から説明するつもりだったから、まだ寝ていてもらってもいいんだけどよ。せっかくなら一緒に来るか? そっちの方が話も早いだろうしな」
カルロスの提案に対し、ラースは返事を躊躇した。自分一人なら特に問題ないのだが、もし三人で行くとなると、少なくともまだあかねは寝ている様子だったので、今すぐ同行するというわけにもいかなかった。
「ちょっとだけ待ってくれないか、あかねが起きているか見てくる――」
そう言って寝室に引き返そうとしたが、どうやらその必要はなかったようだ。突然、ラースの後ろからあかねも顔を覗かせながら、むすっとした表情でカルロス達に言った。
「お姉ちゃん達を助ける大事な日に、寝ているなんて浮かれたことできるわけないじゃん。セラが寝癖を整え終えたら、あたし達もすぐ行くよ」
そして、セラとあかねが支度を済ませるなり、一行は早速稽古場へと向かった。稽古場では騎士達が既に整列して待機しており、ラース達はカルロス隊を先頭に、その左に一列で並んだ。
ジュード騎士団長が姿を見せたのは、それから間もなくのことだった。真紅のマントをなびかせながら毅然と歩き、ラース達の前に立つと、ジュード騎士団長は咳払いを挟むこともなく、口火を切った。
「昨日、カダルナ港であった事件を知っているか? 犬に酷似した生物が、カダルナ港の住民を見境なく攻撃したという事件だ」
騎士達は返事の代わりに大きく頷いた。十五年前の戦争以来、一般民が危険に晒されるような事態はほとんど起こらなかったため、カダルナ港での事件は騎士達のみならず、世間にとっても衝撃的な内容だった。
「現場に居合わせていたクレス達の捜査により、あの事件は、バルドロス帝国の仕業によるものであることが判明している」
ジュード騎士団長の言葉に騎士達が息を呑む一方で、ラース達はゼブラに受けた仕打ちを思い出しながら、深刻な顔で話を聞き続けた。
「他にも、世間に公表されていないもので、バルドロス帝国が及んだ犯行を数件確認している。バルドロス帝国をこのまま野放しにしていれば、いずれ『あの頃』と同じ惨事が繰り返されかねない──そうクロム国王は判断した」
一息ついて、ジュード騎士団長は言葉を続けた。
「今日、総動員してバルドロス帝国に突入する。バルドロス帝国の悪事を余さず暴いた上で、バルドロス国王とその一味を捕獲し、我々の手で法の下に裁く」
ジュード騎士団長の言葉に、ラースは決然たる顔で頷いた。セラも、あかねも、クレスも、カルロスも、そして部下の騎士達も、同じ面持ちで闘志に満ちた目をジュード騎士団長に向けた。
ラース達の目に頼もしさを覚えながら、ジュード騎士団長は他の騎士達の顔を覗き見た。ラース達と同じように、闘志を見せる騎士は多くいたものの、その一方で不安を隠せない様子の騎士も少なくないようだった。
──自分が殺されるかもしれない状況で、恐怖を抱いてしまうのは当然のことだ。中には、十五年前の戦争を経験していない兵だっているのだ──そう部下の心中を察しながら、ジュード騎士団長は労わるように口を開いた。
「……今回の任務は、バルドロス帝国騎士団と全面衝突することになる。『あの』戦争と同様、我々の命を保証することはできない。だからまず、皆にこの任務への参加を問おう。
皆、自分の命は大事にしてほしい。特に、大切な仲間、恋人、家族がいる者は、自分だけの命ではないことを重々理解した上で、任務に参加するかどうかを今一度考え直してくれ」
ラースは不可解そうに眉をひそめたが、右隣にいる騎士の不安げな顔を見て、ジュード騎士団長の意図を理解した。俺がセラを心配するのと同じか──と心の中で呟きながら、ラースは振り向いて背後にいるセラに言った。
「お前にも、もうくどいくらい確認していることだとは思うけど」
そんなことないとばかりに首を振り、セラは曇りのない目でラースに言った。
「私にとって大切な仲間が、命を懸けて戦おうとしているんです。私だって、皆さんの力になりたいです」
