三
イーストの南東の外れに、実際に足を運んでみないと見つからないほどの、小さな森がある。その森の奥で、ニンジャと呼ばれる者達が、人目を避けてひっそりと暮らしていることを、世間は知らない。
彼らニンジャは、人々に干渉せずに生きてきた上で、独自の文化を築き上げていった。畳、襖、竈、厠、石風呂など、ニンジャでない者達にとっては見たことも聞いたこともない物ばかりだろう。自分達の住まう村落を、ニンジャ達は「シノクニ」と呼んだ。
ニンジャ達は、炊事、食料調達、薪や水の採取など、それぞれの役割を一人ひとりが担い、協力して生活をしていた。今のところ、ニンジャは全員で七人しかいない。なので、一人でも欠けてしまうと、全員に迷惑がかかることになるのだが……今回、そういうわけにもいかなくなった。
ニンジャの一人──卯月れなが、風邪を引いてしまったのだ。
今朝、畳部屋で、布団を敷いて寝ている女性のもとに、五人のニンジャが集まっていた。この、寝込んでいる女ニンジャこそが、卯月れなである。茶髪のミディアムボブで、一人を除けばニンジャの中で最年長の、姉のような存在だ。
「いやぁ、ゴメン皆。まさか私が風邪にやられるとは……」
熱で汗をびっしょり掻きながらも、れなは無理に笑って言った。
「気にするな。この頃、炊事も食料調達もずっとお前にやってもらっていたからな」
そう言って、一人の男が、洗面器に入った水でタオルを絞り直し、れなの額に乗せた。この、短髪でがたいの良い男は、文月りゅうという名のニンジャだ。年齢はれなと同じ二十三歳で、れなが姉ならば、りゅうは兄貴のような存在だった。
「そうです! ですから、れなさまは気にせず休んでいてください!」
れなの顔の汗をハンカチで拭いながら言う、この低めのツインテールの女の子は、霜月かすみという名のニンジャ。介抱してくれるりゅうとかすみに対し、れなは「ありがとうね」と笑って礼を言った。
「それにしても、れな姉が病気だなんて珍しいッスよね~」
後頭部で手を組みながら言う、こじゃれた髪型をした男の名は、長月あきら。
「同感! ていうか、れなが体調を崩すの初めてなんじゃない?」
そして、その隣でうなずくポニーテールの女ニンジャが、水無月あかねである。
「おっ、やっぱあかねちゃんもそう思うッスか?」
あきらの言葉を聞き、あかねはむっとした表情になって、怒鳴った。
「あのさぁ、あたしのことを『ちゃん』付けで呼ぶの止めろって、何度も言ってるだろ? あたしの方が一つ年上なのに、何でかすみに対してと同じ呼び方なんだよ!」
あきらがぶうたれながら言葉を返した。
「え~。愛嬌があっていいじゃないッスか~」
「良くない! 下に見られている気がする!」
「お二人共! 静かにしてください!」
かすみの大声が響き、二人の口論はぱたりと止まった。気付けば、かすみはきっとなって二人を睨み付けていた。
「れなさまが安息なされているというのに……れなさまの頭に響いてしまったらどうするおつもりなのですか!」
かすみのお叱りを聞き、二人は恐れ入って縮こまってしまった。ちなみに、かすみはニンジャの中で最年少の十四歳なのだが、あかねもあきらも、このかすみには頭が上がらないのである。
「話を戻すぞ」
りゅうが、話の口火を切った。
「見ての通り、今れなは満足に動ける状態じゃない。れなの風邪が治るまでの間、炊事と食料調達、この二つを誰かが代わりにやらなければならない」
「あの……りゅうさん」
すると、一番後ろに座っていた女性が、小さく手を上げて言った。
「炊事も、食料調達も、元々はれなさんと私の役目です。だから、二つとも私が請け負います」
「りん。お前に任せるつもりはない」
りゅうが口元を綻ばせ、そしてきっぱりと断言した。
「りん姉は今日が大事な日じゃないッスか」
「そうですよ! りんさまはなぎささまとの決闘に備えなくては!」
りゅうに続いて、あきらとかすみが説得するも、その女性は気が気でない様子のままだった。
この女性の名は水無月りん――水無月あかねの実姉だ。年齢はれなやりゅうより二つ下の、二十一歳。だがこの中で──あくまでも、この場にいる六人の中でだが──一番の実力を持つニンジャである。
彼らニンジャは、両手で『印』を結ぶことによって、『忍術』を発動することができる。忍術には、自身の分身を作り出す忍術や、姿形を別のものに変化させる忍術など、様々あるが、水無月りんはそのどれをやらせても上手かった。熟練したニンジャは、火・水・土・木・雷の五つの力を使いこなすことができるのだが、今この場にいる六人の中でそれが可能なのは、りんただ一人だった。
ただ忍術が上手いだけではなく、りんは誰もが認める容姿端麗の美女でもあった。上品な顔立ちに、均整の取れた身体。風にはらはらとなびく、磨かれたロングの黒髪は、彼女の魅力をより一層引き立たせる。彼女の美貌は、ニンジャのみならず、そうでない者達をも虜にすることだろう。
