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Separate Memory  作者: 水瀬輝夜


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1/1

scene.01



はらはらと音もなく舞い散る。


これは夢?


沈んでいく感覚__


手を伸ばそうと身体を動かすが。


動かない。


あれ、あたたかい温もり__


安心する。


そう、これは大切な___





「なんで新学期早々走ってんだ〜」


少年はリュックサックを背に全速力で走っていた。


玖珂創くがはじめ殿。オマエもですかな?」


後から追いついて来たメガネを掛けた少年が並走する。


一ノ瀬颯いちのせはやてもじゃないか?」

「そうですね」

「それで、なんだ?メガネ」

「ん?オレちのメガネ姿に惚れたか?」

「頭にもうひとつあるが、新しいファッションか?」

「ん?……のあ〜〜、朝見つからないと思ったらこんな所に、これは世界政府の陰謀か?」

「じゃ、お先に失礼」


玖珂創と一ノ瀬颯、二人はそんな日常会話をしながら学校を目指す。


「ちょっ、置いてくなよ〜」

「新学期早々、颯と一緒に通学は嫌だ」

「オマ、ストレートに言いすぎですぞぃ。ん、ちょと待てよ。これは、ギャルゲで言うところの照れ隠し、と言うものでは?」

「相変わらずゲーム脳だな。変わってなくてなんだろ、安心するな」

「創、ゲーム脳ではない。ギャルゲ脳だ。ギャルゲ以外に興味はない」

「スゲー、オタクアピールするな」

「アピールではなく事実であります」


颯は創に向かって敬礼する。


「オレちの数少ない友。だからな、こうして他愛無いやり取りが幸福なのだよ」

「な〜に長年連れ添った年寄りみたいな事を言ってんだよ」


創は颯を背中を叩く。


「ただ、そう思ったのだ。この長く続くかもわからない。当たり前の日常」

「また、何かのゲームの影響か?」

「……ま、そんな感じでありますな」

「また、颯のオススメ教えてくれよ。この前教えてくれたヤツ、そろそろクリアしそうなんだよ」

「そうなのか?はやくないか?」

「いや〜久しぶりに童心に帰ってやってますよ〜。そのせいで寝不足」

「睡眠はしっかり取らないと日常判断に支障をきたしますぞ」

「いやいや、颯には言われたくないのだが?」

「なにを言っとるのでありますか?オレちの睡眠はバッチリですぞよ」

「昨晩は夜更かししてないのか?」

「勿論、ギャルゲ充電完了。二時限目から寝るのでありまするよ」

「これで、成績いいんだよな。いつ勉強してんだ」

「勉強はしてない。睡眠学習でやつかな?」

「マジか?羨ましい頭してんな」

「ほら、無駄口言ってると遅刻するですよ」

「それじゃ、公園抜けてくか?」

「賛成でありまする」


創と颯はショートカットと公園に入り込む。

その時、創は足を止めた。


「ん?」

「どうした?」

「いや、先行ってていいぞ」

「おやおや、彩女あやじょの生徒さん」

「ああ、みたいだな」

「朝からナンパですかい?」

「いや、なんだろ」

「それじゃ、お先に、頑張ってな〜」

「ああっ」


創は一歩一歩と足を進めると、喉から言葉を絞り出した。


「君、どうかしたのか?」

「あ、いえ…」

「突然ごめん、怪しくないから、いや、ほら、ただ、こんな時間になにやってんのかなと」


創は身振り手振りで女の子に説明する。


「ただ、この桜の木を観ていたのです」


女の子は坦々と答えた。


「そうなんだ。樹齢千年なんて言われているから」

「千年ですね。事実はどうなんでしょうね」

「事実?」

「歴史は強者によって造られるモノ。弱者はそれに従うしかありません。世界はそう言うモノです」

「不思議な人ですね。んでもって、難しく考えすぎる」

「難しい?世界はそんなモノ。物語じゃないのですよ」

「過去も未来も関係なく。今この瞬間を楽しんだ方がいい」

「アナタは楽観的なのね」

「今を楽しまないで不確かな未来も辛い過去を楽しさに変えることは出来ない」

「では、辛すぎる過去、例えば人を殺めた人、犯罪に手を染めた人の未来はどうなるの?それをアナタは楽しい過去に出来るの?」

「……そ、れはっ」


創は突然の問い掛けに、言い淀んでしまった。


「アナタへの問い掛け、また、どこかで逢えたら答えて、アナタ自身の答えをっ」


女の子が一歩を踏み出した時、創は呼び止めた。


「あの、オレは、玖珂創。貴女は?」

「わたくしですか?」

「はい、教えてもらっても?」

「わたくしは、織姫おりひめです」

「織姫。それで、姓は?」

