表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱職「便利屋」が攻略AIで挑む異世界冒険記 ―チート勇者とのAI対決を便利屋スキルで出し抜く―  作者: Mr.RX
【便利屋の一味の大冒険】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/50

瀕死のカインとリリア 七武神の救済

 俺たちは黒鉄くろがね鉱山の深部まで来ていた。

 スマートフォンの画面をタップし、スカウターを起動した。

 レンズ越しに薄暗い岩壁を映し出すと、画面上に地層の成分や魔力濃度の分布図が拡張現実のようにオーバーレイ表示されていく。


「……マジか。岩盤の成分解析までできるのか。スカウターにこんな使い方もあったとはな」


 俺の視線の先、画面には目当ての鉱脈がはっきりと緑色でハイライトされていた。


「見つけたぞ。純度100%、混じり気なしの『アダマンタイト』だ。これだけあれば目的の装備は十分に打てる」

 俺の報告でパーティに笑顔が浮かんだ、その直後だった。


 ズズン、と地響きを立てて岩壁の一部が崩れ、土煙の中から五体の巨大な影が躍り出てきた。人面獣身の凶悪魔獣、スフィンクスだ。


「接敵! 兄貴、解析を!」

カインの鋭い声と同時に、俺はスマホのカメラレンズを素早く魔物の群れへと向ける。


《ターゲット:スフィンクス(複合型合成魔獣)》

《推定魔獣平均LV:30(A級指定) × 五体》

《弱点:腹部の装甲の隙間、および雷属性魔法――》


 画面に表示された弱点データを即座に読み上げると、前衛のカインと身軽なリリアが迷いなく死角へと回り込んだ。的確な情報共有がもたらす、流れるようなコンビネーションで次々とスフィンクスを切り伏せていく。


「レイナも撃つよ! 『紫電ライトニング・ジャベリン』!」


 後衛のレイナが杖を振り抜くと、俺の指示通りに放たれた雷撃が、スフィンクスの一体を正確に撃ち抜き、黒焦げにして絶命させた。

 そして、最後の一体の首をカインの剣が両断し、誰もが完全な勝利を確信した。


「兄貴!トドメをどうぞ」

「サンキューカイン!これは経験値高いぞ」


「ふぅ……」

 リリアが安堵の息を吐きドラゴンスレイヤーを地面へと降ろす――その油断こそが、致命の隙だった。


「ヒャッハー!」

 天井から突如として降り注いだのは、毒々しい羽音を立てる無数の黒い蟲だった。

 防具無しのリリアの素肌に、蟲たちが一斉に群がり牙を剥く。


「うわあっ!?」


「黒ひげ海賊団、四番隊隊長、蟲使いのアミバだ」


「リリア! 駄目だ、ウチの魔法じゃリリアまで巻き込んじゃう……!」

 レイナが杖を構えるが、魔法を撃てない。

 カインが助けに入ろうと身をひるがえした刹那。


「――お前たちの動きは、対策済みだ」

 足元から響くような不気味な声。

 気づけば、カインの真横に『影を持たない男』が立っていた。


「五番隊隊長、ジャッカルだ。そら、サウザーの仇だ!」

 男の毒手刀が、蟲に噛まれ悶えるリリアと、カインの急所を同時に、そして無慈悲に貫く。

 鮮血が舞い、二人の体が力なく崩れ落ちた。


「カイン! リリア!」

 エリスが涙ながらに最高位の回復呪文を唱え、俺が慌ててエクスポーションを傷口に振りかける。素早い処置で即死こそ免れたが、傷口から立ち昇る紫色の瘴気が、回復効果をことごとく弾き返した。


 「ダメです……! 強力な呪毒で、私の魔法じゃ塞がらない!」


 みるみるうちに顔色が悪くなり、命のカウントダウンが始まる二人。


 「クソッ! 俺のせいだ……スフィンクスだけだと油断したから……!」

 リーダーとしての己の甘さを呪い、血塗れの拳を地面に叩きつけた。


「よくも……よくも二人を!」

 緋色目のレイナが怒りの極大呪文の詠唱を始めるが、ジャッカルが冷酷に片手を上げる。


「遅い。『重力断層グラビティ・フォール』」


 見えない巨大な鉄槌が上空から叩きつけられたかのように、レイナの体が地面にめり込む。全身の骨が軋む絶望的な重傷。俺が瞬時にエクスポーションを浴びせたことで命は繋ぎ止めたが、戦況はもはや完全に崩壊していた。


(今更ノアを出しても間に合わない)


(くっ!詰みか!?)


