1話 なんでここに戦国武将??
【あらすじ】
幽霊が見える体質の中学生・白石萌愛。ある日、学校に明智光秀の亡霊が現れて、「戦に行きたいでござる」と相談してきた。令和に戦なんてないと断るつもりが、あまりに真剣な顔に断れず、放課後に現代のことを教える約束をしてしまう。
ところが、そこへ鎧姿の「あの人」まで現れて……。
押しに弱い中学生と、礼儀正しすぎる戦国武将たちの、毎日のように絡まれる、ちょっと変わった日常の話。
皆さんは、幽霊が見えますか?私はどうやら幽霊が見える体質みたいで、朝、学校に行く時も、教室の中でも、トイレの中でも、なにかにつけて幽霊が私に話しかけてきます。
「お前誰や?どこん人?」これは、大阪の幽霊。
「おい、やーたーやが?わん、みんちきしてから、ぬーそーがー?」これは、沖縄の幽霊。そんなある日、
「せっしゃ、明智光秀。戦に行きたいでござる。」
戦国武将の幽霊がこの学校に出るようになった。
「いや、そんなこと私に相談されても困るし、今、令和だよ?戦なんてどこもやってないよ。」
戦国武将であってもしょせん、幽霊。タメ語を使う私。すると、明智光秀と名乗るこの戦国武将はびっくりした顔でこう言った。
「なんと、今の世は、戦がないと…。そうじゃ、豊臣、豊臣秀吉はあのあとどうなったんじゃ!!」
あぁ、そっか、この明智光秀は豊臣秀吉さんに討たれた武将だもんね。
「あのあと、秀吉さんは天下統一したけど、亡くなったあとに徳川家康が関ヶ原の戦いで勝って、最後は豊臣家を滅ぼして天下を取ってるわよ。」
「なんと!豊臣秀吉め。よくも。。それにあのタヌキめ!!せっしゃが死んだ後に天下を取っただと??」そう言って明智光秀は腰にある刀を取り始めた。
「いやいや、待って待って、あなた死んでるんだからこれ以上争うことなんてしなくてもいいじゃん!!それに、この時代に人殺したら犯罪!!死刑だよ死刑!!いやでも、幽霊同士が殺し合う。。んー…。」
何気に悩む場面…。ではない!!私が言いたいのはそう言うことじゃない!!
「とにかく!!明智光秀さんのその戦がしたいというのは無理なの!!できないの!!わかった?」その言葉を聞くと明智光秀は抜きかけた刀をさやにしまい、少し、キョトンとした表情で、
「そうか…。そう言う時代もあるんじゃな。。それにお主と出会ったのも何かの縁じゃ!!この令和という時代の事を教えてくれぬか。せっしゃ、無知なもので、天下を取るにはやはり策を打たねばと思うのじゃが。」
明智光秀は、かなり真剣な顔で私に言ってきた。天下を取るとは言っても、令和の時代でそんな事はできない。でも、、そんな真剣な顔で言われたらなんだか断れない。。
「じゃー、今日の放課後でいい?休み時間に1人でトイレで戦国武将と話してるなんてみんなに知られたくないから…笑」
明智光秀はトイレの天井に張り付きながら私に話しかけていた。こんなの友達に知られたら絶対にキモいって言われる(笑) そんなこんなで私は、困っている、明智光秀という戦国武将に絡まれ、今日の物語はスタートする。
それから、放課後になって明智光秀に会うために教室に戻った。あの後、私についてきて、ずっと黒板の前に立って、授業中も先生に話しかけていたが、見えない先生は無視を続けて。。まぁ、そんなこんなで1度は帰ったふりをしてトイレに行き、そしてまたこの教室に戻ってきた。明智光秀は、ずっと、その黒板の前で重たそうな鎧を着て、立っていた。そして、私を見るなり、
「おぉ!!来たか。そなたを待っておったぞ。放課後と言うのは、誰もおらんことを申すのじゃな。そうじゃ、せっしゃ、そなたの名前を聞いておらぬ。お主、名はなんと申す?」
そういえば、言ってなかった。普通に名乗る気もなかったのだが。。(笑)
「あ、私?私は萌愛。白石萌愛って言います。私こそ、自己紹介まだでごめんね。そんで、なんでしたっけ?今の時代について知りたいってことだったっけ?」
一気に本題に入り、今日は早く帰りたい。なぜなら私の好きなアーティストが出る番組がある…。
「萌愛どのか。変わった名前じゃな。せっしゃらの時代にはない名前じゃが、よし、覚えておこう。それでそうじゃ、今の世はせっしゃから見てもわかるほどに時代が変わりすぎている。ここにある全てのものがせっしゃにとって初めて見るものなのじゃ。一つ一つ、説明してくれぬか?」
ん、まてまて、一つ一つ?あの。私は今日、帰れるのだろうか。それに、人の名前を変な扱いするな!!どこにでもいる中学生の名前だっつーの。
私は「はぁぁ。」とため息をした。すると廊下からガシャガシャという音がした。