そして何より──りんは誰よりも真面目で、誰に対しても優しかった。全員で行う忍術の修行を、最後まで残ってやっていたのも彼女だし、あきらやあかねが忍術に失敗したとき、手取り足取り教え、成功するまでずっと付き合ってくれたのも彼女だった。強くて、綺麗で、格好よくて、優しくて……ニンジャの皆は、そんな彼女のことが好きだった。
「でも、あきら、かすみちゃん。今は自分よりれなさんのことの方が優先よ。それに、数時間くらい、私は大丈夫だから……」
「りん。それは私達が望んでいることじゃないよ」
りんの言葉に対し、れなが首を横に振った。そして、れなはにっこりと穏やかな笑みを浮かべ、りんに言った。
「私達が望むのは、りんがなぎさ様に勝って、有終の美を飾ることだよ。そのためにも、私達は全力でりんを支えるって、決めたんだから」
れなの言葉を聞き、りんは嬉しさと気恥ずかしさとで、頬をぽっとピンク色に染めた。
「できれば」
笑みを崩すことなく、れなは言葉を続けた。
「今すぐにでも、今日の決闘のために特訓を始めてもらいたいんだけどなぁ」
「そうだよお姉ちゃん! 時間がもったいない!」
途端、あかねがそう言って立ち上がり、外へ引き連れようと、座ったままのりんの腕を引っ張った。
「早く、昨日の続きをやろうよ! あたし、今日もお姉ちゃんの特訓に付き合うからさ!」
あかねの言動は、傍から見れば、善意の表れであるように見えるが……あかねの魂胆はりゅうにはお見通しだった。
「あかね、それはれなの仕事を代わりにやらない口実のつもりか?」
「うっ……」
図星を指され、あからさまに「ばれた」という顔をするあかねに、一同はどっと笑った。りゅうが「全く……」と呆れ返りながらも、話を続けた。
「……まあいい。あかねがりんのサポートで忙しいというのは事実だ。となると、今手が空いているのは……俺と、あきらと、かすみの三人だな」
りゅうは、あきらとかすみ、それぞれに目を向けた。
「お前達はまだ簡単な物しか料理を作れないだろうから、炊事は俺がやろう。その代わり、食料調達の方は、お前達のどちらかにやってもらう」
「げっ、一番大変なヤツを……」
りゅうの言葉を聞き、あきらはとても嫌そうな顔をしながら、呟いた。
彼らニンジャは、畑を耕して野菜、穀物を蓄えるのだが、魚などの耕作で得られないものは、商人のいる帝国に行って集めていた。しかし、金を払って買うのではない。人々に干渉しようとしない彼らは、食料を『買う』のではなく、商人から食料を『奪い取る』……。つまり、ニンジャ達にとっての食料調達とは、とても神経を使う仕事なのだ。当然、城下町への潜入がまともにできなければ話にならず、今のあきらにとって、食料調達の仕事は難題だった。
焦りを募らせるあきらだったが、りゅうはそんなあきらの心情を汲み取ってくれた。
「あきら。お前はかすみよりも身を隠すのが下手だったな。食料調達はやらなくてもいいぞ」
「ほ、本当ッスか? 了解ッス!」
先程の嫌そうな顔から一変、喜びに満ち溢れた顔をしながら、あきらは何度も頷いた。「まあ、喜んでる……」と、かすみはあきらを細目で見ながら、ため息を吐いた。
「かすみちゃんって、食料調達をするのは初めてなんだよね。大丈夫?」
れながかすみに問う。それを聞き、かすみは少しだけ不安の色を見せたが、その不安を押し殺すようにうなずいて答えた。
「大丈夫です。れなさまとりんさまのためにも、頑張ります!」
「……そっか。ありがとうね、かすみちゃん」
れなはにっと笑って礼を言った。
「それじゃあ、俺は早速、朝飯の用意にでも取りかかるとするか」
そう言って立ち上がると、りゅうは他の五人に向けて言葉を続けた。
「お前達は、なぎさ様を呼んで、先に居間で待っていてくれ。れなの分は、後で俺がお粥を持ってくる。あと、かすみは朝飯を食べ終えたらすぐにバルドロス帝国へ行くんだぞ。朝方は盗みをしやすい時間帯でもあるからな」
れなは「オッケー」と小さくうなずき、あと四人は「了解!」と大きく返事をした。その四人の中で、一際大きな返事をしていたのがあきらだった。れなの仕事をやらなくてもいいと、りゅうが正式に認めてくれたのだから、本人にしてみれば具合のいいことこの上ないのだ。
「俺、忍術が下手なままで良かった~!」
なんて怠けたことを呟きながら、あきらがガッツポーズをしたときだった。……そう上手く事が進むはずもない。あきらの言葉が耳に入ったりゅうは、口元だけで笑みを浮かべながら、あきらに告げた。
「安心しろ、あきら。お前が今日退屈することはない」
あきらの表情が凍り付く。
「え。それってまさか……」
「そのまさか」
りゅうは容赦なく言葉を続けた。
「俺はいつも、なぎさ様に頼まれて薪割りをやっていてな。あと五百本以上は残っているんだ。俺は炊事で忙しいから、残り全部はお前が……」
