外伝 2
匠視点
お母さんの従兄の勝己おじさんに、ウインドを教わり始めて1ヶ月。
元々瀬戸内海の海で育ったし、慣れてたのもあってボードに立てる様になったところ。
でもまだ、すぐにセイルのコントロールを失って倒してしまう。
「匠くーん、がんばって~!!」
同じ講習に参加してた女の人たち。
やっぱりあわないってやめちゃったり、別の日にレッスンを受けてたりする・・・・んだけど、なぜか今日もおるんや。
勝己おじさんは、鬱陶しそうな顔しとる。
僕も正直気が散る。
でも一応、手は振っておく。
「きゃー!!!!!」
あー・・・・・またおじさんの眉間のしわが深くなるな・・・・・。
「おい、綾乃!!!!」
頭から湯気を出すみたいな勢いで、カフェコーナーで働くお母さんに噛み付く。
それに冷たい一瞥を与えるだけのお母さん。
「おい、匠をどうにかしろ」
『匠が何?』
「うちのアイドル化してて、女共が騒いで講習にならん!」
『一緒にやらせなきゃいいだけじゃない』
「入れなくても来て騒いでるんだ!」
『そんなのあたしのせいじゃないだろうが!』
あー・・・・・また始まった。
でもこの従兄妹同士の口論は、最近の名物になっている。
一回り近く下のお母さんに、おじさんはいつも敵わないんだ。
『匠、ちょっと相談なんだけど』
「何?」
『あんた、商品になりなさい』
「お母さん、意味不明」
『【匠との会話、ツーショット写真つき。ランチセット】を作るのよ』
「えー、めんどくさいよ」
『分け前はやるぞ?』
「・・・・・・・・・いくら?」
『そうだなー、1セットにつき¥100』
「・・・・もう一声」
『・・・・・・・・¥150』
「・・・・¥200」
『・・・・足元見るわね』
「当たり前でしょ?僕の労力考えて?」
『仕方ない、手を打とう』
かくしてそれは本当に売り出され。
『これでいいだろ?店の売り上げも上がって、一石二鳥♪』
【匠との会話、ツーショット写真つき。ランチセット ¥1,500】
蘭ちゃんも、朱音さんも売り上げが上がって嬉しそうだ。
苦虫を噛み潰したような顔なのは、勝己おじさんだけ。
当然僕の小遣いも増えたし、これで欲しかった新しいゲームソフトが買える・・・・・・。
1回平均10人で¥2000・・・・・1ヶ月4回で¥8000・・・・・・。
・・・・いつまで続くかは分からないけどね。
今のうちに稼いでおこうっと・・・・・。