3章 5話
「僕がいて、邪魔やないんだったら・・・・別にいいんやない?」
にっこりわらってそう言った。
「だってお母さん、お父さんみたいなやつと結婚せんかったら不幸にならんかったんでしょ?まあ、おかげで僕がここにいられるんやけど」
チラッとあたしを見て、すぐに亨さんに目を向ける。
「そのお母さんが幸せになれるんやったら、僕は反対せんよ」
『匠・・・・・・』
・・・・・なんだか勝手に結婚話が進んでいく気がするのはなぜだろう。
確かに亨さんとは・・・・なし崩しに関係は持ってしまった。
何かと優遇してくれるのにも、すっかり甘えてしまっている。
でも、肝心のあたしの気持ちは・・・・・どうなのか自分でもあんまり分かっていないんだけどな・・・・・・。
嫌いなのかって聞かれれば違う。
きっと、好きなんだと思う。
じゃあ、愛してるかと聞かれたら・・・・・・・・・どうなんだろう。
このところすべてが怒涛のように進んでいくので、はっきり判断できていないのだ。
「まあ、でもさ。お母さんもまだ迷ってそうだし?亨おじさんの勝負はこれからっぽいよ?」
「ああ、まあそうだな。頑張るから応援してくれよ?」
「うん、勿論」
『ちょ、ちょっと!そこで団結しないでよ!』
「じゃあ、お母さんも迷ってないで、さっさと決めたら?」
『ぐ・・・・・・・・・』
くそー、子供のくせしやがって!!
男同士で勝手に団結しやがってーーーーーー!!!!!!
「とりあえず、今夜から迫るからよろしくな、綾乃」
『き、却下です!!』
「却下は聞かないよ」
頑張って・・・・・そう言って笑いながら自分用に宛がわれた部屋に、お土産のゲーム機を抱えて入っていく匠。
「頑張ってだってさ」
『賄賂なんか与えてずるいです!』
「賄賂じゃないよ。あれは約束の品だ」
『でも賄賂になってるじゃないですか!!』
「いいから・・・・・もう黙って・・・・」
そう言うと、あたしの腰と後頭部をがっちり押さえ込むと、深く深く唇を重ね合わせた。
『んん・・・・・・』
「・・・・・愛してる・・・・・」
角度を変えて、何度も何度も唇を重ね、舌を絡み合わせる。
思う存分、あたしの口内を蹂躙しつくしながら、背筋に沿ってさするように手を這わせていく。
そしてあたしはというと、その深いキスに翻弄され・・・・いつしか体の力が抜け切ってしまった。
その体をすっかり亨さんに預けて、いつしか彼の愛撫を受け入れ始めていた。