その直後、あきらの悲鳴が村中に響き渡ったのは言うまでもない。
朝食前も、あきらは薪割りのため、水無月姉妹は特訓のため、少しだけ席を外した。朝食を食べ終えた後も、りんは速やかに特訓を、あきらはしぶしぶ薪割りを再開した。かすみもすぐに身支度をして、りんに「今日こそは勝ってくださいね」と激励の言葉を送った後、バルドロス帝国に出発した。
それから二時間ほど時間が過ぎたが、空は相変わらず快晴で、決闘をするにも絶好の日和だった。特訓をひとしきりやり終えると、りんは「後は一人で十分だから」と言って、あかねに家事の手伝いをするよう促した。それは困ると、あかねは胸の内で悲鳴を上げた。
食料調達はかすみがれなの代わりに行ってくれたとはいえ、他にやらなければならない家事はまだ残っていることだろう。今戻ったところで、りゅうに面倒な仕事を振られてしまうのが、あかねは容易に想像ついた。廊下の雑巾がけだとか風呂掃除だとか、そんなことに何時間も時間を取られるくらいなら、特訓の付き添いをしていた方がよっぽどましだ。
「いや、その……お姉ちゃんの特訓に付き合うのは、あたし自身の特訓にもなるわけで……」
適当な言い訳もすぐに見抜かれ、りんは「呆れた」と呟いてクスクス笑った。だが、それ以上怒ることはせず、りんは決闘前の準備に取り掛かることにした。草花が揺れる地面の上で正座をし、目を閉じて黙想に耽り始めた。
黙想は、りんが精神統一のために習慣的に行っていることだった。こうなるとちょっとやそっとでは動じなくなるほどに集中してしまうので、あかねは隣に腰掛けてりんの黙想をじっと眺めることにした。
今日は決闘の日だから、今頃は相手と戦うイメージでも浮かべているのだろう。りんは人一倍強いニンジャだから、きっとイメージの中だけでも目まぐるしい駆け引きを繰り広げているに違いないと、あかねは想像した。だが、そんなりんでさえ、相手のニンジャには今まで一度も勝ち星を上げたことがなかったのだ。
その相手とは、睦月なぎさという名の男。今のリーダーを務めるニンジャである。年齢は最年長の四十一歳で、彼からすれば、他のニンジャ六人は子供同然だった。ニンジャとしての知識も力も、今いるニンジャの中で群を抜いていた。
そんな彼に、りんが初めて勝負を挑んだのは、今から六年前のことだった。己の力を試したい一心で決闘を申し入れたりんだったが、皮肉なことに、当時のりんの実力は睦月なぎさの足元にも及んでいなかった。睦月なぎさの底知れぬ力量と、それを完璧なまでに制御する技量に、りんは一矢報いることすらできずに敗北した。
そのことが悔しかったようで、あかね達はそれ以来、りんが熱心に努力を積むのを見かけるようになった。皆が切り上げた後も気の済むまで修行を続けたり、暇なときには忍術について記された書物を読み漁ったりと、その熱意は凄まじいものだった。
だがあかね達は、りんが睦月なぎさに勝つと、正直期待していなかった。決してりんが弱いというわけではないのだが、睦月なぎさは昔からずっと、雲の上のような存在だったのだ。睦月なぎさが実力で負けるのはあり得ないと、誰もが信じて疑おうとしなかった。
しかし、月日が経つにつれ、あかね達の考えも少しずつ変わっていった。そのきっかけは、りんが完敗を喫したあの日から丁度一年後である、二度目の決闘のときだった。
決闘が始まって間もなくして、一同は度肝を抜かれた。りんは、火・水・土・木・雷の力──『五遁』の忍術を扱ってみせたのである。
『五遁』は、あらゆる忍術の中で最高難度の忍術と言われている。結ぶ印がどれも複雑な上、忍術が強力過ぎるため、その分高度なコントロールが求められる。かの睦月なぎさですらも、『五遁』の習得に五年以上の歳月がかかったのだが、りんはわずか一年──十六歳という若さで会得してしまったのだ。
二度目の決闘もりんの負けではあったものの、なぎさはこの決闘以来、りんに一目置くようになった。観戦していたあかね達も、りんの努力は決して無駄ではなかったのだと、この時初めて思い知らされた。
睦月なぎさが誰よりも強いという認識は変わらない。だが、もしかすると、りんが決闘でなぎさに勝ってしまうのではないかと、あかね達はそんな期待を抱くようになった。りんが『五遁』を使えるようになったからというのもあるが、皆がりんに期待するのは、それだけが理由ではなかった。
皆、りんの懸命な姿に惹かれたのだ。誰にも期待されていなかったときから、ずっとひたむきに頑張り続けてきたりんを見ているうちに、りんを応援したいと、あかね達は自然とそう思うようになった。決闘前に、りんの仕事を全員で代わりに行うようになったのも、この時からだった。
