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 まこちゃんがいた部屋から出てすぐに三階へと登る階段を見つけた。


 三階へ続く階段を守る敵がいたが蓮ちゃんによって瞬殺された。文字通り瞬殺。敵が名乗りを上げる前に槍の一突きで敵の息の根を止めた。蓮ちゃん強すぎる。


 ともかく俺たちは三階へと到着する。


 三階に入ると城の構造が一気に変わった。これまで一階、二階には廊下がありそれに沿って小部屋がありちょっとした迷路のような作りになっていたが、三階は違う。


 階段を登り少し行くと体育館の半分ほどの大きさの広間になっていた。きっとここで家臣を一同に集めたりする場所なのだろう。


 そして俺はそこである男に再開した。


 そいつは広い広間に一人佇んでいた。他に仲間はいる気配はない。だというのにそいつは俺達が入ってくるのを見ても焦りは全くない。


「まさかお前達とこんなところで再開するとは驚きだ」


 それどころか大袈裟に驚く身振りをしておどける。


「てめぇ」


 広間にいたのは隻眼隻腕の大男――馬頭を殺しやがった宗麟だ。宗麟は馬頭が持っていた大太刀の斬馬刀を抜き鞘を投げ捨てる。


「まあ誰だろうと関係はない。この先で待っているあの方に会いたくばこの私を倒すことだ」


 と言って斬馬刀を構えた。


 同時に部屋中に宗麟の殺気が満ち溢れる。肌がピリピリとする嫌な殺気だ。


「ならば力尽くで通るのみ」


 蓮ちゃんも宗麟の殺気を感じて槍を構える。


「待ってくれ蓮ちゃん。こいつの相手は俺一人でする。蓮ちゃんはその間に先に行っててくれ」


「……よいのか九十九殿。この者の実力はかなりのものだ。私ですら勝てるか危うい相手だぞ」


「わかっているさ」


 こいつの強さは身に染みてわかっている。前に泥沼とかいう商人の屋敷でこいつには手も足もでなかったからな。


「それでもこいつは俺の手で打ちのめさなきゃいけない相手なんだ」


 馬頭を殺し、まこちゃんを苦しめるこいつを俺の手で……。


「これは俺のワガママだ。それでも頼む」


 こいつを倒すのなら二人で戦う方が有利だ。だけどこいつは俺自身の手で倒さないといけない。俺の持てるすべての力を出して勝たなければ今後まこちゃんを守ることもできない。


「なにをいう九十九殿。私としてはこの者の相手をしてもらえるのは助かる」


「……はっ。確かに」


 蓮ちゃんの言う通り俺がこいつを相手してくれた方が蓮ちゃんにとっても助かるもんな。俺があいつの相手をしてくれれば蓮ちゃんは万全の状態で天守までいける。


「笑止。この私をお前一人で足止めできると思っているのか」


「ああ、思ってるよ!」


 俺は刀を抜き宗麟に向かって走り出す。


「喰らえっ!」


 一気に懐に潜り込み、畳すれすれに刀を走らせながらの斬り上げ。


「遅い」


 宗麟は一歩下がってそれをかわす。


「だろうな」


 だが俺もその程度は予想済みだ。


 さらにそこから一歩踏み込みさっきよりも速いスピードで刀を振り下ろす。


「くっ!」


 これには宗麟も慌てて斬馬刀で防ぐ。


「かわしやすいようにわざと遅くしたのか」


「そうだ」


 最初の一撃目はかわされるのは予定通りだった。だからわざと初撃を遅くしてかわしやすくした。そして初撃が俺の最高速度だと思っているところにさっきよりも早い一撃をお見舞いしたってわけだ。本当なら油断していた隙に一撃を与えてみたかったがさすがにそこまでは甘くはないようだ。


 鍔迫り合いになり一気に畳み掛けようと体重をのせるが、宗麟の斬馬刀はピクリともしない。こっちは両腕で力を込めているというのにこいつは片腕でそれを防ぐ。なんてバカ力だ。


 けどこれでこいつの足を止めることには成功した。


「今だ蓮ちゃん! 今のうちに上に行くんだ」


「すまない九十九殿!」


 俺達が鍔迫り合いを繰り広げるうちに蓮ちゃんはこの隙に天守へと続く階段を登って行く。


「ちっ! ぬかった」


 宗麟は忌々しそうに俺を睨み付けると後ろに下がる。


「前とは違い太刀筋に迷いがなくなったか。人を殺すことにためらいがなくなったか」


「誰かさんのおかげでな」


「ふんっ。だがその程度で私に勝てると思うなよ」


 宗麟の纏っていた空気が変わった。さっきまでの余裕の表情は消え、相手の一挙一動を逃がさないと言わんばかりに俺に強い視線を向ける。


 本気になったということだろう。


 いいだろう。本気のてめぇをぶっ倒してやるよ。

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