三大神集結! ― 第二次魔獣大戦の火種 ―
天界、海界、冥界――その三つの世界の境界が曖昧に混ざり合う次元の狭間、『三界の特等席』。
そこには、この世界の頂点に君臨する三柱の兄弟神が集っていた。
「……兄者たち、今日集まってもらったのは他でもない。聞き捨てならぬ情報が入っているぞ」
黄金の雷霆を弄びながら、末弟のゼウスが不機嫌そうに更に口を開いた。
「堕天し、サタン迄落ちたルシフェル……奴め、泥を啜りながら生き永らえただけではなく、何やら機械の身体になって迄、再び人間共と手を組み、我らに牙を剥こうとしているらしい」
次兄ポセイドンが、怒りに震える声で応じる。
「フン、不浄な者同士、惹かれ合うものがあるのだろうよ。しかも、その主導権を握っているのは、この世界の理の外……異世界から来た人間だというではないか」
「笑えぬ冗談だ。以前、天のガーディアンが屠られ、あろうことか『聖剣』を奪われた。神の威信を汚した罪、万死に値する」
ゼウスが怒りに共鳴し、テラスの床から火花が散る。
「案ずるな、ゼウス。不覚を取ったのはお前だけではない」
ポセイドンは忌々(いまいま)しそうに吐き捨てた。
「勇者ライアンとかいうウジ虫のことだな。先日、深海のガーディアンもやられて、私の『イーシズの盾』と、『三叉槍』までもが奪われた。神の宝具を土足で汚される屈辱……もはや看過できん」
「……異世界からの人間か。一つ、忠告しておこう」
それまで沈黙を守っていた長兄、ハーデスが重々しく、死の香りを纏った声を響かせた。
「何やら最近、もう一匹増えたらしい。以前、我が冥府の門を護るケルベロスがその男に屈した。これ以上、見逃すことはできんぞ」
「……ケルベロスまでだと?」
ゼウスの眉間に深い皺が寄る。
「『聖剣』、『イーシズの盾』までもが奪われたとなると、次は私の『冥界兜』迄狙ってきそうな勢いだな」
ハーデスの静かな言葉は、かえってその場に冷徹な殺意を充満させた。
「虫けらのクセに、どこまで生意気な。そのライアンとやらの下に集った七人の強者が、『七武神』などと呼ばれているらしいな。人間の分際で……我ら神の領域を侵せるとでも思っているのか」
ゼウスの周囲で、殺意を孕んだ紫電が爆ぜる。
神々の「観賞用」であったはずの地上は、今や彼らにとって忌々しい反逆の揺り籠へと変わりつつあった。
ゼウスの怒号が響き渡る中、ハーデスが不意に虚空へ向かって声を投げた。
「……ベルゼブブよ! 控えておろう」
「ハッ。ここに」
次元の影が歪み、漆黒の羽を背負った整った顔立ちの男――蠅の王ベルゼブブが静かに跪いた。
「うぬの以前の主ルシフェルが、勇者と組んでそろそろ俺の所にきそうだ」
ハーデスの目が、底知れぬ深淵のように細められる。
「奴ら……この世界に再び魔獣大戦……『第二次魔獣大戦』を引き起こそうとしているのであろうな」
その忌まわしい言葉に、ゼウスとポセイドンの表情すらも僅かに強張った。
「偵察に行って最新情報を持ってこい。必要であれば、何匹か最恐魔獣を使っても構わん。面倒なら殺してしまってもいい」
「お安い御用です。……冥王様」
ベルゼブブは薄く笑みを浮かべて恭しく一礼すると、 その容姿には似合わぬ禍々(まがまが)しい羽音だけを残し、再び影の奥底へと溶けていった。
静寂が戻ったテラス。
三柱の神々の背後に無数に浮かぶ監視用の水晶玉のうち、二つの球体が微かに光を放っていた。
一つには、聖剣を掲げ七武神を率いる、光り輝く勇者ライアンの姿が。
そしてもう一つには、ケルベロスを屠ったもう一人の異世界人――便利屋・涼の姿が静かに映し出されていた。
――モンスタードーム前
「ルーク殿、一キロ程先に黒くて大きなドームが見えるでござる」
「そこだ」
ルークとサスケは、一面の銀世界の中で異様な存在感を放つ、黒いドーム型の建物へと到着した。
ドームの傍らには、メイン施設を守護するようにもう一つの「小さなドーム」が建てられていた。
そこには『モンスター爺さん』の従魔である、『炎の魔神イフリート』が棲み着いており、極寒の雪原にあってそこだけが大型ストーブの傍のように暖かかった。
待機していたマスター・アサシンのゼインは、そのイフリートのドームの陰から静かに姿を現した。
そこへちょうど、メインの黒いドームの重い扉の奥から一人の男――アナキンが出てきた。
その身からは、以前とは比べ物にならないほど禍々(まがまが)しいオーラが立ち昇っていた。
「アナキン、君……やったのか?」
「ああ、成功だ。 ――召喚! バハムート!」
アナキンの声に呼応し、空間が歪む。
そこへ現れたのは、つい一時間程前に見たものとは一回りも大きく、全く別の個体かと思わせるほど凶悪な姿へと変貌したバハムート・改だった。
「待たせたな、ゼイン。では行こう」
アナキンはゼインと共に巨竜の背へと飛び乗ると、鋭い視線をルークへと向けた。
「ルーク、俺たちには決して、もう関わるんじゃない」
言い捨てるが早いか、バハムートは先程とは比較にならないほどの凄まじいスピードで急上昇し、瞬く間に鉛色の空へと消えていった。
ルークは一人、巨大ドームの重い扉に手をかけ、ゆっくりと中へ足を踏み入れた。
残されたサスケは、先ほどまでゼインが使っていた特等席――炎の魔神が放つ熱で温められた小さなドームの屋根へと舞い降りる。
極寒の銀世界を忘れさせる心地よい暖かさに包まれながら、サスケはルークの帰還を静かに待つ。
吹雪の音だけが鳴り響く中、背後で巨大なドームの重い扉が、外界との繋がりを断ち切るようにズシン……と重々しい音を立てて閉ざされた。
最後までお読みいただきありがとうございます!
「面白かった!」「続きが気になる!」と少しでも思っていただけましたら、
ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援をお願いいたします!
皆様のイイネ評価とブックマークが、何よりの執筆の励みになりますm(__)m