さらに鍛錬を重ね、三度、四度と決闘を挑むりんだったが、なかなか睦月なぎさに勝つことはできなかった。もはや、りんの力量は、なぎさのそれと同等であると言っても過言ではないほどだったが、それでもりんが勝てなかったのは、忍術の応用力で、なぎさとまだ大きな差があったからだった。
ただ、闇雲に忍術を使えば良いというものではない。いかにして相手の攻撃を防ぐか? いかにして相手の隙を作るか? いかにして相手に攻撃を当てるか? そういった実戦経験の差で、りんはなぎさに劣っていたのだ。勝てそうで勝てない、そんなもどかしい状態が続きながら、一年、また一年と時間が過ぎていった。
そして今回、りんは七度目の決闘を挑むことになる。途方もない努力がこうも報われないとなると、戦意を保ち続けることすら大変だろうと、あかねは想像した。しかし、あかねが覗き込んだりんの顔は、そのような弱気が一切感じられないほど、気合いに満ち溢れていた。
きっと、負けず嫌いの姉にとって、敗戦は奮い立つきっかけにしかならないのだろう――。そう感心していたところ、黙想に耽っていたはずのりんに突然声をかけられ、あかねはふと我に返った。
「ぼーっとしちゃって、どうかしたの?」
怪訝そうに尋ねるりんに対し、あかねは気恥ずかしそうにそっぽを向きながらごまかした。
「いや、その。今日の決闘はどうなるかなーって考えてただけ」
りんはやる気充分に言ってのけた。
「今日こそは勝ってみせるわ。皆が応援してくれてるなら、なおさら負けるわけにはいかないもの」
りんの意気込みを聞いたあかねは気を良くした。自分達の応援が、少しでもりんの心の支えになれているなら何よりだった。
「そういえば、さっきもれなに励ましてもらってたもんね」
先程のやり取りを思い出しながら、あかねは無神経に言葉を続けた。
「もしかして、お姉ちゃんって案外単純だったりして?」
「生意気言うわね、こいつー」
りんは眉間にしわを寄せながら、あかねの頬を摘まんでぎゅっとつねった。あかねの痛がって喚く様がおかしかったのか、りんは眉間を緩めてクスクスと笑った。
「誰が負けるって? りん」
突如、横から自信に満ちた声が聞こえてきた。それが誰のものであるか、二人はすぐに分かった。その人物の耳に届かない所で会話していたつもりだったので、思わず二人はどきりとしてしまう。
顔を向けると、一人の男がりん達の方に歩いてきているのが見えた。白いぼさぼさの髪で、真っ黒な羽織と袴を着ており、右手には額当てが握り締められている。その姿を目にするなり、二人は男の名を口にした。
「なぎさ様……!」
「戦闘バ……」
慌てて、りんはあかねの口を手で塞いだ。
「こんな時間から外に出られるなんて、珍しいですね」
続けてりんが言うと、なぎさは当然とばかりに「今日は決闘の日だろう」と答えた。まさか向こうから出向いてくれるとは思わなかったようで、それを聞いたりんは恐縮した。
「お前も大分強くなったとはいえ……まだまだ、お前に俺は倒せないよ」
そう言いながら、なぎさは手にしている額当てを、自身の額に着けた。
ニンジャは昔、戦に出るときに士気の向上を目的として、額当てを着けていた。その名残からか、今のニンジャ達も、大事な局面のときには額当てを着けるようにしていた。
なぎさが額当てを着けるのを見て、あかねとりんは、彼がすぐにでも決闘を始めようとしていることを察知した。まだ心の準備ができていないんじゃないかとあかねは心配したが、りんが満を持して歩み出るのを見て、すぐに杞憂であることを悟った。
なぎさの前に立つと、りんはウエストポーチから額当てを取り出した。そして、決意の大きさを示すように、額にぎゅっと力強く結んだ。二人が火花を散らしながら睨み合うのを見て、今にも決闘が始まろうとしているのを察し、あかねは慌ててその場を離れた。
轟音が鳴り響いたのは、それから間もなくのことだった。突然の地響きに足を取られながら振り向くと、両手で印を結ぶりんの足元から、大蛇の如き蔓が何本も突き抜けていた。意思を持ったかのように蔓がうねり、四方八方からなぎさに襲い掛かったが、なぎさはその悉くを上半身だけでかわし切ってしまう。
「相変わらず初っ端から飛ばしてくるな、りん。今度は木か?」
大蔓に埋もれながらも、なぎさはりんから一切目を逸らすことなく、にやりと笑った。りんも想定内だと言わんばかりに含み笑いを浮かべた。
「こんなものじゃないですよ」
そう言って、りんは続け様に印を結んだ。辺りが影に包まれ、なぎさが見上げると、象一匹も易々と飲み込めるほどの水の塊が、なぎさの頭上で渦を巻いていた。なぎさに狙いを定め、水の塊は大砲のように、今にも砲撃を放とうとしている。
りんの目まぐるしい攻撃に呆然とするばかりのあかねだったが、この一瞬だけは、りんの判断に少なからず疑問を抱いた。最初の大蔓の攻撃ですら忍術を使うことなく捌いてしまうなぎさに、見え透いた攻撃が果たして通用するのだろうか? また難なく避けられてしまうのが落ちではないか?
