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Separate Memory 〜美しい地獄で生きる。その為に世界を見捨てた。〜  作者: 水瀬輝夜
Separate Memory -歪の産声-

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藍華から戻ったあの夜から、和翠の心はずっと凪ぐことを知らなかった。

自室のベッドの上、膝を抱えてスマートフォンの画面をじっと見つめる。

時計の数字が一つ進むたびに、胸の奥がキュッと締め付けられるような、それでいて熱い塊が込み上げてくるような、不思議な感覚に支配されていた。


(高橋くん、今ごろ……話してるのかな)


彼が今日、親友である久志と唯にすべてを打ち明けると決めたこと。

そして、花桜梨の日記を受け取ったこと。

それを聞いた時から、和翠の心拍数は落ち着きを失っていた。


「……落ち着かなすぎ、私」


ふぅ、と小さく息を吐いて寝返りを打つ。

シーツの冷たさが火照った頬に心地いい。

今まで、誰かの動向をこれほどまでに気に病んだことがあっただろうか。

一輝に対しても、これほど「ドキドキ」することはなかった。

画面は暗いままだ。

通知の光一つない。


「嫌われたり……してないよね」


ふと不安がよぎる。

真実を知った親友たちが彼を責めはしないか、あるいは、彼自身が過去の重みに再び押し潰されてしまわないか。


(もし、彼が一人で泣いていたら?もし、もう私が必要ないなんて思われたら?)


ネガティブな想像が頭をかすめるたびに、和翠は枕をぎゅっと抱きしめた。

けれど、それ以上に「ワクワク」している自分もいた。

すべてをさらけ出した後の彼は、きっと今まで以上に強くて、優しい顔をするはずだ。

その顔を、一番近くで見たい。


「……あ」


その時、手の中でスマートフォンが短く震えた。

和翠の肩が跳ねる。

心臓がうるさいほどに脈打ち、指先がわずかに震える。

画面を点けると、そこには待っていた名前からの通知。


『全部、話してきた。……ありがとう、先輩。先輩が隣にいてくれたから、俺、逃げずにいられました』


その短い文章を目にした瞬間、和翠の口元が、自分でも驚くほど緩んだ。


「そっか……。よかった……っ」


安堵のあまり、力が抜けてシーツに顔を埋める。

ドキドキしていた胸の騒ぎが、ゆっくりと、幸せな余韻に変わっていく。

和翠は、まだ熱を帯びた指先で、大切に、大切に返信の文字を打ち込み始めた。


「お疲れ様。明日、駅で待ってるね」


送信ボタンを押した後、彼女は窓の外に広がる秋の夜空を見上げた。

月明かりに照らされた風景が、昨日よりもずっと輝いて見えた。


to be continued.

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