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46-2

 入ってきたのは栞那だった。栞那は入って来るなり不機嫌そうにこっちをジッと睨み付けてくる。


「……」


「何の用だよ?」


 しばらく無言で睨み付けてくるだけだったのでこちらから話を切り出す。


 俺のことが嫌いなこいつがここに来る理由なんてないはずなんだが……。


「馬頭殿から聞きました」


「馬頭から?」


 というと俺が情報を横流ししたことについて文句を言いに来たのだろうか?


「あなたが私に武勲を立てるためにわざと懲罰を受けたと」


「……むっ」


 あの野郎。余計なことを喋りやがって。


「一応言っておくが別にこれはお前のためってわけじゃないからな! まこちゃんを助け出すために必要だからやったことなんだから」


「あなたは、それでいいんですか」


「ん?」


 ってきり恩着せがましいことをするなとぐちぐち文句を言われるかと思っていたが違うみたいだ。


「本当ならあなたはもっと評価されてもおかしくないことをやったんですよ。私はここまで来るのにあんたの代わりに何度も賞賛されました。本来その賞賛を受けるべきあなたはこんな牢屋に押し込められているというのに。あんたはそれでいいんですか!」


 要は評価されるべき俺がこんな待遇を受けて納得いかないのか。やっぱ生真面目なやつだ。


「別にどうでもいいさ」


「ですが」


「さっきも言ったけど俺の目的はまこちゃんを助けることだけだ。誰かに賞賛されようがバカにされようがどうでもいい。その過程に興味はない。むしろただでさえ疎まれている俺なんかが活躍すれば不和を生むし、俺の策だとわかったら余計な諍いを生むだけだ」


 世の中何を言ったかじゃなくて誰が言ったかが大事だしな。


 俺が言うよりも馬頭とかが考えたと言った方が周りは素直に動く。


「それに」


「それに?」


「俺のやったことをちゃんと評価してくれる人間だっている」


 と言って俺はさっき村長の孫娘が持ってきてくれた握り飯を栞那に見せる。


「それで充分だろ」


「たった握り飯一個で城を攻め落としたんですか。安い報酬ですね」


 栞那は肩をすくめてため息を吐く。


「それならこれで最低あと二個は攻め落としてもらいますから」


 と言って栞那はこっちに向かって竹皮の包みを投げ渡す。竹皮の中には丁寧に結ばれた握り飯が二つ。


 俺は思わず苦笑する。


「お前さ、もっと素直に渡せないのかよ」


「べ、別にあなたのために作ったわけじゃないんですから! お腹を空かしているあなたの前でこれ見よがしに食べるつもりだっただけです! そこをはき違えないでください」


「わかったわかった。でもありがとうな」


「こっちこそ……」


 もごもごと言葉を濁す栞那。


「なんか言ったか?」


「なんでもないです!」


 と栞那は怒鳴ると掘っ建て小屋から出ていく。その際一瞬振り返って口パクでありがとうなんて言ったように思えたが俺の気のせいかもしれない。


 俺は誰もいなくなった牢屋で握り飯を食べる。


「……しょっぱいな。塩がきき過ぎだ」


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