なぎさも同じことを考えたようで、すぐに膝を曲げ、水の砲撃を跳躍で避けようとした。しかし、直前のところで、なぎさはふと跳躍するのを止めてしまった。どうしたんだろうと思ったのと同時に、あかねはりんの意図にようやく気付くことができた。
単調な攻撃がなぎさに通用しないのは、りん自身も身をもって知っているに違いない。必ず何か裏があることを思えば、りんが水の砲撃とは別の攻撃を狙っていることも自然と想像がつく。そして、最初に大蔓の攻撃を放った時点で、その伏線は既に張られていたのだ。
なぎさは今、両足を蔓できつく縛られているに違いない。だからこそ、なぎさは跳躍することはおろか、その場から離れることもできずにいるのだ。
あかねが攻撃のからくりに気付いたときには、既に水の砲撃が勢い良く放たれていた。弾丸のように差し迫る水の塊が、なぎさをまとわりつく大蔓諸共押し潰し、大きな爆発音を立てて弾ける。手応えを覚えたりんが小さくガッツボーズをし、勝負は一瞬にして決したかのように思えた。
「全く、大したもんだよお前は!」
遠くから、りんを大声で呼ぶ声が聞こえてきた。りんとあかねの二人が慌てて振り向くと、なぎさが薪割りのために積まれていた丸太の上に腰掛けており、すぐ近くで仕事をさぼっていたあきらが口をあんぐりと開けていた。
「まさか初っ端から読み合いで負けるとは思わなかった。本当に強くなったな、りん」
積み上げられた丸太から飛び降りて、マイペースにりんの方へ歩み寄りながら、なぎさは称賛した。一体何が起こったのか分からずにあかねが混乱する一方、りんは「あちゃあ」と言わんばかりに顔に手をやった。
「あれ、空蝉の忍術よ。自身の体を別の物体とすり替えるの。さっきまでなぎさ様がいた所を見てみて」
あかねを気遣って解説しながら、りんは水の砲撃を放った先を指差した。りんが印を結んで大蔓をかき消すと、大蔓の中からは一本の丸太が姿を現した。
「水の砲撃を受ける寸前で、なぎさ様はあの丸太と自身の体をすり替えたの。あの一瞬でよく機転を利かせられるわね、さすがとしか言いようがないわ……」
自信がある攻撃だったのか、りんは落胆を隠しきれない様子で言った。
「だが、次元空間に干渉する技は多用できるもんじゃない。これは俺にとって不利益な結果だ。そう肩を落とすな」
すぐ側まで来たなぎさが、りんに励ましの言葉をかけた。戦闘においてここまで褒められるとは思わなかったのか、りんも満更ではなさそうな様子だった。
「もう少しだけ、付き合っていただけますか?」
りんが問うと、なぎさは目を輝かせながら「当然だ」と即答した。
「何時間でも付き合ってやる。遠慮なく来い、りん!」
りんは力強くうなずき、胸を借りる気持ちで猛然と駆け出した。「頑張れ、お姉ちゃん!」とあかねが横からエールを送る。
「何をいつまでも仕事をさぼるつもりでいるんだ、お前は」
不意に、あかねの頭上にごつんと拳骨が落ちた。あかねが悶絶しながら振り向くと、様子を見に来たりゅうが、険しい顔つきであかねを見下ろしていた。あかねに四の五の言わせる前に、りゅうはあかねの耳を摘まみ、無理やり建物の中へと引っ張っていった。
涙目になりながら、あかねは同じくさぼっていたあきらの方を指差して、道連れにしようとした。だが、そちらの心配は無用だったようで、りゅうが忍術で作った分身が、あきらに拳骨をかまして薪割りを続けるよう説教していた。だが、りんとなぎさの決闘を観戦できなくなることに変わりはなく、あかねもりゅうの監視の下、家事の手伝いを余儀なくされた。楢の廊下を渡り、畳が一面に敷かれた居間に辿り着くと、りゅうは壁にかけられていた箒をあかねに渡し、掃除をするよう指示した。
「今日くらいは家事を後回しにしたっていいじゃん、りゅうのケチ」
箒でほこりを掃きながら悪態をつくあかねに対し、りゅうは木製の箪笥を雑巾で磨きながら言った。
「それでも食料調達を優先したかすみのことも考えろ。それに、いつもすぐ決着がつくわけじゃないだろ? 大抵一時間くらいあれが続くんだ」
「じゃあ、一時間はちゃんと集中してやるから。一時間経ったらまた観戦させてよね」
「分かった分かった」
