終章 1
「お母さん・・・・・大丈夫?」
5ヶ月を過ぎた頃から、既に臨月か?って位の大きなお腹になったあたし。
腰痛や股関節痛が酷くて、横になることしばしば。
匠は弟妹が出来る喜びもあるけれど、手伝えることは何でもやってくれる。
さすがは4年生!と思う。
『うん、ごめんね~。手伝わせてばっかりで』
「大丈夫。だってもう5年生やん。手伝いくらい出来んのはみっともないやん?」
『サンキュー、助かる』
「とーちゃんは何しとんねん・・・・」
『忙しいんでしょ』
「そんなん言っとる場合じゃないやん」
亨さんと結婚することになってから匠は、素直に亨さんを父と慕っている。
実父とは元々疎遠であったし、今も連絡を取ることはしない。
そして只今、亨さんはめちゃくちゃなスケジュールで仕事に励んでいる。
かなりの高位の役職についてるのにも関わらず、何をやってるのか・・・・役職以上に働いてるわけで。
「ただいま」
やっと帰ってきたと思ったら、既に23時を回ってる。
『お帰り・・・・匠がたまには早く帰ってこいって怒ってたわよ?』
「あ~・・・・そうだよなぁ」
匠のお怒りの原因はあたしの不調だけじゃない。
『もうずっと、対戦が止まったまんまなんだけど!・・・・・だって』
そう、ゲームの対戦相手が帰ってこないとお怒りなのだ。
「あー・・・・・そっちか(苦笑)もう少しで片付くからって言っておいてくれ」
『せめて朝食くらい一緒にとって、自分で言ったら?』
「うーん・・・でもほんとあと少しなんだよ」
『何が少しなのか、こっちはまったく分からないんだけど!』
何をやっていたのかがわかったのは、出産まであと10日という頃。
「やっと完成した!これでやっと、今まで通りに過ごせる・・・・・」
『完成って何が』
「おいおい、俺たちの会社は何をやってると思ってる?」
『ん?』
「何の会社?」
『酒造メーカー・・・・・・だけど』
「そう。それだよ。新酒をね、創ったんだ・・・・出産に併せて」
『はい?』
あたしたちが家族になって、匠と新しい命が加わって、その記念に・・・・と思ったようで。
「いつか・・・・・みんなで飲めるといいよな・・・・」
『・・・・ロマンチスト』
やっぱりまとまらなかったので、2分割します。