4章 5話
揉めて揉めて・・・・結局あたしが折れる形で、式場はとある海岸線にあるホテルに決まった。
仲間内での2次会は、従兄の勝己夫妻がやっているカフェを借りることにして。
去年改装をして、元々余裕のあったらしい土地にカフェスペースを広げていた。
あたしたちの暮らす家からも、勤務地からも程近く・・・・・有無を言わさずに貸切にした。
「綾~、料理はお任せでいいんだろ?」
貸切の話を持っていった時に、勝己がそう聞いてきた。
『うん、特にこだわってない。仲間内だし』
「じゃあ、こいつらに任せとけばいいよ」
こいつらとは、勝己の奥さんでもある蘭さんと、勝己と一緒にウインドスクールをやっている輝さんの奥さんの朱音さん。
基本的にカフェはこの二人が回していて、売り上げも上々らしい。
何度か食べてきているけれど、確かになかなかのものだ。
勝己と蘭さんも、結婚の時に色々あって・・・・・大変だったらしい。
でも今は、3男1女と4人もの子供に恵まれたというのに・・・・いい年したバカップルだ。
・・・・・8つ下の蘭さんの尻に、嬉々として敷かれてるといった感じでもある。
あたしが蘭さんや朱音さんと料理の相談をしている間、匠と亨さんは勝己相手にウインド談義に花を咲かせている。
「おかあさん!僕、勝己おじさんにウインド教わる!」
突然駆け寄ってきた匠が、目をキラキラさせながらそう言った。
『は?』
「亨おじさんはいいって!」
『・・・・・好きにしなさい・・・・・・』
「やった!」
この二人・・・・・何言っても聞きやしないから、既に諦めの境地にいるわけで。
「ねえ、綾ちゃん。綾ちゃん、うちで働かない?」
突然朱音さんが言い出した。
「いいね。店大きくしたからさ、人が足りないんだよね」
『・・・・は?』
「だってお嫁に行くなら、仕事やめるんでしょ?じゃあ、暇よね?」
『朱音さん・・・・・・・・』
実は、まだ仕事の件は話し合いが済んでいない。
出来れば辞めたくないのもあるが、亨さんの立場を考えると微妙なところだ。
すでに社内でも、なんとなく微妙な立場になりつつあるのを感じている。
「本当は辞めたくないんだろうけど、ほんと考えてみて。綾ちゃんなら大歓迎だから」
『はい・・・・・・』
大まかな内容と日時を決めると帰宅して、ざっとだけれど2次会の案内状を作成した。
『亨さん、こんな感じかなぁ』
そう声をかけると、背後からPCを覗き込んでくる。
「ああ、いいんじゃないか?印刷はまた明日にして、今日はもう休もう?」
帰宅したのが9時を回っていたので、匠は既に夢の中だ。
データを保存して、電源を切るとバスルームに向かった。
I don’t forget you から勝己&蘭、朱音が登場。
勝己と綾乃は、歳の離れた従兄妹設定だったんですよ、実は。
時系列的に、I don’t forget you から10年位あとのお話に当たります。
・・・・・・・じゃないと、勝己・・・・4児の父になれませんしw