りゅうからどうにか了承を得られ、あかねはそれから一時間の間、珍しく文句を言わず家事に打ち込んだ。廊下の雑巾がけ、食器洗い、風呂掃除……待ち遠しい気持ちを押し殺しながら、あかねは山ほどの仕事を淡々とこなしていった。
そして、ようやく約束の時間は訪れた。それに気づいたきっかけは、玄関から聞こえてきたあきらの叫び声だった。
「一時間経ったッスよ! もう決闘の続き見てもいいッスよね!」
台所で昼食の準備をしていたりゅうは、一つため息をつき、「ああ、行ってこい」と叫んで返事した。続けて、あきらのあかねを呼ぶ声が響いてきたので、あかねはりゅうに促されるまま、駆け足で玄関へと向かった。
「やっぱりまだ終わってなかったんだ、決闘」
合流するなり尋ねるあかねに対し、あきらはうなずきながら答えた。
「ずっと大きな音が続いてたから、それは間違いないはずッス。ずっとりゅう兄の分身に見張られていたから、状況がどうなのかは分かんないッスけど」
そう言われるといよいよ戦況が気になって、あかねは急いでサンダルを履き、あきらと一緒に外へ出た。先程までいた場所に戻ってみると、砂埃の舞う中、りんとなぎさの二人が対峙しているのが見えた。
地面のあちこちに残る深い窪み、鋭く真っ直ぐに伸びた亀裂、ドラゴンが噛んだかのように削れた跡は、戦闘の激しさを鮮明に物語る。そんな傷だらけの地面の上で、りんは満身創痍になりながら辛うじて立っていた。足元はおぼつかず、ちょんと押せば倒れてしまいそうなほどに弱り切っている。
一方のなぎさはというと、肩で息をしていたものの、まだ笑えるだけの余裕が残っているようだった。激しくぶつかり合ったのか、なぎさの足元にはりんの千切れた額当てが転がっていた。
「こんだけ激しい戦いをしてるのに笑ってられるなんて、さすがは戦闘バカッスね……」
ごくりと唾を飲みながら、あきらは悪気なしに思わず呟いた。
戦闘バカという呼び名は、なぎさやりゅうが近くにいないときにしか使わない、なぎさに対する蔑称だった。あきらも最低限の注意を払っていたつもりだったが、それでもりゅうの地獄耳にはその悪口が聞こえていたようだった……というか、すぐそこにりゅうが立っていた。
「げっ、いつの間に……!」
驚愕するあきらの頭に、容赦なくりゅうの拳骨が襲い掛かった。一時間前にも殴られたからか、たんこぶの雪だるまを作りながら、倒れてひくひくと動かなくなるあきらを見て、うっかり自分も口走らなくて良かったと、あかねはほっと胸を撫で下ろした。
「ていうか、りゅうは昼食の準備をしていたんじゃないの?」
ふと疑問に思って尋ねるあかねに対し、りゅうは自身を親指で差しながら言った。
「俺は分身だ。観戦しながらでも昼食くらいは作れる。さっきまではお前らも一緒に家事をやってたから、敢えてやらなかったがな。それに、病人をほったらかすわけにもいかないだろ?」
「ふーん……」
納得しながらもどこか腑に落ちなかったあかねだったが、少し考えた末、りゅうの本心を理解して声を張り上げた。
「分かった! れなと二人っきりになるための口実だ!」
「マジッスか! 隅に置けねえッス!」
興味深い話題を聞き、あきらも目を輝かせながら、元気を取り戻して立ち上がった。恋人同士だと公言してはいないが、りゅうとれなの二人は両想いなのではないかと、ニンジャ達の間では専らの噂だ。りゅうの分身は、「たまたまだ」とはぐらかしながら、にやにやと意地悪げに笑うあかねとあきらの頭にチョップをかました。
ここでようやく、三人は決闘の方に注目する。あかね達はりんの方を応援していたが、恋愛話に現を抜かしている場合ではないほどに、りんは窮地に立たされていた。それを見過ごすはずもなく、先に息を整えたなぎさが走り出す。対するりんは、歯を食いしばって最後の力を振り絞り、なぎさの攻撃に身構えた。
なぎさが拳を振り上げる。りんは顎を掠めながら辛うじてかわすが、間髪問わずになぎさの回し蹴りが襲い掛かる。次は当たってしまうとあかね達は悲鳴を上げたが、りんは瞬時にしゃがんで身を低くすることで、これもかわした。
なぎさが体勢を整え、次の攻撃を見舞おうとする前に、りんが体ごとなぎさにぶつかり、距離を突き放した。見ているだけでもりんが苦しそうで、あかねは心配のあまり胸を痛めた。あの体当たりも、少しでも疲労回復したい意思の現れに違いない――そう思ったときだった。
