終章 2
「なんだ?だめか?」
『別に~』
あたしって、天邪鬼だなって思う。
ほんとはまったく血のつながらない匠までも、そうやって自分の子として受け入れてくれて・・・・・そんな記念のお酒まで造ってくれて嬉しいのに。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・あっ・・・・痛っ・・・・・・・・・・』
「どうした?」
『ん~・・・・来たのかも・・・・・』
慌てて病院に持っていく荷物を車に放り込み、亨さんの介助で乗り込む。
お腹の子は一人じゃないのが分かって、だから本来は帝王切開の予定だった。
そのための入院を3日後にするはずだった。
予定外の陣痛だった・・・・・・・・・・。
病院に到着して数時間後、緊急帝王切開で無事に出産を終えた。
生まれてきたのは、二卵性の女の子2人。
お互いにはそんなに似ていないのに、何故か亨さんにはよく似ている。
「やったー!僕の妹だ!でも弟も欲しかった・・・・」
「母さんに頼めばいい」
「そっか!お母さん!次は弟ね!」
『却下だ・・・・・・・・。こんなに痛いの、もう結構です・・・・・・・』
「えー!なんでー!」
「もう一人くらい余裕でいけるだろ」
『やだ』
女の子が2人加わったことで、一気ににぎやかになったあたしの生活。
あの日、貴史から電話が来て、その後に亨さんがやってこなかったら。
匠が家出して、上京してこなかったら。
こんなににぎやかにならずに、今でも一人でのんびりやってたんだろう。
これからも多分、こうやって毎日が大騒ぎで過ぎていくんだろう・・・・・。
幸せではある・・・・・大切な人たちに囲まれて。
それでもそっと・・・・誰にも聞こえないように溜息をついた。
いやだとかじゃない・・・・きっとこれは幸せならではの溜息なんだと思う。
『ほら、亨さん!匠!泣いてるよ!!』
一層子煩悩になった亨さんと、すっかりシスコンな匠が、ミルクとオムツを抱えて走っていく。
楽しんでいこう・・・・・この5人で。
そう思いながら、楽しげに双子の世話をする二人を見つめた。