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 あれから数日が経った。


 日が昇る前に起きて牧場に行き、デカ鳥に襲われながらも肉をわけてもらい、それをもとにつくねを作って売る日々。

 つくねは順調に売れていった。むしろ順調すぎるほどだ。一本十文で売って完売するほどだ。もうしばらくしたら店が増えてきて値段は下がるかもしれないが上々だ。元々利益を出すのが目的じゃなかったし。


 ともあれおかげで充分お金も稼げたわけだから今日は屋台を休んで疲れを取ろうということになった。まこちゃんもまだ子供だ。毎日仕事ばかりじゃ大変だろうしな。牧場の方にも休むことを伝えてある。


 久しぶりの休日を俺は平穏に過ごそうと思っていた。だが平穏など夢幻だと知らされる。


「大和はいるか!」


 体内時計的にだいたい朝九時ごろに馬頭が俺の住んでいる長屋へ血相を変えて飛び込んできた。


「なんだよ。こっちは久しぶりの休日なんだから朝ぐらいゆっくり休ませろよ」


「んなもん関係ねぇ! まこが……まこが……」


「まこちゃんがどうしたんだよ?」


「まこが逢引するみたいなんだ!」


「はぁ?」


 俺は思わずマヌケな顔になってしまう。


「はぁ? じゃないだろ! まこが逢引するかもしれないんだ。大事件じゃねーか」


 逢引。要はデートだ。それぐらいで血相を変えてやってくるんじゃねー。


「何かの勘違いじゃねーのか?」


「勘違いなわけあるか! 今日は休みなのにはずなのに朝早くから起きてうきうきと鼻歌まで歌ってたんだぞ」


 単に休みが嬉しかったんじゃないだろうか。


「これは何かあると察した俺っちはまこに今日は何をするんだと聞いた。するとまこは「に、兄さんには何にも関係ないんだから別に言う必要ないでしょ」なんて慌てふためきながら言ってきたんだぞ。あれは絶対男だ。男と会うに決まってる」


「考えすぎだろ。仮にそうだとしてもお前が出しゃばることじゃないだろ」


 あと妹の声真似が気持ち悪すぎる。


「駄目だ! そんなの兄として俺っちは認めない。ということでまこを尾行するぞ」


「何がということだよ。お前の頭は腐ってるのか? 仕事はどうするんだよ」


 確かこいつは今日兵士としての仕事があったはずだ。まこちゃんが昨日そう言ってたから間違いない。


「んなもん糞喰らえだ!」


 ダメだこいつ。


「まあ勝手にしろ。俺は二度寝する」


「何言ってやがる。お前も一緒に来るんだよ」


「ふざけんな。っておい、手を離せ」


 馬頭は強引に俺の手を引っ張って連れて行く。引き離したいがいつも以上に掴む力が強い。妹のこととなるととんでもねー力を発揮しやがるこいつ。


 そして俺は馬頭とまこちゃんが住む長屋まで連れてこられた。俺とまこちゃんが住む長屋は結構離れているから歩いて十分ぐらいかかる。


 二人の住む長屋まで着くと陰に隠れてまこちゃんが長屋から出てくるのを待つ。それから待つこと三十分。ようやくまこちゃんが出てきた。


「ほら見ろ。服装がいつもより気合いが入ってるだろう」


 と言われてもよくわからん。まこちゃんが着ているのはいつもと同じような麻の服だ。言われてみれば少しはいい服かもしれないと思う程度。


「そうだなー」


 もうめんどくさいから適当に話を合わせる。


 そうしているうちにまこちゃんは長屋を出て商業区へと足を進めていた。


「ほら、行くぞ」


「お、おい」


 馬頭に連行されて嫌々俺も商業区へ向かうことに。


 まこちゃんは商業区の入り口の辺りで誰かを待っているようだった。


「ちっ! うちの妹を待たせるなんてふてぇ野郎だ!」


 などと悪態をつく馬頭。デートして欲しいのか欲しくないのかどっちなんだよ。


 しばらくするとまこちゃんの待ち人がやって来る。というか亜希だった。


「なんだ。亜希じゃんか。やっぱりお前の勘違いだろーが。俺は帰るぞ」


「いや、待て」


 これから亜希と二人で買い物でもするのかと思いきや、まこちゃんは亜希から何かをもらうとそのまま一人で商業区へと向かう。


「なるほど。まこはあの商人が頼んだものを持ってくるのを待っていたのか。どこのどいつかわからんがまこに貢がせようっていうのか! 許さん!」


 馬頭はメラメラと憎悪を燃やす。付き合ってられん。


「亜希!」


 こういうのは直接聞いた方が早い。


「なんや、大和かいな。何でこんなとこにおるんや? まさかうちに会いに来たんか?」


「いや、どっかのバカのせいでな」


 と視線を馬頭へと向ける。


「なんや、まこ絡みかいな」


 般若のように顔を歪ませる馬頭を見てすぐに事情を察した亜希はつまらなさそうに肩をすくめる。


「亜希はまこちゃんに何を渡してたんだ?」


「残念やけどそれは教えられんな」


「ふーん。じゃあ諦めるか」


「やけにあっさり諦めるんやな」


「別にそこまで知りたいことじゃないしな」


 むしろバカらしいと思ってるくらいだ。


「それに、亜希が言わないってことは問題ないってことだろうしな」


「ふふん。嬉しいこと言ってくれるやんか。ほなうちはこれから用事があるさかい」


 とご機嫌そうに鼻歌を歌いながら亜希は去って行った。


「おい、大和! 早くまこを追わないと見失っちまうぞ!」


「……えっ? まだ尾行するのかよ」

お気に入り登録がついに50件を突破しました。

ここ最近書く時間が取れずに一回の更新での文字数が減っていますが、それでもお気に入り登録していただいてありがとうございます。

もうすぐ戦記らしく戦いのシーンが出てくるはずです。

次の目標をお気に入り登録100件として頑張ります!

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