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113-2

「それはまことか?」


 蛇斑城の本丸の城門前で前線の指揮をとっていた芦屋は己の家臣の話を聞いて耳を疑った。


「はい。若様は敵の総大将千鳥紫苑との一騎打ちに敗れ討ち取られました」


「そうか。まさか敵が急斜面を下って空からやってくるなどさすがの儂も予想ができんかったわい。いや、予想はできたとしても実際にやるとまでは考えられぬな。千鳥紫苑。お館様が脅威と言うだけのことはある」


 これでまだ十八だというのだから末恐ろしい娘である。


「今のうちに摘み取っておくべきか」


 今後の脅威を考えればその才能を摘み取った方が蛇骨の国ためではある。


「して、戦況はどうなっておる?」


 そのために状況を把握するため家臣に訊ねる。


「蛟艦水様が討ち取られたことで戦線は崩壊。あろうことか敵方へ寝返る者も出ている状態です」


「なるほど」


 艦水が死ねば蛟家には跡取りがいなくなる。そうなると蛟家の命運も尽きたも同然。その前にここで恩を売っておこうとする輩が出るのも必定。千鳥紫苑はそこまで予想して動いていたのであろう。


「おまけに若様はお館様のご命令に背いて出陣をした模様で、お館様からは撤退するように言われていたそうで、家臣達にそれを口止めしていたしていたそうです。そのこともあって戦場を離れる者が後を絶ちません」


「状況は最悪ということか」


 ここで紫苑を討とうと動けば本丸の城門が開き挟み撃ちに合うはめになる。


「千鳥紫苑。本当に末恐ろしい娘だ」


 将来のことを考えこの命と引き換えに紫苑の命を討ちに行こうかと思うが、お館様の撤退命令のこともある。お館様に何かしらの考えがあるやもしない。だとしたら答えは一つ。


「いかがしますか芦屋様」


 家臣が今後の進退について訊ねてくる。


「引き上げるぞ。ただちに撤退の準備を始めよ」


「ですがそうなると途中で艦水様を討った千鳥紫苑とかち合うのでは? そうなれば無事では済まないのでは?」


「千鳥紫苑が愚か者であったならそうなるやもしれぬが、こちらが降伏の意を示せば大人しく帰してくれよう」


 千鳥紫苑とて無駄な戦いは避けたいはずだ。


 そう決断すると芦屋はすぐに行動に移し、撤退を開始した。


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