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 蔵から出ると宗麟が屋敷の中に入って行くのが見えた。


「逃がすかよ!」


 俺も即座に後を追う。


 しかし俺はあいつに追いついても勝てるのか? 俺は今までそれなりに強いと思っていたけど勘違いだったか。


「おいお前みたいな下っ端が屋敷に入ろうなんて――」


「邪魔だ!」


「あがっ!」


 屋敷の中に入ろうとすると山賊が何やら絡んできたが速攻で殴り飛ばす。雑魚に構ってる暇はない。


 ったく弱い自分が情けない。俺がもっと強ければまこちゃんを助けられたのに。

 だがだからといってまこちゃんをこのまま諦めるわけにはいかない。


 俺は土足のまま屋敷に入る。


 屋敷に入ると宗麟の姿はなく完全にまこちゃんを見失ってしまった。


 耳を澄ますが足音も聞こえない。


「……妙だな。静かすぎる」


 俺は耳を澄ましてそんな違和感を感じた。


 侵入者の存在には気が付いているはずなのに屋敷の中の人間は誰も騒いでいないし外の山賊もそこまで騒いでいなかった。侵入者を知らせてないのか?


 いや、それでも屋敷の中で誰の足音も聞こえていないというのもおかしい。


「罠か。それとも俺をバカにしてるのか?」


 まあ十中八九罠だろうがそれでも俺は進まなきゃならない。まこちゃんを助けるために。


 俺はまこちゃんを探すために適当な部屋のふすまを蹴破って部屋に入る。


「こいつは……」


 部屋の中で俺がみたものは死体。おそらく屋敷の使用人と思われる人物の死体だった。それも一つではなく何人も。


 どの死体も急所を一突きで殺されていた。


 こいつらも宗麟がやったのか? 何のために?


 それからいくつかの部屋に入るとどこの部屋も死体だらけ。みんなさっきの死体と同様に急所を一突きで殺されていた。


 俺は気が狂いそうだった。まさかたった一日でこれだけの死体を拝むハメになるとは……。


 だがこれで屋敷がの中で誰の足音も聞こえない理由がわかった。足音も何ももうすでに死んでいるから誰も足音を立てることができなかったのだ。


 ガタッ!


 遠くで何かの物音が聞こえてきた。


 まだ生存者が? それとも宗麟か?


 俺は物音が聞こえた方向を目指して走る。


「なぜ! なぜ私を裏切るのですか」


 しばらくすると聞いたことのある声が聞こえてきた。これは泥沼の声だ。それとは別に他の声も聞こえてきた。


「別に裏切るも何も最初からそのつもりだっただけだよ」


 無邪気な声音でその人物は話す。


 誰だこの声は? 宗麟の声とは違う。俺は二人が話している部屋の前に着くとそっと聞き耳を立てる。


「ど、どういうことですか?」


 泥沼の戸惑った声が聞こえる。


「んー? まだわかんないのかな? 君は最初から殺す予定だったってことだよ」


 と別の声の主はクツクツと楽しそうに語ると泥沼は困惑するよ。


「な、何をいってるんですか! 私にこの国をくれるという約束ではなかったのですか! そのために今まであなたに言われた通り動いてきたんですよ。今日だって言われた通りそこの小娘を誘拐しましたし明日の襲撃の準備もしたではないですか」


 ……そこの小娘?

 まさかまこちゃんはこの部屋にいるのか。俺は息を殺してまこちゃんを助けに入るタイミングを計る。


「うん。そのことに関しては感謝してるよ。やっぱ敵国だと僕も動きづらいからね。でもそれはそれ。これはこれだから」


 二人の会話からしてどうやら仲間割れとかそんな感じなのか? いや、どっちかというと仲間というよりは泥沼が使い走りのような感じだ。となるともう一人の声の主がすべての黒幕だろうか。


 通りで泥沼が考えたにしては計画が鮮やかだったわけか。


「くぅ……。宗麟! この糞がきを殺せ!」


 泥沼が怒声を上げる。


「……」


 しかし宗麟は動かないみたいだ。


「おい! どうした宗麟。お前たち山賊の雇い主は私だぞ! 言うことを聞け」


「くくく。無駄だよ無駄。宗麟は初めから僕の手駒だ。山賊をまとめるために山賊の頭目にしただけで君の言うことをきくわけがないよ」



「お、おのれえええええ! 私は死なん! 逆にお前を殺してやる!」


 泥沼が何かをしかけるみたいだ。


「やっちゃえ宗麟」


 黒幕が宗麟に指示を出す。


 注意が泥沼に向いている今がチャンスだ。


 泥沼が動くのに合わせて俺も部屋に押し入る。


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