「あ、そうですね。久しぶり過ぎて忘れていました」

「言いたくなければ、別に構いません」

「わたくしは名は、源織姫みなもとのおりひめです」

「源織姫か、なんか格好いいと可愛いが混在している。いい名前だな」

「では、また、何処かで答えを聞かせてください」


そう言い残して、織姫は去って行った。





創は音を立て教室の扉を開き入室。


「__おし、ギリセーフ?」

「いいえ、余裕でアウトよ玖珂くん」

「えっと、……山城由衣やましろゆい先生。何故に腰に手を当てて仁王立ちなのでしょうか?」


担任の山城由衣は扉の前に仁王立ちで創を出迎える。


「勿論、この時間は新学期の、ホームルームですから、担任の私が居てはおかしいのかしら?」

「あれ〜、オレの予想では体育館で校長の長くて有難〜〜いお話し中では?」

「なるほどね〜、それも予測して遅刻して来たのね。でも残念、校長は今日は熱でお休みだったのよ。だから、今日はロングホームルームで終わりよ」

「あちゃ〜、予想はずれ〜」

「玖珂くん、終わったら進路指導室に来なさい」

「あいあいさ〜」


と、創は敬礼する。


「はぁ〜、ふざけてないで席について」

「そんなに、眉間に皺寄せてちゃ可愛い顔が台無しだよ。由衣センセ〜」

「誰のせいだと思ってるの〜!」?

「失礼しま〜す」


創は小走りで右端の最前列の席に着くと、その後ろの席には颯が鎮座していた





放課後。


「どうだったのでありますか?」


背後から颯が突っついて来た。


「なにがだ?」


創は後ろを振り返りながら訊き返す。


「なにがって、ナンパのことですぞぃ。成果はどうなりましたか」

「ナンパと言うか。なんか宿題を出された気分だ」

「家庭教師でも頼んだのですかな?」

「えっとな〜」


___

____


「哲学的というか、なんと言うか、ですな〜」

「だよな?」

「しかしながら、源織姫なる人物の言う事も頷けますな」

「颯はそっち派だったのか?」

「創自身が自分に置き換えてみてくだされ」

「例え話か?」

「そうであります。例えば、不可抗力で誰かを死なせてしまった。例えば、誰かを守る為に誰かを死なせてしまった」

「辛辣な例えだな」

「それを創自身が胸の内にしまって状態で、彼女に放った言葉を同じように言われたら、どうですか?」

「オレはどうだろう」


颯は創の答えを待たずに続けた。


「おそらくイラッと来たり、オマエにオレの気持ちがわかってたまるか!そんな事を言うか、思うか。だとオレちは思います」

「ま、確かに、思うかもしれないけど」

「相手を知らないうちに心の中を土足で踏み抜いたようですな」

「ああ、今度会ったら謝るよ」

「誠心誠意、心から謝る事をお勧めしまする」

「スライディング五体投地ごたいとうちで謝るよ」

「それはお勧めしませんな。側から見たらふざけております。普通に頭を下げて、心から謝る。それが一番いいお詫びですぞ」

「ん〜ん、普通のお詫びで印象に残るのか?」

「印象に残りたいのでありますか?」

「なんだろ、なんとなく?」

「でしたら、お詫びの品でも渡すなどはどうでありますかな?」

「おお、それ採用じゃな」


創のお爺ちゃん言葉に颯は執事風の言葉使いで答えた。


「お褒め頂き恐縮で御座います」

「それでは何を贈ったら良いかの〜」

「当たり障りのないモノか、変化球で御座いますが、何が宜しいか。スタンダートにお花やお菓子なのでしょうか?」

「ふむ、本当に当たり障りがないのう」


創は席を立った。


「それじゃ、そろそろ進路指導室に行って来るよ」

「もう、そんな時間ですか?これ以上、待たせるのも悪いですね」

「颯と話してると時間が経つのが早いな」

「ムム、そのフラグは折らせて頂きますぞぃ」

「恋愛フラグじゃね〜よ。ただの感想だ」

「しかし、ギャルゲでも、ちょっとした事がフラグになりますからな」

「全く、このギャルゲ脳がっ」


創は呆れたように言い放った。


「ホホホ〜、それはオレちには褒め言葉ですぞぃ。それでは、この後オレちは新作予約の為にプリカを買いに行きますかな」

「解ってるよ。じゃ、また明日な」


そう言い残して創は教室を出て行く。

創が出て行った直後、ガランとした教室。

颯以外に誰も残っていない。


「はてさて、源織姫殿ですか」


颯も席を立つと、左手で眼鏡を押し上げる。


「まさか、本人か。それとも名を語った偽物か。どちらにしても我が表舞台に出る事はない。観測者として。いいえ、傍観者としてこの物語の結末を見届けるとしましょう」


to be continued.


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