外伝 1 SS
綾乃の従兄、勝己視点
「おい、匠をどうにかしろ」
匠とは、従妹の綾乃の義理の息子だ。
血のつながらない綾乃を頼って、実の父の元から小学生の身で上京してきた。
それ以来一緒に暮らしており、少し前に上司と結婚した綾乃の頼りになる長男坊でもある。
その匠が、俺のところでウインドサーフィンの講習を受け始めた。
元々、瀬戸内育ちの彼は泳ぎも達者で、運動神経もいい。
だから、割とあっさりボードにも乗った。
『匠が何?』
上司に嫁ぎ退社した綾乃は、うちのカフェのスタッフでもある妻の蘭と、朱音のスカウトでうちで働いている。
その関係もあって匠は入り浸りになっている。
「うちのアイドル化してて、女共が騒いで講習にならん!」
『一緒にやらせなきゃいいだけじゃない』
「入れなくても来て騒いでるんだ!」
『そんなのあたしのせいじゃないだろうが!』
鬱陶しい・・・・・そんな顔してこちらをにらみつける綾乃。
ぬ・・・・・昔のグレ具合はうちの蘭と変わらないから、こいつを怒らせると怖いんだった・・・・・・・。
『これでいいだろ?店の売り上げも上がって、一石二鳥♪』
蘭も朱音もホクホク顔だ。
【匠との会話、ツーショット写真つき。ランチセット ¥1,500】
・・・・・・・・・・・・さすがは元営業部勤務だよ。
息子まで商品にしてやがる。
でもそんな目論見に踊らされるお嬢さん方が、かなり殺到しているのは間違いない・・・・・・・。
匠自身も、小遣い(分け前ともいう)を貰えてただ飯つきでホクホクしているのはいうまでもない・・・・・・。