「……そっか。ありがとな、セラ」
ラースは口元を緩めて礼を言った。
セラの一言に感化されてか、怯えていた騎士達も、一人、また一人と、バルドロス帝国に立ち向かう覚悟を決めていった。ジュード騎士団長が再び見回したときには、この場から去ろうと考える者は誰一人としていなかった。
「──皆が勇気を示してくれたこと、感謝する」
そして、すまない──。一瞬、ラースは騎士団長がそう自分達に謝ったような、そんな気がした。両目を擦って凝視したときには、ジュード騎士団長は既に任務の説明を再開していた。
* * *
ジュード騎士団長の指示を一通り聞き終えた後、ラース達、クレス隊、カルロス隊の一行は、アルテリア帝国を離れて足早にバルドロス帝国へと向かっていった。
「……それで、あの騎士団長が言っていたことの確認なんだけど」
後頭部で手を組んで、野原を道なりに歩きながら、あかねは隣にいるクレスに言った。
「アルテリア帝国の騎士達はあっちの都市で待機して、まずはあたし達がバルドロス城に乗り込む。で、爆弾を設置して、点火したタイミングで、他の騎士達も救援に来てくれるんだったよね?」
クレスは頷いて答えた。
「うん。まずは目眩しとして、ジュード騎士団長達はハインブルクに向かってもらう。ジュード騎士団長は英雄と呼ばれるほど強大なお方だから、バルドロスの連中は否が応でも騎士団長達から目を離せなくなるだろう。その間に、僕達でバルドロスへ攻め入る準備をするんだ」
すぐ近くを歩いていたラースが、足を止めることなく、後ろの彼方に見える都市の景観を眺め見た。
アルテリア帝国から出て、イーストに深く刻まれた亀裂を横切り、そこから先の分かれ道を左へ向かうと、ハインブルクに到着する。クレス曰く、ハインブルクは発展都市と呼ばれる所であり、あらゆる分野の最先端技術がハインブルクに集結しているらしい。ラースが目を凝らしてみると、お互いに背比べしているかのように、百棟近くものビルが密集して並び立っているのが見えた。
そのハインブルクにジュード騎士団長達が向かっている間に、自分達は一足先にバルドロス帝国へと潜入する──それがアルテリア帝国側の最初の作戦だった。ラースが前方に視線を戻してみると、既にバルドロス帝国も目に見える所まで来ていることが分かった。緑の国旗がはためく大きな城こそ見えたものの、その付近の城下町は防壁に隠れてしまっており、なんだかアルテリア帝国の景観よりみすぼらしく見えた。
「けど、普段の甲冑を着ていたら、バルドロス帝国の騎士達に自分達がアルテリア帝国の人間だってすぐばれてしまう──」
クレスの方に視線を移しながら、ラースが言った。
「だから、俺達は観光客を装ってバルドロス帝国へ行く、と。……その似合わねえ伊達メガネも、素性がバレないようにするための変装ってわけか」
「からかわないでくれよ、ラース」
クックッと意地悪げに笑うラースに対し、クレスは中指でメガネのブリッジを上げながら、むすっとした顔で言った。
無地の白い帽子に黒い伊達メガネ、チェックのシャツに安っぽいジーンズと、世間に無頓着であるかのようなダサい服装が全く似合わないとラースは思ったが、普段の格好良い兄とすぐに結びつかない辺り、変装としてはこれ以上ない出来なのかもしれないと、にやにやしながらも考え直した。一方のカルロスの方はというと、赤いニット帽に大きなサングラス、黒いワイシャツにダウンベストと、これから釣りにでも行くかのような格好をしていた。
「セラちゃん達のは、結構おしゃれな格好だよな。城下町で買ってきたのか?」
カルロスの問いに対し、セラは上機嫌に首を振った。
長袖の白いニットに藍色のハイウエストスカートと、シンプルな格好ながら、それがセラの清純なイメージに似合っていた。多分、トーマスがこれを見たら失神してしまうんじゃないか……とラースは想像した。一方であかねは、ポニーテールを解いて紅色のニット帽を被り、モッズコートに横縞模様のミニスカートを合わせ、下にはニーハイブーツと、かなり攻めた服装をしている。