「敵襲か!!!」そう言い、明智光秀は刀をとる。
「いや、絶対違うから!!刀しまって!!!で、でも急に何かしら。」
私はとりあえず教室のドアを開けた。するとそこには、はんにゃのお面を被って、明智光秀のように鎧を着た、戦国武将が立っていた。それに思わず私は、
「うわぁー、なにー!!」
その形相にびっくりしてその場に座り込んでしまった。いわゆる、腰が抜けたのだ。
そのはんにゃのお面を被った戦国武将はガシャ、ガシャと音を立てながらそのまま明智光秀に近づいていった。雰囲気。なんかヤバいって。
「なにやつ!!お主、名を申せ!!」と明智光秀はいった。するとこのはんにゃのお面を被った戦国武将はこう言った。
「ワシの名前を忘れるとはいい身分じゃの明智。この440年あまり。お主を殺すためにワシは生きてきたというのに。。」
鈍く低い声。その声を聞いて、明智光秀は刀を落とした。私からもわかる。この戦国武将はただ者じゃない。威圧感というかなんて言うか、そういったオーラがいかにも違う。ヒリヒリともジリジリと肌に感じる恐怖。私も、明智光秀も1歩も動けなかった。
「ま、まさか。。お、織田、信長、、様。ですか。」
その名前は、誰もが知っている戦国武将の名前だった。すると、はんにゃのお面を被った戦国武将は少し高笑いをし、そのお面を脱ぎ捨てた。そして、こう続けた。
「ほぉ、ワシの名前、覚えてるではないか。褒めてつかわそう。まぁ、お主は斬首じゃがな。」
すると織田信長は腰に着けていたさやに手を伸ばした。明智光秀は1ミリも動いていない。その圧倒的な圧力に彼は制圧されていた。こいつ、ヤバいって、このままじゃ。。このままじゃとんでもない事が今から起きてしまう。私が、私がな、何とかしなきゃ。なんか、言わなきゃ。
「あ、あの。織田信長。さま。」なんか、様って付けないと殺されそうな感じがしてついつけてしまった私。
「なんじゃ小娘。お主から死にたいのか?」そう言って織田信長は私に向けて刀をとった。刀の刀身が私の首元にクッと近づいてきた。
「ちょちょちょっとまって!!何をどう考えてもそう言う発想にならないでしょ!!いま、私が言いたいのはなんで、斬首なのかってことよ。」
斬首。つまり、織田信長は明智光秀を殺そうとしている。それは止めなければ。それに、私だって、殺される。後ろに後ずさりをするように2歩ほど下がる私。すると織田信長は、
「そんな事もわからぬのか小娘。このハゲはワシを騙して、ワシを殺したのだぞ?まぁ、殺したと言うよりもワシは無念のまま自害したのだが。このハゲがワシを裏切らなければワシは天下をとっていた。そして国の安泰、争いのない世の中をワシが作っていたはずなのじゃ。それに、無念なまま亡霊となり、この時代になりこのハゲにまた会ったのは逆に何かの縁じゃ。ワシはこやつを殺して天下を取り直す。そしてワシのできなかったことをまた1からするのじゃ。」と、織田信長はいった。
その語っている様子はまるで自分がやりたかった事ができなかったことを悔やんでいる少年のようにも見えた。天下統一目前で死んだんだもんね。でも、織田信長がやりたかった事って、そう言うことなのか。
私は、震える足でなんとか立ち上がった。刀を向けられたばかりで、膝はまだ笑っている。でも、言葉で説明するより、見てもらったほうが早い気がした。
「あの、信長さん。ちょっと、これ見てください。」
私は窓を指さした。
「……なんじゃ。」
信長は怪訝そうに眉をひそめたが、ガシャ、ガシャと鎧を鳴らして、ゆっくりと窓際に歩いてきた。いつの間にか、私に向けられていた刀は下りていた。
窓の外では、部活帰りの生徒たちが校庭を歩いていた。ふざけて肩をぶつけ合ったり、コンビニの袋を振り回したり。誰も鎧なんて着ていない。誰も、明日の戦の心配なんてしていない。
「……あの童どもは、なぜ刀を持っておらぬ。」
「持ってないです。持たなくていい時代なんです。」
信長は何も言わず、長いこと窓の外を見ていた。
「あの、うまく言えないんですけど。」
私は、小さく息を吸ってから続けた。
「信長さんが亡くなったあとも、日本はずっと戦ばっかりでした。秀吉さんが天下を取って、そのあと家康さんが豊臣家を倒して、江戸幕府を開いて。それでも、その後にも、戦争でたくさんの人が死にました。何千万人も。」
信長の肩が、ほんの少しだけ動いた。
「それで、やっと気づいたんです。人と人が殺し合うのは、もうやめようって。憲法っていう約束事に、戦争はしませんって、ちゃんと書いたんです。それから80年以上、日本は戦争をしていません。」
