1章 5話
『な・・・・・・なんでそんな勝手なことを!!』
1000万あったけど、司法に頼んだりして今の残金はおよそ半分。
あと3年頑張れば、きれいさっぱり出来たはず。
勝手すぎる!
「確かにあと2・3年頑張れば清算できたんだろうけど、その間ずっと綾乃は元のご主人に縛り付けられたままだろう?俺はそれが我慢できなかったんだ」
『だからって代わりに払う必要はないじゃないですか!!』
「それで3年くらいの間待てって?そんなのもう待っていられない」
まっすぐな視線があたしを射抜くかのように、すべてを絡めとられていく感じがした。
「綾乃・・・・・俺が何年お前をみてたと思うんだ?」
あたしが短大を出てから入社して7年。
結婚しても、離婚をしても・・・・あたしはこの会社に勤めてきた。
専務が営業部から離れて4年・・・・・・・それまではずっと彼の部下だった。
『そんなの・・・・・知るわけがないじゃないですか・・・・・・・』
「・・・・・・・・・・・・・・・7年だよ」
『え?』
何か信じがたい言葉を聞いたような気がする。
「7年と言ったんだ。綾乃が営業に来てからずっとだ」
『え?だってあたしはその間に結婚もしてますよ?』
「ああ、そうだな。でも諦めることが出来なかったんだから仕方ないだろう?」
『・・・・・・・・・・・・・・・』
あたしが腰掛けていたソファーの隣に腰を下ろすと、あたしの手からコーヒーカップを取り上げてテーブルに置く。
「俺のこと、嫌いか?」
『・・・・・・そんなことはありませんが・・・・・・・』
「じゃあ・・・・・・俺を受け入れて?」
あたしの手を取るとちょっと強く引いて、あたしは専務の腕の中に飛び込む形になった。
『せ・・・専務・・・・・あの・・・・』
「亨。もう誰にも渡さないから・・・・これ、決定事項だからね」
『いや、でもそれは・・・・・・』
「綾乃に今付き合っている相手がいないのは分かってるよ。だから拒否は受け付けないよ」
『お、横暴です!』
「横暴でも何でも、綾乃が欲しかったんだから諦めて」
そう言うとさも嬉しげな表情を浮かべて、あたしを抱きしめた。