「アンさんから、お下がりの服を頂いたんですよ」
そう言って、セラは改めてカルロスの部下の一人に礼を言った。あかねも珍しく文句を言わない辺り、今の服装は満更でもないようだった。
ラースが初めて会ったときは、兜を被っていたので分からなかったが、カルロスの部下の一人はどうやら女性だったようだ。大人びた顔立ちで、赤毛の長い髪をヘアゴムで結んでいる。もう一人の男は女性と違い、ビックスやウェッジのようにまだ子供っぽい顔立ちをしていた。しかし、パーマがかかった髪だけは、女性と同じ赤い色をしていた。
「そういえば、ラースさんには自己紹介がまだでしたね」
視線に気づいたのか、女性がラースに微笑みながら言った。
「私は、アルテリア帝国騎士団の二番隊隊員で、アンって言います。こっちは、同じ二番隊隊員で、弟のユンって言います」
「あぁ、やっぱり姉弟だったんだな、二人共」
ラースが納得したように頷くと、「ラースさんとクレスさんと同じです」と、弟のユンがにっと笑って言った。
「皆、そろそろ気を引き締めた方がいいであります。バルドロス帝国の総門が見えてきたであります」
ビックスが緊迫した面持ちで言った。ラース達が前を向くと、城下町の門の前に、バルドロス帝国の騎士二人が見張りで立っているのが見えた。
総門の前まで辿り着いたとき、バルドロス帝国の騎士は警戒するかのように、ラース達を疑い深そうに見回した。カダルナ港であれだけ執念深く追っていたら、さすがにバルドロス帝国の連中も自分達を警戒してくるかと、ラースは苦笑いした。見張りの騎士二人を横切ろうとすると、案の定、ラースは見張りの一人に呼び止められてしまった。
「そこの者、止まれ。手配書にある人間と似ているな……」
そう言って、見張りの兵は強引にラースを自分の方に向かせ、そして手配書を取り出しラースの顔と見比べ始めた。田舎っぽい服を着ていたセラや、ニンジャの服しかないあかねと違い、無難な服を着ていたので、このままでもいいかなとラースは高を括っていたが、せめてクレスのように、何か帽子を被るくらいのことはしておけばよかったと後悔した。
このままでは、いずれ自分がお尋ね者のラース・オルディオであることがばれてしまう。城下町にすら入ってない時点で、皆には迷惑をかけられない――そう思い、ラースは意を決して、見張りの兵に向かって口を開いた。
「僕達、バルドロス帝国の観光に来たんです。バルドロス城の景観が好きで、遠くからでも一度見ておきたくて」
突然、そんなことをラースが物腰柔らかく言い出すので、一同は驚きのあまり目を丸くした。子供の頃に長い間共に過ごしてきたクレスも、国王にすらまともに敬語を使わないラースが丁寧な言葉遣いをするとは思わず、雷を打たれたかのようにきょとんとしていた。
「そ、そうか。……ラース・オルディオは気性の荒い人間だと聞く、これほど棘のない人間のはずがない……」
ラースの気持ち悪いほど柔和な笑顔を見ながら、見張りの騎士二人はひそひそ話を始めた。そして、ついに目の前の人物をラースでないと判断したのか、見張りの騎士は手配書を懐にしまい、退いて城下町への道を開けた。
「分かった。だが一応言っておくが、貴様らが踏み入っていいのは城下町の中だけだ。城に少しでも向かおうとすれば、貴様らの命はないものと思えよ」
そう言って脅す見張りの騎士に対し、ラースは「忠告ありがとうございます」と生真面目に礼を言った。見張りの騎士を尻目に総門を通過し、城下町に辿り着いたとき、ラースは突然、あかねから後頭部にニット帽を叩きつけられた。
「演技だとしても気持ち悪いんだよ! あと、あんたもバルドロス帝国の騎士達に警戒されているんだから、帽子くらい被れよ。あたしは髪を解いているから少しくらい大丈夫だから」
「あぁ……サンキュー、あかね」