 万事休す。そう思われた時、俺の手に握られたスマホスカウターが、けたたましい【緊急警報アラート】を鳴らし始めた。


《EMERGENCY!》

《EMERGENCY!》

《警告!災厄級個体》

《警告:対象の戦闘力、測定不能!》


 画面を埋め尽くす真っ赤な警告エフェクト。

 そこに表示された戦闘力数値は、測定不能を示す『ERROR』の文字だった。


《データベース照合……個体識別:暗黒騎士ブラックナイト、および白魔道士》


(何!?……更に新手の『七武神』だと!?)


 聞き覚えのある警告音に他のみんなも確信していた。

 坑道の奥から歩いてくる漆黒の鎧の騎士とハーフエルフの白魔道士が、『七武神』であるということに。


 しかし、敵の隊長たちには、彼らがただの不運な通りすがりにしか見えていなかった。


「あ? なんだそのうるせぇ玩具オモチャは。ってか、誰だテメェら。邪魔臭え、ついでに死にな!」


 ジャッカルが、暗黒騎士へ向けて鼻で笑いながら重力魔法を放とうとする。

 だが、暗黒騎士は立ち止まらない。

 そして、低く呟いた。


 「――『暗黒斬ブラック・スラッシュ』」


 次の瞬間、ジャッカルの首がポロリと地に落ち、その肉体が塵となって消え失せる。


 「なっ……て、テメェ、その強さ……まさか『七武神』かよ!? ふ、ふざけんな、覚えてろよ!」

 相棒が一瞬で消し飛ばされ、ようやく圧倒的な力の差と相手の正体を悟ったアミバが、蟲を撒き散らしながら逃走していく。


 静寂が戻った坑道。

 俺たちが呆然とする中、ハーフエルフの白魔道士が、血だまりに倒れるカインたちに目を留めた。


「あらあら、ひどい怪我。あなたたち、こんな所で何をしているの?」


 彼女は俺たちが何者であるか知る由もなかった。静かに杖を振るう。

 光の粒子が降り注ぐと、エリスの魔法でも治せなかった呪毒があっさりと浄化され、カインとリリアの致命傷が嘘のように塞がっていった。


 これには、俺もエリスもショックを隠せなかった。

 自分たちの実力では救えなかった仲間を、結果的に本来敵になるはずの底知れぬ力を持つ『七武神』に救われてしまったという葛藤。

 ギリギリのところで命を拾った安堵よりも、圧倒的な無力感が胸を支配する。

 だが、今はただ、感謝の礼をするしかなかった。


「……本当に有難う。助かった」


「気にするな。俺はどうでも良かったが、コイツが勝手にした事だ」

「ついでよ。 つ・い・で」


 どこまでも底が見えない二人の態度に、俺は歯を食いしばる。このまま貸しを作った状態では、あまりにも情けなかった。

 「あんたらの目的もアダマンタイトだろ? そこに多めにあるから、先に持って行けよ」


「まあ、有難う。じゃ、遠慮なく」

 白魔道士が微笑むと、およそ人とは思えない滑らかな動きで、暗黒騎士が鉱石を魔導バッグに詰め込む。そして、二人は幻のように坑道の奥へと消え去っていった。


「あいつらの行先も、鍛冶屋だろうな……」

 俺は誰にともなく呟いた。あの化け物クラスの連中が、わざわざこんな辺境まで足を運び、次々と装備の強化をしていこうとしている。

 ――やはり奴ら、何かデカい事をやろうとしているな。


 残されたアダマンタイトをポーチにしまいながら、俺は深い溜息をつき、元気のない仲間たちと共に帰還の準備を始めた。

 最後までお読みいただきありがとうございます!


 「面白かった!」「続きが気になる!」と少しでも思っていただけましたら、

ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援をお願いいたします!


 皆様のイイネ評価とブックマークが、何よりの執筆の励みになりますm(__)m


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