3章 4話
「やあ、匠君。久しぶりだね」
その夜、突然訪ねてきた亨さん。
手にはなにやら紙のショッピングバッグを持っている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・しかも某大手電器店のものだ。
「あ、亨おじさん!いらっしゃい!それってもしかして・・・・・」
「うん。約束のゲーム機とソフトだ」
「やった~!!ありがとう!ねえ、いっしょにやろうよ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・ゲーム機?約束の?
そんな話は聞いていない。
『匠。亨さん・・・・・・いつの間にそんな約束してたんですか?聞いてませんけど』
「お母さん、固い!男と男の約束なんだからいいんだよ!」
「そう。男と男の約束だったからな」
『む・・・・・・・・・・そうですか。じゃあ、匠、夕飯はおじさんと二人で作って食べてくださいね』
「え~!それは無理!」
「悪いが俺も無理だ・・・・・」
亨さんは外食か買ってきたもの、もしくは週に3日来ると言うお手伝いの方の作ったものを食べている。
匠同様、まともに作れるものはないのだと思う。
渋々と言った感じで、この間話し合いのために、匠と出かけたときに約束したのだと言った。
『まったく・・・・・・二人とも、内緒にするのは金輪際やめてくださいね。じゃないと、本気でストライキ起こしますよ!』
夕飯を済ませ、宿題も終わらせた後1時間だけの約束でゲームを始めた匠。
その背中を見つめ、これからのことを思案する。
「大丈夫。匠君には君だけじゃない。俺もいる・・・・・」
『ありがとうございます・・・・でも・・・・』
「でも・・・・は聞かないよ。俺は綾乃を手放す気はないし。匠君がいようが・・・それは変わらない」
『本気で言ってるんですか?匠はあたしにとって息子ではありますけど、血縁はないんですよ?』
「養子縁組したと思えばいいんじゃないか?俺は自分の子供が出来ても、わけ隔てなく育てていく自信はあるよ?」
『それはあたしも同じですけど・・・・・・・でも・・・・』
「まさか一生一人でいるつもりじゃないだろう?だったら俺で手を打ったら?」
『・・・・あっさり言いますね・・・・・』
「踏ん切りもつける時期は必要だろ?それにもう、何もない関係じゃあないんだし?」
『な・・・・・・・』
「本当のことだろ?」
焦ったあたしを見下ろしつつ、目が妖しい揺らめきを見せた。
「お母さんと亨おじさん、本当に結婚するの?」
突然、ゲームをしていたはずの匠の声がこちらに向かって発せられた。
『え?や・・・・あの・・・・』
「匠君・・・・・」
ゲーム機を持ったまま、リビングに座り込んでいる匠の方へ、亨さんが歩み寄っていく。
「匠君・・・・・・。お母さんと真剣に結婚したいと思ってるんだ・・・・・だめかい?」
そう静かに、でも真剣に匠に向かって問いかけていた。