ラースがニット帽を拾い上げながら礼を言うも、あかねは「気安く名前を呼ぶな」と言ってつんとそっぽを向いた。緊張が解れ、皆にもクスクスと笑われる中、ラースは舌打ち混じりに頬を赤らめてニット帽を被りながら、改めて目の前の景色を見回した。
バルドロス帝国に着く前からどことなくみすぼらしいと感じていたが、それは決して防壁に隠れていたからというわけではなかったのだと、ラースは理解した。アルテリア帝国と並ぶ二大帝国だというのに、バルドロス帝国の城下町はリバームルよりも狭く、店も少なく、そして何より人が見当たらない。決して誰もいないわけではなかったが、どの顔を見てもどことなくどんよりとしており、城下町から全くと言っていいほど活気を感じられなかった。巡回兵とすれ違う度に、住人が皆びくびくと怯えている辺り、先程の見張り兵のように、住人達は普段から騎士に脅されているんだろうなと、ラースは眉間にしわを寄せた。
まずは宿屋を探そうと、ラース達はマス目状に並ぶ店を一通り回っていった。その途中で、バルドロス城へと続く道を見つけたのだが、そこにも見張りの兵が二人いた。
少し観察してみると、見張りの兵の一人はかなりの女たらしであるようで、道行く女性一人ひとりを呼び止めては、舐めるような視線を向けながら口説いていた。少しでも拒めばただでは済まないと悟っているのか、女性達は恐怖で泣きそうになりながら、騎士に対して必死に愛嬌を振りまいていた。
その後、宿屋を見つけて、ラース達は男部屋と女部屋の二部屋を借りた。しかし、二部屋を同時に使うのはクレス達が騎士の服に着替えるときだけで、ラース達はまず一つの部屋に集まり、バルドロス城に乗り込むための作戦会議を始めることにした。
まず、クレスが背中のバッグから紙とペンを取り出し、部屋の中央に置いてあるテーブルに広げた。そして、簡単にバルドロス帝国の城下町の見取り図を描き始めたが、その途中で、クレスは突然驚いた顔をしてピタリと手を止めた。セラとカルロス隊のアンが、二人して珍しく憤りを露わにしているのに気付いたからだ。
ウェッジが尋ねてみると、先程見かけた女たらしの見張り兵が許せないとのことだった。あの騎士は自分達女のことを軽視している、一発でも鉄拳制裁を加えないと気が済まないと、本来の目的と比べると些細なことで二人は結束していた。
「まぁでも、あの見張り兵達をどうにかしねえと、バルドロス城に入れねえのは確かだろうからな。何かいい作戦はねえかな……」
「仮にあの見張り兵を出し抜いたとしても、城の中にはもっと多くのバルドロス兵がいるでしょうからね。城内に入ってからのことも含めて、良案を考えないと……」
そう言ってクレスとカルロスが頭を抱えるのに対し、ラースが手を挙げて発案した。
「それなんだけど、あかねが最初にバルドロス城へ乗り込むんだろ? セラから聞いたんだけど、あかねは忍術ってので別の何かに姿形を変えることができるらしいから、それでバルドロス帝国の騎士に変身すればいいんじゃないかな」
クレスは感嘆の声を上げ、あかねに「本当にそんな技があるんだ?」と確認した。自分のことを意図せずセラ以外の人間に知られるのが気恥ずかしかったのか、あかねは頬を赤らめながら「まぁ、できないこともないけど」とぶっきらぼうに答えた。
「でもラースさん、だからといって無闇に騎士に変身するのは危険です」
カルロス隊のユンが、乗り気になっているラースをせき止めるように言った。
「バルドロス帝国騎士団がどうなのかは分からないけど、少なくともアルテリア帝国騎士団では隊ごとに一組で行動するのが基本で、隊員クラスの騎士が一人で長時間行動することはあり得ません。そして、隊員クラスの騎士は兜を被って任務にあたることが義務付けられています」
ラースは唸り声を上げた。
「つまり、甲冑を着た格好だと、勝手に単独行動をしていると見なされて、注目を集める可能性が高い。だから、変身するなら隊長クラスの兜を被っていない騎士に変身した方がいいってことだな?」
