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2章 1話







離婚から3年、初めて会った時の匠は4歳で結婚生活はおよそ1年半。


12月生まれだった匠は、今はもう9歳になっているはず。


元夫のすぐ上・・・・と言っても13歳上の義姉から電話が入ったのは、専務が纏わりつきはじめて2ヶ月あまり経った頃の昼休み中。


「匠がね・・・・・・お母さんのとこに行くって家出したんよ・・・・。いっとらんよね?」


『は?だってここの住所は知ってるんですか?』


「うん、あの子はうちで育てとったし、手紙も見せとったから・・・・・」


『は?育ててって・・・・・あいつは?』


「あいつがいつまでも、こんな田舎におると思うとったん?とっとと出てったわ」


『・・・・・・・こっち来たら刺しますよ、あたし・・・・・・』


「ああ、そんくらいせんと、分からんやろね・・・あんバカは」


『で、匠はいつ?』


「今朝早よう出てったらしいわ・・・・貯金とか有り金全部持って」


主要新幹線乗り場のある駅までは、最寄り駅から1時間はかかる。


そこから新幹線に乗ったとしても・・・・・。


『早くても夕方・・・・・・』



3年ぶりの匠を捕まえたのは、すでに暗くなった午後7時のこと。


一緒に専務もついてきた東京駅。


そこで受けた保護通知連絡で、やっと居場所がわかったのだ。


『匠・・・・・・』


「・・・・お母さん!!」


飛びついてきた匠を抱きかかえて、職員の方にお礼を告げる。


幸い無賃乗車をしてきたわけではなかったのだが、まともに食べてなかったらしい空腹を訴える匠を連れてレストランに向かった。


『匠、こんな遠くまでよくもまあ一人で・・・・・無事に着いてほっとしたわよ』


「ごめんね・・・・お母さん」


『謝るのはおばさんにでしょ?心配して連絡くれたんだから」


「うん分かってる」


『でも急にどうしたの?』


「・・・・・・僕、お母さんと暮らしたいって思って出てきたんだ」


『え?だってお母さんは・・・・』


「うん、僕の本当のお母さんじゃないんでしょ?分かってる。でもお母さんがいいんだ・・・・・」


『とにかくそれはおばさんたちとよく話してからね?勝手には決められることじゃないのよ・・・・・ごめんね』


「うん、でもそれまではお母さんのところにいてもいいでしょ?」


『ん?ああ、いいわよ』


一緒に来ていた専務は、黙って話を聞いていた。


「ところでお母さん。このおじさん、誰?」


黙って話を聞いていた専務のほうを向いて、匠がそう聞いてきた。


『ああ・・・・・・お母さんの会社の専務さん・・・・・』


若干しどろもどろになりそうになったけれど、やっとそれだけ口にする。


「違うだろ?綾乃・・・・・・。確かに俺は専務でもあるけれど、君の婚約者でもあるだろう?」


『こ・婚約?』


そんな話は聞いてないぞ!!


「はじめまして・・・・・匠君。君のお母さんと結婚する高槻亨です。よろしくな」


にっこりと笑って、匠を見つめた。


「ふーん、そうなんだ。でも僕がいるけど、おじさん平気?」


「ああ、君の一人や二人、全然いてくれて構わないよ」


「そう?なら良かった。これからよろしくお願いします」


・・・・・・・・・・・・・・・・・勝手に話を進めるなってば・・・・・・・。


あたしは完全に、その時絶句していて話の輪には加われなかった。




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