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最弱職「便利屋」が攻略AIで挑む異世界冒険記 ―チート勇者とのAI対決を便利屋スキルで出し抜く―  作者: 便利屋 涼
― 第二次魔獣大戦 ―

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蝿王ベルゼブブ襲来!

 俺は無意識の内にエリスと手を繋いでいて、テントに戻るとレイナが見つける。


「あっ! ちょっとエリスちゃん! 何で涼と手を繋いでるの!?」


 珍しくリリアも絡んできた。

「エリス、それは俺も面白くないぞ!?」


(あれ?珍しい反応だなリリア)


 女性陣が揉めてるうちに俺はカインと水浴びに行った。


 カインのまぶたと両方の頬がめちゃくちゃ腫れていた。


 俺は原因は解っていたが、いたずらに聞いた。

「カイン、その顔どした? キラービーにでも刺されたか?」


「あにぎ、ばんべもない」


 相変らず憎めない奴だ。

 いつもの愉快な仲間たちのお陰で、俺はようやく元気を取り戻した。


 テントに戻ると、女性陣は黒鉄の森や鉱山の長距離移動の疲労で既に寝ていた。


 カインも同様にすぐに寝てしまった。


 横になった俺は、ライアンの事を考えて自問自答していた。


(帰還率は置いておいて、今日俺たちがピンチに陥ったのは、俺の甘さのせいだ。俺があの海賊団を助けてしまったからだ。

 情けをかけて見逃した奴らが、結果的に隊長たちへ情報を流し、危うくカインとリリアを死なせるところだった)


(もし、あの場面でライアンが今の俺と同じ状況だったなら――己の帰還率を上げるため、そしてこういった事態を未然に防ぐために、迷わずあそこで皆殺しにしていただろう)


(所詮は極悪非道な海賊だ。見逃したところで改心などするはずがなかった。……非情ではあるが、この過酷な状況下においては、ひょっとしてライアンの考えの方が正しい時もあるのか?)


 答えは出なかったが、この夜を境に俺はライアンを『越えるべき強敵ライバル』として明確に認識した。


 ライアンの存在を、より意識するようになった俺は、ここから心身ともに加速度的な成長を遂げていくことになる。




――モンスタードーム前


 重い扉が開き、外で待機していたサスケの前にルークが姿を現した。


「サスケ、済まない。待たせたね」


『……ルーク殿、でござるよな?』


 サスケが思わずそう聞き返してしまうのも無理はなかった。それ程までに、今のルークは別人のような圧倒的なオーラに満ちていたのだ。


「僕は今夜、ここに泊まらせてもらって、明日はアイスランドへ向かうよ」


『了解でござる。では明日、拙者がお送りすればいいでござるな?』


「いやサスケ、ここまで本当に有難う。明日の朝は、いったん涼さんの所に戻ってあげてくれ。送って貰ったお礼に、今夜はゲド爺さんの手料理をご馳走するよ」


「また勝手に決めおって! うちはホテルじゃないぞ、お前はメフィストか!」


 背後からドームを出てきたゲド爺さんが、やれやれと頭を抱えながらツッコミを入れる。


「まあまあ、ゲド爺さん。アイスランドに行ったら、珍しい魔石をお土産に持ってくるからさ」


 そう言って苦笑するルークの右肩の上で、ベビードラゴンの姿に縮小した『ドラゴ』が、サスケに向けて話す。


『ルークは、今度俺を旅客機代わりに使うつもりらしいぜ』


「ドラゴ、言い方」


 ルークが肩の上の相棒を軽く小突くと、モンスタードームの前に小さな笑い声が響いた。




――ヴェルシア大陸 ウィンザーミッシェル城内

 

 そこに夜の晩餐会で貴族たちと優雅に食事をしているライアンの姿があった。

 談笑していたライアンだったが、ふと柱の陰に立つゼインに気付く。

「ちょっと失礼。外しますね」

 貴族たちに微笑みかけ、その場を離れた。

 

「どうだ? ゼイン」


「とりあえず俺とアナキンの準備は整ったが、どうする?」


「他のメンバーがまだ来ていない。まあ、焦ってもロクな事はない。とりあえずアナキンも呼んで、ここで飯でも食って精力でもつけておけ。ここの飯は美味いぞ。

 それとゼイン、お前のその服は目立たな過ぎて逆に目立つ。私の服に着替えて来なさい」


「わかった」

 

 ゼインがきびすを返そうとした、その時だった。ライアンの魔導ポーチ内のギアが、大きな警告音を発した。


《EMERGENCY!》

《EMERGENCY!》

《警告!強敵接近!!》



 ――ズドォォォォンッ!!


 鼓膜を破る程の轟音と共に、大広間の豪華な天井が派手に吹き飛ぶ。

 舞い散る瓦礫と土煙の中から、得体の知れない三つの影が徐々に見えてきた。


「ひぃっ!?」

「ま、魔物だぁぁぁっ!」


 優雅な晩餐会は一瞬にして阿鼻叫喚へと変貌し、貴族たちが悲鳴を上げて逃げ惑う。


 立ち込める土煙を払うように現れたのは、凶悪な威圧感を放つ二体の強魔獣。

 そして、その中央に腕組をしながら悠然ゆうぜんと舞い降りたのは、背に六枚の漆黒の羽を持った美形の青年――ベルゼブブだった。

 

「みなさーん、注目!」


 パニックに陥る大広間に、ベルゼブブのよく通る明るい声が響き渡った。


「そこの嘘つき勇者が、これから大きな戦争を起こそうとしてますよー」


 ライアンを指差しながら面白そうな笑みを浮かべ、絶望に染まる貴族たちを見下ろす。


「大変残念なお知らせですが、ここにいる皆さんは、巻き込まれて死んじゃいまーす」

 

 軽薄な死の宣告に、広間の空気が完全に凍りついた。


 しかしライアン達は至極冷静だった。


 ライアンはポーチから取り出したギアを、素早く左耳へと装着する。


「ゼイン!アナキン! ってよし!」


「「了解」」


 ゼインと合流したアナキンが同時に応じ、臨戦態勢に入る。


 ギアを装着したライアンは、余裕の笑みを崩さないベルゼブブを鋭く見据え、静かに告げた。


「スカウター始動!」

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