「そういうことです」
ユンは頷いて返事した。兜さえ被れば、どんな顔をしていても城内に潜入できるはずだとラースは思ったが、ユンの言うことが本当なら、隊長クラスの騎士を探し出して、その騎士に成り代わる必要があると考え直した。しかも、あかねが騎士に変身している間、当然、変身した騎士本人に帝国内をうろついてもらっては困るので、自分達の手で身動きが取れないように縛り付ける必要もあるだろう。
兜を被っていない、そして、縛り付けるために自分達のいる方へ違和感なく誘い込める人間……そんな騎士がいたかなぁと、ラースは額に指を当てる仕草をしながら、バルドロス帝国に入ってからの記憶を一つひとつ辿ってみた。そして、適任者が一人いたことを思い出した。バルドロス城へ続く道の前で見張りをしていた、女たらしで、頭の悪そうな騎士がいたではないか。
* * *
「へへっ、これで二人目の女だぜ。今夜は退屈せずに済みそうだ」
バルドロス城へ続く道の前で、兜を被っていない不細工な顔の騎士が、女性達から聞き出した住所のリストを眺めながらだらしなくにやついた。
「隊長。いくら今日のナンパが上手くいったからって、前みたいに任務時間中に持ち場から離れるのはよしてくださいね?」
呆れたと言わんばかりに部下の騎士がいさめると、女たらしの騎士は不細工な面をタコのように真っ赤にしながら、部下の脇腹を義足で思い切り蹴飛ばした。
「てめぇ、この俺に指図できる立場か、あ? 俺の部下なら、俺が自由に遊べるよう尽くしやがれ!」
女たらしの騎士の醜い暴言に対し、部下の騎士は地面に腰を付けながら、何も言わず兜越しに睨みつけた。そんな部下の私怨など知る由もなく、女たらしの騎士はよだれを垂らしながら、きょろきょろと次のナンパ相手を探し始めていた。
「さっきの人達と遊ぶだけで、本当に満足なのかしら?」
突然、騎士二人の横で声がした。少しばかり生意気なその声に、女たらしの騎士は額に血管を浮かべながら振り向いた。しかし、声のした方を見てみると、女たらしの騎士は目の色をすぐに変えてしまった。
現れたのは、清楚な格好をしたショートカットの少女――セラと、大人っぽい顔立ちをした赤髪の女性――アンの二人だった。女たらしの騎士は二人をすぐ気に入ったらしく、ふんふんと鼻息を荒くしながら、二人の前にずんずんと駆け寄った。
「わ……私達なら、その……あなたのことを、もっと楽しませてあげられると思いますよ?」
耳を真っ赤にしながらも、セラはアンに引けを取らないよう、必死に大人っぽい振る舞いを見せながら、台本を読み上げているかのような片言口調で言った。どうやらセラの誘惑は効果てきめんだったらしく、女たらしの騎士は手にしていた女性の住所リストを迷いなく放り捨て、ぶんぶんとゴリラみたいに首を上下に振りながら言った。
「今! すぐにだ! この俺を楽しませてくれ!」
「ふふっ、分かったわ」
嫌悪感を抑えるために背中で握り拳を固めながら、アンはにこやかな笑顔を向けて返事した。
「じゃあ、あそこの路地裏に来てくれるかしら。あそこで私達と良いことをしましょう?」
「おうともよ!」
女たらしの騎士は二つ返事で快諾した。そして、部下の騎士に「お前はここで待っていやがれ」と吐き散らすように命令すると、女たらしの騎士はセラ達よりも先に、アンが示した路地裏の中へと入っていった。
「へっへっへ……」
路地裏の奥まで進んだところで、女たらしの騎士は振り向きながらセラ達に向かって言った。
「二人共、可愛い顔をしてなかなかやらしいじゃねえか……最高だぜ。さあて、どんな風にこの俺を楽しませてくれるんだ……?」
しかし、しばらく待ってみても、セラ達は一向に路地裏へ入ってこない。さすがに違和感を覚えた騎士が元の場所に戻ろうとしたとき、突然背後から何者かの声がした。
「悪いが、俺の大事な部下に手を出させるわけにはいかねえなあ」
「だ、誰だお前!」
