ライラライ
初めて書いた小説だったりします。
こいつアホやなーと思いながら書きました。何事も客観的なら
笑い飛ばせるって思います。
オレは彼女のことを全くと言っていいほど知らなかった。
当然だ、彼女とオレは恋人同士というような甘い関係でもなければ、幼なじみといった都合のよい関係でもない。
それどころか友達ですらなく、もっと言うと面識すらない。
俺の彼女の知識。「名前」と「顔」。
でも、その「顔」が強烈なのだ。
こう言ってしまうと、彼女の顔になんらかの問題が生じているように感じられるだろうが、そうではない。
むしろ逆だ。
彼女の端正な顔つきは、オレの右脳を直撃した。それはもう強烈に。
「かわいいなぁ、遠山さん。」
学校で彼女を見るたびに、その姿に釘付けになって、ああ今日はいい日だった、なんて思ってしまう。
これが俗に言う「一目惚れ」ってヤツなのか。いやいや、これはきっとアイドルなんかに抱く感情と同じだ。
ようするに、オレは彼女のファン。彼女は憧れの存在で、手の届かない高嶺の花。
「で、なんでそんな話をあたしの前でする?」
ちなみにこれは今オレの隣にオレと一緒にベンチで腰掛けている女の子の発言。
惚けた表情をしていたオレに話しかけてきた彼女は不機嫌そうにしかめっ面を浮かべた。
「まぁ、そんなイライラすんなや」
カルシウムとるか?とさっき自動販売機で買ったばかりのホットカフェオレを彼女に差し出すと、彼女はさらに不機嫌そうな顔になった。
彼女曰く、俺は「嫌なヤツ」らしい。
無言でホットカフェオレを手で制して、それからさらに彼女は言う。
「なに、今日呼び出した用件ってこれ?」
「違う違う。これ見て、これ。」
オレはホットカフェオレを股に挟み(置く場所がなかった)、教科書など全く入っていない鞄から、一冊の雑誌を取り出した。
女性向けのファッション誌だ。
「えーっと、これだな、これ。」
「これって、遠山さん?」
「そうそう、遠山さん。」
ファッション雑誌の中の、オレが指差した女の子。それはさっきの高嶺の花の彼女で、遠山とはその彼女の名字だ。
「あー、やっぱオレの目に狂いはないだろ?すっげーな、雑誌にまでのっちゃうもんな?」
「これ自分で買ったの?」
「男のオレがこんなの買うかさ。借りたんだ、友達に・・・」
無理矢理だけれど。
「女?」
「・・・実は男」
「・・・・」
飽きれた表情の彼女。その顔を見るのも、これで何度目になるだろう。
多分会うたびに一回はさせていると思う、その表情。
「で、結局なんなの?」
「ん、オレって見る目あるじゃんってことよ。言いたかったのは」
彼女が不機嫌になることが分かっていてこんな話をしてしまう自分は、相当根性曲がっているに違いない。
彼女と付き合い始めたのはもう半年前の事になる。
それまでテニスばかりに精を出し、女の子との付き合いみたいなのも分からないまま人生が15年過ぎていき
そろそろ彼女の一人でもいないとまずいと思った。それが半年前。
そんな思春期まっただ中だった俺が、女の中でも気兼ねなく話せた仲だった彼女を意識したのも半年前。
あのときが、本当に一番がんばった。よく言ったもんだ、この俺が、付き合ってくれ、なんて。
その場であっさり「いいよ」って返事が返ってきたときは、ちょっと拍子抜けだったが、
心の底から嬉しかった。俺は勝ち組だーなんて叫びたかった、って言ったら死んだ方が良い?
こうして付き合い始めたのはいいのだけど、そこからが大変だった。
いままでは親しく話せていたというのに、あきらかによそよしくなった彼女の態度。
おいおい、意識し過ぎだよお前さん、なんて当事者の俺ですら思わずツッコミをいれたくなるほど。
おかげでオレまで意識するようになってしまった。そんなバカな。想定外の話。
友達から言わしてみれば、付き合い始めのカップルに起こるごく普通の出来事らしいが、
オレからしてみれば前よりも他人行儀で接するなんて、矛盾している、と思う。
付き合うことで、二人の関係が希薄になってしまうなんて、納得いかなかった。だって話しかけてもほぼ無視だぞ?
