『エピサブタイトルに無理がありすぎだろローグ』略してエピローグ
冴えない意識の中、重たいまぶたを開く。
私は仰向けになっていた。動こうとするが、体が思うように動かない。
「絵里!目を覚ましたのね!」
近くで、母親の明るい声が聞こえる。
「お母さん…私…一体……」
「あなた、トラックに跳ねられて重傷だったのよ!?2日間生死をさまよっていたの!もう、心配ばっかりかけて……」
母親が、ハンカチで涙を拭う。
トラックに跳ねられた…?ああ、記憶がよみがえってきた。
私は、小坂君と待ち合わせしてた映画館に向かう途中に、トラックに跳ねられたんだ。
それで、跳ねられた後、誰かに会ったような…。
ん?でも、跳ねられた後に会うっておかしいな…。
よく思い出せない……。
その時、病室の扉が勢い良く開いた。
「本田!」
こ、小坂君!?
な…なんで小坂君が…!
「よかった…!マジでよかった!」
小坂君は涙を流しながら、私を強く抱き締めた。
「え…なっ……!」
私の顔がどんどん熱くなっていく。
「“だった”じゃなくていいんだな!?現在進行形でいいんだな!?」
「なっ!小坂君どうしたの!?よくわかんないよ!」
「…?…覚えてないのか……?」
―――――。
一週間後。
病院の一室。
小坂君の話は、にわかには信じられなかった。
だって私が死ぬって言って、足がなくなって、告白して…。
でも…小坂君が好きなことは、誰にも言ってないし。悟られるような事もしてないし……。
結局、それがきっかけで、私達は付き合うことになった。
ケガは、頭に異常はなかったけど、折れた腕と足で当分入院が続きそうだ。
でも、小坂君は毎日お見舞いに来てくれるし…。
言うことはなし!
ガチャッ
ほら!さっそく……
「おいーっす!」
……違った…誰かな?
「…どなたですか…?」
「君の心の中のお兄ちゃんさ。」
男の人は、真剣な口振りで喋る。
言ってる事がよくわからないけど…。
男の人は、私の頭に手を乗せて、優しく微笑んだ。
「ま、元気ならいいんだ。じゃな。」
男の人はそう言うと、背を向けてドアの方へ歩きだす。
「…まって!」
男の人は、ドアノブを掴みながら止まる。
「私…あなたにお礼を言わなくちゃいけないような……。」
「お礼なんかいらねぇよ。俺は成仏屋っていう職務を全うしたまでた。」
男の人はそう言うと、手を上げながら去っていった。
私は閉まるドアをみつめながら、つぶやく。
「…ありがとう……成仏屋さん……。」
―――――。
「う…ひっく…うぅ…」
人込みの中、一人の少女が泣いている。
少女には誰も気付かない。
一人のサラリーマンが、走ってくる。
サラリーマンは、少女に気付く素振りは全くない。
そしてそのまま、サラリーマンと少女がぶつかった。しかし、サラリーマンは少女を通り抜け、何事もなかったように走り去ってゆく。
「…ひっく…誰か……」
「どうした、嬢ちゃん!お困りのようだね?」
ふいに聞こえた背後からの声に、少女は振り向く。
そこには、一人の男が立っていた。
その男は、精悍な顔立ちなのに、どこかやる気の無さそうな印象を受ける。
「……誰…?」
「俺か?俺は氷室耕一。成仏屋だ。」
男は、少女に優しく微笑んだ。