騎士が驚いて振り向くと、一回り図体の大きい髭面の男――カルロスが、腕組みしながら険しい顔で見下ろしていた。怯んで数歩下がると、騎士の背中に、別の誰かの固い胸部とぶつかった。背後に目を向けると、今度は茶色い短髪の青年――ラースが、左手を腰に当てながら立ち塞がっていた。
「それと、セラの方も止めておけ。あいつにはもう婚約者がネムヘブルにいるんだ。お前みたいな奴が割り込んでいいような相手じゃねえよ」
ラースの見下した物言いに、騎士は頭に血を上らせて剣を引き抜いた。そして、「ぶっ殺してやる!」と発狂しながら、目の前にいるラースに向かって斬りかかった。
しかし、ラース達にとって、女たらしの騎士は剣を抜くまでもない相手だった。騎士が剣を振り下ろす前に、ラースは素早く右足を振り上げ、騎士の両手から剣を弾き飛ばした。騎士の剣は宙を舞い、カルロスの頭上で降下し、落ちる前にカルロスが右手を上げて剣を掴み取った。
「……まさか、ここまで簡単に引っかかるとは思わなかったな、ラース?」
騎士の剣を放り捨てると、ここでようやく、カルロスとラースはにやりと意地悪げに笑みを浮かべた。そして、騎士が悲鳴を上げる間も与えることなく、二人は騎士の顔面目掛けて、左右から鉄拳のサンドイッチをお見舞いした。
女たらしの騎士が泡を吹いて失神してから、ラース達は路地裏に集まって、次の作戦に取り掛かった。アンとセラには見張りという名目で外の方を向かせ、ラース達は最初に騎士の身ぐるみを剥いで、パンツ一丁の状態にさせた。それから、既にニンジャの服に着替えたあかねを呼び、身ぐるみを剥いだ騎士と同じ格好に変身するようラースは促した。
「変化するにはちゃんと対象を観察しないといけないって、なぎさが言っていたなぁ。あぁ、やだやだ……」
心底うんざりするような声を上げながら、あかねは騎士を二、三回ひっくり返して観察し終えると、早速印を結んで変化の忍術を使った。すると、あかねの周囲に煙が巻き起こり、煙が晴れると、あかねは目の前で失神している騎士と瓜二つの姿になっていた。
あかねの忍術に感心する間もなく、ビックスとウェッジ、ユンの三人が、騎士から剥いだ義足や鎧、兜などを掻き集めると、あかねはそれらを受け取り、三人に教えてもらいながら一つひとつを身につけていった。「重すぎだろ」などとぶつぶつ小言を言いながら、最後に自分のウエストポーチを装着すると、クレスが前に出て、手にしていた爆弾入りの袋をあかねに差し出した。
「君が爆発を起こした時点で、僕達はすぐバルドロス城へ向かうよ。けど、ハインブルクに待機している騎士団長達は、すぐに駆け付けられるわけじゃない。……何よりも無理をしちゃ駄目だよ。僕達との合流が難しそうなら、まずは自分の命を優先するんだ」
「そういうの、もう聞き飽きたって」
姉を救い出そうとしたときに、仲間の睦月なぎさから言われたことを思い出しながら、あかねは袋をウエストポーチにしまって言った。
「セラも来てくれるのなら、なおさら死ぬわけにはいかないもん。でも、まずはあたしの仲間を救出するのを優先させてよね」
クレスはこれ以上何も言わず、代わりに口元を緩めて力強く頷いた。皆に「行ってくる」と告げ、セラに言葉の代わりにハグを交わすと、あかねは深呼吸をし、決意に満ちた顔で通りの方へ走っていった。
「おい! 何で俺がもう一人ここにいるんだよ?」
あかねがバルドロス城へ向かう直前に目を覚ました女たらしの騎士が、あかねの走っていった方を指差しながら喚き声を上げた。ラースが騎士の顔面を蹴り飛ばして再び失神させると、続けざまに「俺達も支度しよう」とクレス達に呼びかけた。皆は返事の代わりに頷き、セラもアンに目を覆われながらも頷いてみせた。
* * *
「もうお楽しみは終わったんですか?」
騎士の持ち場にあかねが戻ってみると、騎士の部下がイライラしながらあかねに尋ねてきた。