そして初デート。
初めての二人っきりの外出(もちろんそれを初デートと言うんだが)で、お互い緊張していた。
初めて見た彼女の私服姿に単純に感動した。まぁ女の子のおしゃれなんてもんは男に理解できないけれど、
おれのためにめかしこんでくれたんだな、と思うと、男冥利に尽きると言うか・・・
とにかく、これぞデート!と、待ち合わせ場所に彼女が来た瞬間はテンションが上がったのだが
そっからどうすればいいのか、あーこういうのは男のおれがリードするもんじゃねぇのか、とか、こういう経験の無いオレはひどく悩んだ。
迷った末に映画に誘ってみた。映画なら作品上映中はなにも喋らなくても気まずくないし、なによりデートで映画館というのは
セオリー通りで間違った選択じゃないと思ったからだ。
もちろん事前に考えてきた行動じゃないので、どんな映画がやっているのか分かんないオレは、CMでやってたアクション系の洋画を選択した。
が、それが失敗だった。
洋画にはありがちだが、その映画はピンクシーンというもんがわんさか。いやこれは18歳未満は入場禁止にしなくちゃいけねぇんじゃないか
ってくらい、ベットの上で男女がリアルな動き。
やばい、この映画を見ようって言ったのオレだ。もしかしてわざとと思ってる?誤解されていたらどうしよう。誤解を解くべきだろうか。
しかしこのシーンのことをあとあと話題として出すのも気が引ける。ここは何事も無かった風に装うのが一番だろうか。
・・・それにしてもそれなりの気まずさは残るだろうが。
ああこんな映画選択するんじゃなかった。なんでこんなのが全米No,1ヒットなんだ・・・(←よくある宣伝文句)
おれはその後映画の内容なんてこれっぽちも頭に入ってこなかった。
そしてその後のこともあんまり覚えていない。
どこかの喫茶店に入った気がするが、30分ほどで、その日はお開きになった。
そういうわけで初デートは「失敗」という結果に終わった。
情けない。
正直オレは男としての自信を失ってしまった。
「オレは恋愛とか向いてないんじゃないか」
そんな風に思った。向いてない。向いてない事を、オレはしようとしている。
で、そんなオレと彼女が付き合って半年なわけだ。
実は恋人らしいことをそんなにした覚えが無い。いや、全くしたことがない。
二人っきりでいるときも、非常にさばさばした関係だと思う。
周りからすりゃとんでもない鈍足だ。おまけに童貞だ。笑えません。
でもなぁ、自分がそういう事するって、なんか実感がわかない。
健全な男の子のつもりだけど、普段からふざけてばっかのオレが、
シリアスなシーンの登場人物になれる気がしないのだ。
いや、もしかしてふざけていってもいいんじゃね?なんて、思った事もある。
ああ、男のクズさ。認める。相手の気持ちなんて、これっぽちも考えちゃいないもんな。
これってもしかして他人が聞いたらばかだなぁって思うだろうか。思うに違いない。
いっそ「バカ」って本気で殴ってくれる奴がいたら、いくら俺でも目を覚ますのに。
痛いのは嫌いだから、お断りだけど。
彼女はそんなオレに合わしてくれているのか、何も言ってこない。
ああしたい、とか、こうして、とかも言ってこない。
ただ俺のおふざけに付き合ってくれているだけのような気がする。
まあ、そんな彼女じゃなけりゃ半年も続かなかっただろうけれど。
お互いが臆病だからだとは思うのだけど。
もしかして本音ではオレの事なんてどうでもいいと思っているかもしれない。
「付き合って」と言ってみて「いいよ」と答えたときのように
「別れる?」って聞いたら「いいよ」と普通に返したりするんじゃないかと思う。
そして付き合い始めてから丁度半年経った今日。
「あのさ」
「うん?」
「どう思う?」
「は?」
「いや、だから・・・遠山さん。」
「かわいいんじゃない?」
そっけなく、彼女は答える。
「ああ、違う、その・・・質問変える」
何か、一歩踏み出さなくては行けないときが来ているとは思っている。
だが、いったい何を聞けばいいのだろうか。
この微妙な関係?
