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「ほら、こっちだ」


 なんとか無事に城内に潜入した俺たちはうんこ臭いおっさん――うんこさんに連れられて歩いていた。なんでこのおっさんはこんなにもうんこ臭いんだろう? フンコロガシか何かなの?


 それはともかく如水城の中は俺の予想した通りシンプルな構造になっていた。城門を入って真っ直ぐ行くと城へと続く道になっており、一〇分ほど走れば城にたどり着くことができる。


 外と比べると中のつくりが単純なのは城門を絶対を破られないという自信の表れなのか、それとも刻一刻と変化する戦場で命令をより素早く伝えるためなのか……。


 ……まあなんにせよ侵入した以上そのことを考えてもしょうがないか。


「ここだ。お前らはひとまずこの兵舎で待っていろ」


 うんこさんはめんどくさそうに人のいない空いている兵舎を親指で指差す。


「俺は城門の方に戻るけど大人しくしとけよ」


 うんこさんはそう言うと俺らの返事を聞くことなくさっさと行ってしまった。


 なんか結構投げやりな感じだ。もっとがっつり見張られると思ってたけどそうでもないみたいだ。


 蓮ちゃんたちを兵舎に入れると念のために周囲を確認して人がいないか調べる。


 幸いほとんどの兵士は襲撃に備えて城門に向かっているようで兵舎の周りには人はいなかった。襲撃に備えて迅速に動ける辺りをみる兵の練度は高いみたいだ。これなら普通に攻めても落とすのは難しいはずだ。今回はそのおかげで動きやすいわけだけど。


「九十九殿、外の様子はどうであった?」


 外の様子を窺って戻って来ると着ていた服を動きやすように着立て直した蓮ちゃんが小声で聞いてくる。


「大丈夫。周囲には人はいないみたいだ」


「そうか」


 俺の言葉を聞いて、蓮ちゃんはふーっと安堵するように息を吐く。


「まさかこんな手で城内に侵入するとは思いにもよらなかったぞ九十九殿」


「まったく、いつ敵に気付かれるのか冷や冷やしました」


 蓮ちゃんに続いて栞那もホッと胸を撫で下ろす。蓮ちゃんの部下の他の三人も同じように安堵していた。


 そんな冷や冷やだったのか? 俺としては十分いけると思ったけどな。


「けど安心している暇はないよ。敵だっていつまでも城門に釘づけできるかわからないし」


 今城門の前には置いてきた残りの部隊のメンバーが囮になって待機しているが、それが囮だと気付かれるのも時間の問題だ。


 俺の予想じゃ三〇分ってところか。敵も城門の前に集まって三〇分も何もせず待機されたらおかしいと異変に感じるはずだ。一応援軍が来ると見せかけるために砂埃をあげてもらっているが一向にやってこない援軍に敵も何かあると勘付くはずだ。


「しかしこっちはたったの六人ですか」


 栞那は兵舎にいるメンバーを見渡し不安そうに言う。栞那の不安ももっともだ。これだけの城を攻め落とすのにたった六人しかいないのだから。


「気持ちはわかるがしょうがないさ。さすがにこれ以上人が増えれば敵に怪しまれるからね」


 いくらどさくさに紛れたると言っても人数が多ければ敵も不信に思うに決まっている。


 一応鳥たまたま綱軍の兵を見て一緒に逃げてきたという理由も考えていたけど城門の兵士のおっさんはそこまで深く追求してこなかった。まあ敵が近づく姿があって冷静に物事を判断できる人間なんてそうそういないからな。それでも三人がいいとこだろう。四人五人になってくると怪しまれるリスクが上がってくる。ここで無理をして城内に入れなかった元も子もないからな。


「なに、敵は蛟傭水のみ。一対六と考えれば何も恐れる必要はない」


 蓮ちゃんはみんなの不安を払しょくするように槍を力強く振り活を入れる。さすが蓮ちゃんカッコいい。


「そのために敵兵が城門に集まるようにこちらの兵を弓の射程ぎりぎりで待機させたのだろう」


「まあね」


 如水城の守りは堅固だが敵も万全の状態ではない。蛇骨軍は紫苑を討つために多くの兵力を割いている。そのせいでこの城を守る兵も本来よりも少ない。だから城門を破らせないために城に残っている兵たちは城の中の守りよりも城門の守りを強固にすべく城門へと向かわないといけない。さっきのうんこさんもそんな理由でさっさと城門へといってしまったんだろう。


「九十九殿が敵でなくてよかったと心から思う」


 フッと苦笑する蓮ちゃん。


「確かにそうですね」


 しみじみと蓮ちゃんに同意する栞那。


 二人は何を共感しているのだろうか?


「では行くとするか」


 そう言うと善は蓮ちゃんは急げと言わんばかりに城へと足を進めた。俺たちも蓮ちゃんの後を追う様に城へと駆け出す。


 そして走ること一〇分。俺たちは難なく如水城の目の前までたどり着くことができた。途中で何人か兵士とすれ違ったがバタバタとしていたせいでこちらのことを気に留めることは暇はなかったようだ。


 だが如水城の前までやってくるとさすがにすんなりと中には入れてくれない。


「おい、止まれ! 城に何の用だ!」


 一直線に城へと駆けてくる俺たちを見て不審に思った城を守る兵が槍を向けて声をかけてくる。


「九十九殿。覚悟はよいか」


「わかっている」


 俺は覚悟を決め刀を抜く。こっから先は策なんてない。力押しで天守にいる蛟傭水のところまでいくしかない。殺さないなんてあまいことをする余裕なんてない。ここで負ければ馬頭の想いも無駄にすることになるのだから。


「行くぞ!」


「「「「「おお!」」」」」

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