りんが、なぎさ達の目の前から忽然と姿を消した。突然の出来事にあかね達ははっと息を呑んだ。物陰に身を隠す技はあれど、自身の体を透明にするような都合のいい忍術は存在しない。いかにしてりんが姿を消したのか、あかねとあきらが分からずにいる一方、先に理解したりゅうがぼそりと呟いた。
「空蝉の忍術……!」
それを聞き、あかねとあきらの二人も、目の前で起こった出来事をようやく理解した。りんは決して姿を消したのではなく、別の物体と体をすり替えて移動したのだ。では、そのすり替えた物体は何か……薪割りに使う丸太かと思ったが、りんはそれよりもっと身近なものを対象としていた。
激しくぶつかり合った末に千切れたりんの額当てが、先程までなぎさの足元に転がっていた。りんは、その額当てが落ちていた方向になぎさを突き飛ばし、空蝉の忍術で瞬時に距離を詰め、奇襲を狙ったのだ。りんは、まだ勝負を諦めていなかった。懐から小刀を取り出して逆手に持ち、最後となる一撃に全てを賭けた。
しかし、一方のなぎさは、防御に回るどころか、強気に拳を振るってカウンターを狙おうとしていた。りんの奇襲は完璧だったものの、疲弊は完全に隠し切れていないのか、小刀による攻撃にいつもの切れはなかった。それを見て、なぎさは臆するべきではないと判断したのだろう。あと一発でも攻撃を当てれば勝ちだと分かっていて、攻撃を狙わないのは愚の骨頂だ。
なぎさは体を反らしてりんの攻撃を避けようとしたが、りんが小刀を振ってくることはなかった。そして、思い切り振るった拳がりんの顔面に直撃することもなかった。りんは、小刀を取り出すだけして、なぎさに攻撃するフェイクをかけたのである。空蝉の忍術で不意を突けたことによるりんの有益な結果が、一瞬の読み合いを制する優位な展開を生んだのだ。
「いける――!」
そう呟き、りんは拳を振るって隙を晒したなぎさの片腕を、脇で挟むようにして抑え、もう一方の手で印を結んだ。なぎさの足元から何本もの蔓が生え、瞬く間になぎさの体に巻き付き、がんじがらめに縛っていく。拳を突き出したまま動けなくなったなぎさの首元に、改めて小刀の先端を突き付けた。
「凄い……お姉ちゃんが勝った!」
あかねとあきらは舞い上がっていたが、まだ勝負は決したわけではない。相手が「参った」というまで勝負は終わらない。なぎさもまた空蝉の忍術を使うだけの余力を残しているかもしれないし、そうなればりんはいよいよ万事休すだった。りんの体は限界をとうに超えている。できれば降参してほしいと願いながら、りんはなぎさの首元に小刀を突き付けたまま、小刻みに震えた。
そんなりんの反応がおかしく思えたのか、なぎさは突然フッと鼻で笑った。
「安心しろ。俺は分身なんかじゃない。お前に一矢報いられるだけの力も残っていない。俺の負けだ」
りんは耳を疑った。
「本当に……?」
そして、思わずそう口にする。
「本当も何も」
なぎさは首を垂れ、ぐったりしながら言った。
「もう限界だ」
りんは狐につままれたような顔をしていた。まだ、なぎさの言っていることが信じられない様子だった。そんなりんを見かね、なぎさは顔を上げて綻ばせながら、再び言った。
「お前の勝ちだよ、りん」
「勝ち……私の……」
なぎさの言葉を口でなぞる。そうすることで、りんは、なぎさの言葉を事実として少しずつ認識した。
「やった……やった……!」
長年の望みが果たされ、りんは何度も声に出しながら喜びを噛み締めた。顔も歓喜に満ち溢れ、目からはぽろぽろと涙がこぼれ出た。
本当に長かったと──しみじみと達成感を味わい、そして……りんは疲労のあまり、ばたりとうつ伏せに倒れ、深い眠りについてしまった。りんが倒れるのと同時に、なぎさを縛っていた蔓が萎れて屑となり、なぎさの拘束は解かれた。
「……全く、これじゃあどっちが勝者なのか分からんな」
心配のあまり駆けつけたあかねとあきらに囲まれるりんを見ながら、なぎさはまた鼻で笑った。そして、自分も大の字になって倒れ、あかね達に寝床まで運ぶよう指示した。言われなくてもとばかりに、あかねとあきらはりんの体を持ち上げ、なぎさの方はりゅうの分身が担ぎ、それぞれの寝床まで運んでいった。
「聞いたよー、りんが勝ったんだって? 今日はお赤飯だね」