――まずは、この見張り兵を上手くごまかさなければならない。部下の立場だから言いくるめるのは難しくないかもしれないが……適当な言い訳が果たして通るのだろうか。
「あの女達はもう構わねえ。……その、少し野暮用を思い出しちまってな」
「はあ」
騎士の部下は間の抜けた返事をしたが、あかねは構わず言い訳を続けた。
「だから……その、今からバルドロス城へ向かうから、お前はここで見張りを続けていろ。そのうちに戻る」
「分かりました……」
ぽかんとしながらも、騎士の部下はあかねの指示にしぶしぶ従った。下手な芝居だったと恥ずかしくなり、あかねは逃げるようにバルドロス城へ走っていった。
バルドロス城へと続く道を駆け抜けながら、あかねは辺りを見回した。バルドロス城の前には庭園が広がっており、イーストでは見かけない花などが数多く飾られていた。そして何より、庭園は城下町の半分を占めるほどに広かった。バルドロス国王が、城下町の方に目もくれず、自分の周辺にばかり金を使っていることが窺えて、あかねは少しばかり憤りを覚えたが、何で自分が人間達のことで腹を立てているんだと、すぐに首を振った。
再び前を見てみると、バルドロス城の正門が目と鼻の先にあり、その脇で兜を被った騎士が二人、見張りで立っているのが見えた。正門の前に立つと、見張りの騎士二人が、手にしている槍を交差して遮りながら言った。
「フロッグ殿! 貴殿は今、庭園前の見張りを任されているはずです!」
騎士二人が険しい口調で言ったが、あかねは動じることなく二人を交互に見た。
――兜を被っているということは、この騎士達は自分よりも下の立場だ。例え信用されていなくても、隊長クラスの自分が無理に命令すれば、この騎士二人は逆らうことができるだろうか?
「俺に指図するっていうのか、てめぇ?」
先程、騎士が部下に取っていた態度を思い出しながら、あかねは醜い騎士をノリノリで演じた。
「俺は野暮用があって来たんだ。任された任務の一つだ! 分かったら下らねえこと言ってねえで、さっさとその門を開けろ!」
見張りの騎士二人は文句を言いたそうにしていたが、結局何一つ反論することはなかった――思った通りである。槍で遮るのを止めると、騎士達は無言のまま、槍を握っていない手で正門をゆっくり押し開けた。ちろりと舌を出しながら、あかねは正門を潜り抜けて城内に入っていった。
城内に入ると、緑のカーペットが敷かれた広い玄関ホールに差し掛かった。奥には大理石でできた上り階段があり、上り階段の裏をこっそり覗いてみると、地下へと続く階段を発見した。しかし、下りてすぐの所にまた見張りの騎士が立っていたので、あそこはあいつらに任せた方がいいかなと、あかねは割り切った。
玄関ホールを見上げてみると、三階までの廊下が見えたのだが、玄関ホールにある上り階段は二階までしか続いていないようだった。三階に向かいたいなら別の階段を探さなきゃいけないのかと、あかねは気落ちしたが、各フロアをじっくりと探す必要があるのはかえって好都合だと、あかねは考え直した。
姉を助けようとした他の仲間達は、元々バルドロス帝国の連中にとっては用のない存在だったため、恐らくは地下牢にでも閉じ込められているのだろう。だが、姉の方はバルドロス帝国の連中が欲しがっていたので、連中は姉を、地下牢とは別の特別な場所に閉じ込めているに違いない――そうあかねは踏んだ。
一階を探してみようかとあかねは思ったが、玄関ホールを見渡してみる限り、メイドやコックなどの召使いしか見かけなかったので、一階は関係なさそうだと判断した。急ぎ足で二階へ向かう途中、あかねは正門にいた騎士達の言葉を思い出し、思わずクスリと笑った。
――今、変化しているこの騎士の名前は、フロッグというらしい。卑しい顔にお似合いの、何と残念な名前だろうか……。これから強大な敵に立ち向かう前の、小休止だ。
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