いったい俺になにを望んでいるのか?
本当に俺でいいのか?
そもそも、付き合っていると思っているのだろうか?
そんな疑心暗鬼にとらわれた。
「俺とさ、付き合っていたい?」
だからだろうか、出てきた言葉は、ひどく後ろ向きな内容。
「え?」
「俺と付き合って、楽しい?」
もう、一人では答えは出せないと思った。
付き合い始めて、ぎこちなくなってしまった君。
突然、関係を変えたいと言ってきた俺に戸惑ったのだと思った。
だから、俺らは普段通りに、今までと変わらないこの雰囲気で過ごすことに決めた。
「嫌だったの?」
ごめん。
俺はそれだけじゃ満足できなくなったんだ。
君の友達の1人という今の現状に、体の節々からボコボコと不満があふれてきて、もういっぱいいっぱい。
俺はもっといろんな君がみたい。俺だけしかしらないヤツがみたい。
ああ、そうか。
俺にはないかな、と思ってたけどな、独占欲って。
「嫌だった、こういうの」
いつもと違う俺が喋っているのが分かる。
「上辺だけとか」
まるで彼女だけが悪いみたいな言い草。
俺が、きっと、強要させたのに。
「正直な付き合いじゃないだろ」
俺って男は、薄々、いや重々わかっていたつもりだったけど。
どうしてこんなに、バカなのだろう。
いつだってそうだ、後先考えず、適当に行動して。
ついてくる答えは、いつだって後悔なわけで。
彼女は泣いていた。苦しそうに。
いや、ずっと苦しんでいたんだろう。
半年間、ずっと。
次から次へと出てくる涙。止まりそうにない。
あー弱った。
本気で弱った。
俺はやってはいけないことをやってしまったのだ。
もう取り返しはつかないのだろうか。
「俺が嫌になった?」
もう、こうなったら。
「俺ってさ」
何も考えず、正直に、全部言う。
「男じゃん?」
「・・・そうですね」
あっけにとられた様子の彼女。
とりあえず一瞬涙を止める事に成功。
「だから、その、こういうのは、二人ともあんま経験ないし・・
だから男の俺がリード?みたいな?よくわかんないかもしれないけど」
そのスキを逃さないよう、畳み掛けて話す。
「だから、本当は男として情けないかもしれないけど、でも、なんか
いきなりすんのは、悪いかなとか思ったりするわけ」
いまさら取り繕うな。
俺はどうあがいても情けない男で。
自分がどうすればいいかなんて、さっぱりわかんねぇもんよ。
だからなによ、と彼女は言う。
「キスしていい?」
俺は言う。
「え?」
「ってかそれ以上のことがしたい」
健全宣言。
ぶっちゃけにもほどがある。
空気読んでない。
だってもう彼女には嫌われたかもしれなくて。
もう二人の関係が今後続いてくなんて保証もないのに。
俺は本当にバカだな。
「・・・許可を下さい」
「嫌」
即答だった。
彼女は、目をまっ赤にして、というか顔を真っ赤にして、笑っていた。
俺も笑った。
「だれかが泣かせるから」
「俺?」
「じゃあ誰なの」
「・・・俺です」
「でしょ。おかげで顔はぐちゃぐちゃだし」
「そんなことないよ」
「近くで見たらますます可愛くないし」
「おいおい」
「どうせ目元とかパンダみたくなってるし」
「かわいいじゃん」
「かわいい?」
「うん」
「意味分かんない」
「そう?」
「なに考えてるのか分からない」
「さっき言ったじゃん」
「このエロガッパ」
「面目ない」
「また」
「ん?」
「また今度ね」
オレは彼女のことを全くと言っていいほど知らなかった。
きっとこれから。
そう思っていいのかな。
「いいわけねーだろ」
「え?」
「いや、こっちのはなし」
つーわけで最初から最後までグダグダでいかしてもらいました。
ありがとうございました。