やっとの思いでりんを運び終えた後、あかねとあきらはりんの部屋を出るなり、寝間着姿のれなに声をかけられた。
「あーあ、私も決闘見たかったなぁ。何でよりにもよって今日風邪引いちゃったかなぁ」
残念がるれなに対し、あかねはあきらと一緒ににやにや笑いながらからかった。
「むしろ、あたし達が近くにいることもなかったから良かったんじゃない? りゅうと二人っきりになれて」
「またそういうこと言う!」
れなは頬を赤らめながら、むっとした表情であかね達を睨んだ。全く反省する様子のないあかね達だったが、突然二人の頭にごつんと拳骨が落ちてきた。もう何回目の拳骨になるやら、呻き声を上げながら振り向くと、寝床になぎさを運び終えたりゅうが仁王立ちしていた。
「全く、事あるごとに俺らをからかうのは止めろ。それと、れなも病人なんだからまだ寝ていろよ。ちょっと元気になったくらいじゃ完治したとは言わないぞ」
「……はーい」
あかねとあきらの二人が頭を押さえて立ち上がりながら返事し、れなも怒られてしまってしょげながら自分の部屋に戻っていった。
「ところで、りんの容態はどうだ?」
問いかけるりゅうに対し、あかねとあきらが一緒になって答えた。
「あれからずっと寝たままだよ。もう随分疲れ切ってるみたい」
「あの調子じゃ、ものの数時間じゃ起きそうにないッスね。少なくとも昼食の時間まで起きる様子はないッスよ」
りゅうがうなずいて言った。
「ああ、まさにその昼食のことで話があってな。どうやられなもなぎさ様も食欲がないらしいから、昼食に作ったものはもう夕食に回してしまおうと思ってな」
「つまり、昼食抜きッスか?」
愕然とするあきらに対し、りゅうは再び躊躇なくうなずいて言った。
「食べるにしても、食料調達から帰ってきたかすみが昼食を食べたいって言うまでだな。少なくともお前ら二人の要望には乗らん」
「うぐ……こんなことになるなら変にからかわなければ良かった……!」
今更ながら後悔するあかねに対し、りゅうは「そういうことだ」と言わんばかりに冷たい視線を送った。
そうとなれば、昼食を食べる頼みの綱は、かすみただ一人ということになる。あかねとあきらは外に出て、見晴らしの良い木の上に登り、腹の虫を鳴らしながらかすみが帰ってくるのを待った。
しかし、昼の時間をとうに過ぎても、かすみが帰ってくる気配は一向にない。数時間経っても戻ってこないとなれば、一同もさすがに異変に気付くことだろう。待ちぼうけを食わされていたあかねとあきらの下に、りゅうとなぎさが慌ただしい様子で駆け寄ってきた。
「かすみ、戻ってきたか?」
りゅうの問いに対し、あかねとあきらは首を振った。
「まずいことになったな……」
なぎさが重苦しい顔をして言った。
「食料調達は、遅くとも三時間くらいあれば戻ってこられるはずなんだ。それなのに帰ってこないってことは、かすみの身に何かがあった可能性が高い」
「なら、すぐ捜しに行くッス!」
あきらの提案にりゅうもうなずき、なぎさに同意を求めた。なぎさは当然と言わんばかりに了承した。
「だが、いくつか条件がある。まず、りんとれなは一緒に連れて行かん。体を休めることを優先させるんだ。そして、バルドロス帝国には、りゅう、お前が行ってくれ。りんと決闘した後だから、今の俺よりもお前の方が満足に潜伏できるだろうからな。俺とあかね、あきらの三人は、バルドロス帝国までの道中を捜すことにする。それでいいな?」
りゅう、あかね、あきらの三人は「了解!」と力強く返事した。
それからあかねは、なぎさとあきらとの三人で、シノクニの近辺及びバルドロス帝国までの道中を隈なく捜すこととなる。しかし、夕暮れ時になってもなお、かすみの姿を見つけることはできず仕舞いだった。最早為す術もなく、あかね達はりゅうがバルドロス帝国から戻ってくるのを待つしかなくなった。
店の人に盗みを見つかって怒られる程度であれば可愛い方であるが、なぎさの酷い慌てようは、それよりもっと恐ろしい事態が起こるのを予感しているようだった。どうか、その予感が杞憂に終わることを祈りつつ、あかね達はりゅうが戻ってくるのを待ち続けた。
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