中学生のくせに、偉そうなこと言ってるな、私。でも、止まらなかった。
「もちろん、今も苦しい人はいます。悲しい思いをしてる人も。でも、あの子たちみたいに、毎日笑って帰れる国になったんです。」
窓の向こうで、誰かが大きな声で笑った。夕日が校庭をオレンジ色に染めている。
「……あれが、信長さんが作りたかった世の中、ですよね。」
信長は返事をしなかった。ただ、窓ガラスに映る顔が、さっきまでの鬼のような顔ではなくなっていた。
どれくらい経っただろう。信長は、ぽつりとつぶやいた。
「……猿も、あのタヌキも。ワシの夢を、あの童どもに繋いだというのか。」
いや、本人たちにそのつもりがあったかは、ちょっとわからないけど。でも、ここで否定する気にはなれなかった。
「……そうかもしれません。」
信長はゆっくりと、私のほうを向いた。
「小娘。もし今が、ワシの理想というのなら、ワシは、どうすればいいのじゃ。ワシは無念の死をとげ、この世に存在し、目の前にかつての敵がいる。このワシに、そなたは何をやれというのじゃ。」
その声は、さっきよりずっと低くて、静かだった。
せめて名前で呼んでよ、小娘じゃなくて。……なんて、今は言えない。そんなことより、あなたのやるべき事は、決まってる。
「織田信長さん、あなたのやるべき事は、明智光秀さんを許してあげることですよ。」
その言葉を聞くと織田信長は激怒した。下ろしていた刀をまた私に向けた。
「なにを言っておるのじゃ!!許す?バカを申せ。こやつはワシを裏切ったのじゃぞ。」その表情は笑っていない。刀にも力が入っているのがわかる。1歩でも動いたら殺されるかもしれない。
「裏切った。そうだね。そうかも。でも、裏切られたにも理由があるとは思わないの?」
人が人を裏切るのには必ず理由がある。信頼している人を裏切る。人は決してそんなことはしない。
「理由?そんなもんはワシを殺すことで天下を取るために決まってるではないか。」
やっぱり。絶対そう言うと思った。
「じゃーそれ、明智光秀さんに聞いたことあんの?」
私は、少し、挑発的にそう言った。
「あるわけなかろう。ワシは死んだんじゃぞ。」
織田信長は私のその挑発的な態度にイラッとしたのか喉に刀を軽く当てた。少しだけ血が出てるのが見なくてもわかる。首を伝って、胸元に落ちる。
「じゃー、いま、聞いたらいいじゃん。その、裏切った理由。目の前にいるんだから。」
そう言うと、織田信長は明智光秀のところを見た。
明智光秀は、まだ固まってる。手を震わせ、けど顔を上げ、織田信長に向かってこう言った。
「た、確かに。信長様を討てば、天下は取れる。そう思ったのも確かです。しかし、せっしゃは信長様が自害したあと後悔したのです。織田信長様がいかに偉大で、せっしゃらの事を思っていて、その背中に何万という命を抱え、その先陣をきるその姿。せっしゃのちょっとしたおごりで、結局せっしゃは討たれ。この世でまた織田信長様に出会えた。信長様、せっしゃがいかに傲慢で、無礼な事を言っているのは承知の上で申させてください。もう一度、せっしゃを家来にしていただけないでしょうか。」
明智光秀は深々と土下座をし、ずっと、
「申し訳ございません」と呟いていた。
明智光秀のその話を聞いて織田信長は、私に当てていた刀をゆっくりと外し、刀をさやにしまった。織田信長は、明智光秀を睨みつけたまま黙っている。
「ほら、信長さん。家来の頼み。どうするの?」
織田信長は明智光秀を睨みつけていた。けど次第にその顔が緩み、
「ワシらはどうやら亡霊となってこの世に来たらしい。武士の裏切りは、あってはならぬもの。…だがの、戦のない世を望んだのは、ほかならぬこのワシじゃ。ならば家臣を許すことも、その世の理というものか。明智光秀、顔を上げい。」
明智光秀は、恐る恐る顔を上げた。
「2度はないぞ!」
その言葉を聞き、明智光秀の目からは涙が零れた。
「ありがたき幸せ。」とまた深々と土下座をした。それをみて織田信長は少しだけ笑った。
後日談なのだが、2人は仲直りをし、私はギリギリ見たかった番組に間に合った。そして、それから毎日のように明智光秀に絡まれる日々が続くようになりました。
ちなみに、織田信長は、天下統一目前で明智光秀に本能寺の変で自害に追い込まれ、その明智光秀を倒したのが豊臣秀吉で、その豊臣家を倒したのが徳川家康。ここ、テストに出るから要チェック!!なんつって(笑)
これは、幽霊が見える私の話。ちょっと変わった、日常の話。




